2019年に読んでよかった本10冊

今年出会った本の中で,特におもしろかった本 TOP 10 をまとめておく.

サルたちの狂宴 (アントニオ・ガルシア・マルティネス)

ゴールドマン・サックスのクオンツだった著者が,シリコンバレーの Web 広告系スタートアップに転職し,その後 Y Combinator から出資を受け起業.そしてその会社を Twitter へ売却し,自身は Facebook の PM になるという波乱万丈な経験を,とてもリアルかつシニカルに語っている.

起業時代は訴訟リスクや倒産リスクと闘い,Facebook 時代は社内政治との闘い.シリコンバレーや Facebook の内情がかなり生々しく書かれていて,面白くて一気に読んでしまった.PM してる人や興味ある人に特におすすめ.

モスクワの伯爵 (エイモア・トールズ)

ロシア革命後に高級ホテルの屋根裏部屋に 32 年間軟禁されることになった伯爵の,ホテルでの日々の生活を描く物語.給仕や少女など,ホテルを起点に様々な人と出会い,関係を育みながら,生きる意味を見つけていく.

ホテルという小さくも広い世界を通して,伯爵の人生が色鮮やかに綴られていく様子がとても魅力的だった.600 ページを超える分量だが,その分読後の満足度も大きい.

フィフティ・ピープル (チョン・セラン)

大きな病院のある街に住む 50 人 (実際は 51 人) の様々な人生と,それぞれの人生がゆるく交差していく様子を描いた韓国小説.それぞれの考え方や生き方が絶妙に絡みあうことで 1 つの社会が構成されていく.

オムニバス系の作品は好きなのでよく読むが,また好きな作品が 1 つ増えた.オムニバス系が好きな人に他におすすめなのは One World (喜多川 泰) や アイネクライネナハトムジーク (伊坂 幸太郎) など.

三体 (劉 慈欣)

もはや説明不要の 2019 年最高傑作.とにかくスケールがでかく,かついろんな分野の知識が総動員で,ただただ圧倒された.最初の 50 ページくらい (文革のところ) は結構読みにくくて挫折しかけたが,そこを超えると一気に面白くなっていって,そこからは勢いで読み終えた.

先日,本屋で原作 (中国版) が 3 部作全部置かれていたが,第 1 部の三体と比べると第 2 部,第 3 部はそれぞれ 2~3 倍の分厚さで,第 1 部の分量でも結構お腹いっぱいになった自分としてはかなり衝撃的を受けた.第 2 部の日本語訳は来年出るらしいので楽しみ.

眼の誕生 (アンドリュー・パーカー)

5 億 4300 万年前から 5 億 3800 万年前と一瞬の間に生物が爆発的に進化した (カンブリア紀大進化) が,それは眼が誕生したからだという仮設を,様々な分野の知識をベースに証明していくノンフィクション小説.眼が誕生したことにより,生物の捕食行動が促進され,また被捕食者が外殻や身を隠すための色を獲得することにつながったと本書では述べられている.

ノンフィクションだが,もはや SF のような感じで読み進められた.サピエンス全史銃・病原菌・鉄 などが好きな人は楽しめると思う.

走ることについて語るときに僕の語ること (村上 春樹)

村上春樹の「走る」ことに関して綴られたエッセイ.走るということを通して,村上春樹のストイックな人生観が伝わってくる.

会社が皇居に近いので今年も皇居ランをしていたが,走ることに関して共感できる部分が多く,また同時に走るモチベーションが高まった.来年はハーフマラソンに出たいなと思っている.

生涯投資家 (村上 世彰)

「村上ファンド」でおなじみの村上世彰による,自身の投資哲学や過去の経験について綴られた自伝.コーポレートガバナンスの重要性を説くと同時に,ニッポン放送やライブドア事件の真相についても語られている.

中学生の頃,メディアで散々叩かれていたのを未だに覚えているが,この本を読むと村上氏目線のまた違った一面を垣間見ることができて面白い.

アントフィナンシャル (廉 薇)

アリペイなどを運営する,アリババグループ傘下のアントフィナンシャル.中国ではアリペイを中心としたエコシステムが出来上がっているが,どのようにここまでの発展に至ったのかについて語られている.

決済,投資,保険,信用などがシームレスにつながれており,日本の金融と比べると圧倒的に先を走っているように感じた.また,これまで金融機関がアプローチしてこなかった農村部の人々に金融サービスを提供し,ビジネスを成立させているところはとても興味深く感じた.

ジョブ理論 (クレイトン・M・クリステンセン)

ユーザがプロダクトを利用するのは,片付けたい「ジョブ」(潜在的ニーズ) を解決するためであり,表面的なニーズにとらわれずに,ユーザの状況を把握する必要があるという考え方が綴られているマーケティング書.

これまで読んだマーケティングの本で 1 番納得感が高く学びになり,バイブルとなった.クリステンセンの最新刊 繁栄のパラドクス も積読のままなのではやく読みたい.

FACTFULNESS (ハンス・ロスリング)

こちらも三体と並んで,もはや説明不要の 2019 年の最高傑作.世界的な影響力を持つ人でも,世界のこと関してはチンパンジー以下の回答率であり,正しく事実を認識することが重要であるという考え方が書かれている本.

自分がものごとをいかに歪んで見ているのかが分かり,自分の考えを批判的に見る習慣を忘れずに続けていきたいと思った.

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