鴨南蛮そば

2019年6月の頃からずっと体調が悪くてくすぶっていた父でした。

夏を過ぎる頃から

実家に呼び出されることも増え、力が入らない血圧が下がる

明らかにしんどそうでした。

それでも生きることに前向きであり、

常に自分の頭で考えて自己管理をしていた父でした。


去年10月29日。

最後に父と外食した日です。

敗血症疑いと肺炎疑いで

朝から長時間の検査になりました。

呼吸器内科の先生は大変丁寧な先生で、

最後の診察が15時を回りましたが、丁寧に説明してくださいました。

肺炎の疑いはないとのことでした。

私も父も朝以外何も食べていなかったこと

やっと思い出し

私自身頭を高速回転させ

父に近くのお蕎麦やさんとお弁当どっちが良いと聞きました。

近隣の美味しいお蕎麦屋さんはお昼休みをとるところが多かったのですが

そういえば山形屋の地下に

左膳吹上庵があったと

できるだけ近くに駐車し、できるだけ歩く距離を短くして

お店に行きました。

店内案内係の方が地下のスロープの方へ案内してくださいました。

人の少なくなった店内で父は鴨南蛮そばを注文しました。

暑い1日でしたし、少し私には意外でしたが

同じものを私も注文し

ゆっくりゆっくり食べました。

とにかく早く実家に連れて帰って休ませなければ

と気持ち焦る私に父は

地下の鮭を買って帰ると言って聞きませんでした。

私があとで買ってくるから今日はとにかく帰ろうと説得したのですが

スタスタと地下の生鮮食品売り場の方へ歩いていく父。

ここの鮭が大好きだったのです。

けれど2日後に最後の入院をした父は

きっとその鮭は食べなかったのでしょう。

母も塩分管理の厳しい人でしたし

腎臓透析者の父の口には入らなかったのではないかと

今も山形屋の生鮮食品売り場の鮭を見ると

悲しくも懐かしい気持ちになります。

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