6/7-掌編 感謝

人々はどうにもならない他人の悩みを聞くことで

取るに足らない小さな自分の悩みと向き合うことをせず、

きれいに整備された道をのうのうと進む

この道を歩けることに感謝しなさいとだけ教えられ

静かに生きろと言う

危険がなくきれいに整備されたように見えるその道は
落とし穴だらけであり

ここからは見えないその先に続く道は
それを見たことがある人、それを知っている人は決して選ばないぞっとするほどの茨の道だ

それを知っていながら
人々は有り難くその道を進めと言う

運が良ければ通り抜けられるのよ
幸運を祈るわって言うんだ

勘弁してくれよ

どうにもならない悩みの正体は
あなたの見逃した取るに足らない小さな悩みたち

きれいに整備された道に使われている材料は
人々が向き合わなかった取るに足らない悩みたちを並べて皆で踏み固めたものだ

行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。