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アルツハイマー征服

「アルツハイマー征服」,今年読んだ本の中でトップレベルにおもしろかったです.アルツハイマーの根本治療薬を開発するまでの人類の道のりを描いたノンフィクションです.

日本で 400 万人以上が患っているとされているアルツハイマーは,癌と並んで難攻不落の病気とされており,これまでは病気の進行を約 1 年遅らせることのできる治療薬がやっとでした.

しかし,ここにきてついに,根本原因がアミロイド β という物質であったことが確認されます.そして米国のバイオジェン社と日本のエーザイがアミロイド β を除去する根本治療薬「アデュカヌマブ」を開発し,去年 7 月に FDA に承認申請が出されました.

本書では,過去の治療薬からアデュカヌマブの承認申請が出されるまでの,多くの研究者や製薬会社の挑戦が描かれています.解明に至るまでは茨の道で,エーザイでの社内政治や,治験失敗による製薬会社の破綻,論文の捏造など様々なドラマがあったのですが,それらが物語としてとてもおもしろくまとめられています.著者は 15 年以上も取材を続けてきたそうです.

本書で描かれているのはアデュカヌマブの承認申請までですが,その後,今年の 6 月についに米国で承認され,大きな話題となりました.自分は本書をちょうど読んだ後だったので,自分ごとのようにうれしかったです.

エーザイの株価もその日ストップ高になっていました.この本を読むまでは,アルツハイマー治療薬の開発に日本の企業がこんなに関わっていることを知りませんでした.日本での承認はまだなので,はやく承認されることを祈りつつ,これからも動向をチェックし続けようと思います.

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