パスタが別に好きでない女
大学のとき、友人たちが盛り上がっていた話題があった。
「初デートでどこに行きたいか?」というもの。
「ねえねえ、ぴいちゃんはどこ行きたい?」と、わたしにも話を振られる。
初デートとは付き合ってから初めてのお出かけを指すのか、恋愛対象になり得る人と初めてのお出かけを指すのか、どっちだ。
そんなことを思いながらも、そもそもあまり惚れにくい自分は、付き合うほどの人であれば、初でも初じゃなくてもどこでも良いので、後者と自分の中で定義した。周りと定義を合わせるというより、テンポを合わせる話題だと判断し、少し考えて答えた。
「回転寿司かな?」
「回転?!ありえないでしょ!回らないならともかく!」
「え、別にわたしお寿司好きだし安くていい」
「そこはさ~せめてパスタとかにしようよ、雰囲気なさすぎ」
「パスタ別に好きじゃない。お寿司の方が好き」
「でも初だよ?!雰囲気ないじゃん」
「・・・」
友人たちはそのまま自分の初デートで行きたい所話を楽しんでいた。
わたしは不快に思うというより、「へ~そうなんだ」と「それが女子の大半の意見なのかな?」と、いわゆる女子の普通は友人の意見なのだろうかとただ疑問に思っていた。
そもそもわたしは貧乏学生すぎて、飲み物は必ず家から持ってくるし、お昼はお弁当もしくはおにぎりを握ってくる。みんながしょっちゅう買う自動販売機の飲み物も学食の定食もわたしには高級品だった。彼氏にすき屋を奢ってもらえた日は幸せだ。
楽しいことにお金を使うために、普段は質素な生活だった。
でも周りのみんなだって学生だから、高級料理なんて行かないし、田舎だからかどこにあるかも知らない。
いいお店なんて、自分には背伸びしすぎて違和感しかない。
回転寿司も行けないくらい気を遣う相手の方が嫌だと思うわたしは、華の大学生にはたぶんマイナーだったようだ。
パスタよりお米が食べたいと思うのも、マイナーだったようだ。
これを知ったのは、大学卒業後。
付き合った彼が「何食べたい?」とよく聞くのだが、ある日「ぴいちゃんってパスタとか言わないよね」と言われた。
「パスタって別にそこまで美味しくなくない?大抵1000円以上するし、高い」
と言ったら、「元カノはパスタばかり食べたがった」「助かる」と言っていた。
ちなみにこの彼は学生である。食事代は出したい方らしいが、さしてお金がないのはわかっている。しょっちゅう奢ってもらうなら、牛丼でいい。
その後も男性と食事に行くときにお任せすると「パスタ」がある店が多い(気がする)。まあ確かに初めから恋愛対象に入っているなら回転寿司には行かないかと、わたしもわかるようになった。
でも学生時代はそれくらいが気楽でいいのにな。自分はいきなり恋愛モードに入れるタイプでもないので。
そもそも女子はパスタが好きって本当だろうか。
パスタのある店はお洒落な所が多いが、特別美味しい所なんて滅多にない。
しかもお米より腹持ちが悪い。個人談だが、最近は小麦を取ると猛烈に眠くなることが判明した。
それでもたまに食べたいときもあるし、友人との食事にくらいはと食べるが、別に好きではない。普通だ。一人暮らしの味方とたまに聞くが、パスタは常備しない。
パスタがさほど好きではないわたしがマイナーなのか、メジャーなのかはわからない。どちらでもいいが、少なくともわたしの大学時代のあの地域には「女子はパスタが好き」神話があり、そんなので「女子感」を異性に出すのはめんどくさいなぁと思っていた。
好きなものを好きな人と食べたらいいじゃないか。
好きな人と食べるなら、安くたっていいじゃないか。
わたしにとって誰かとの食事は、「食」でなく「人」が目的。せっかくならと色んなお店へ行くが、究極どこでもいい。お金がなければファミレスでも牛丼でもいい。
パスタに連れて行けば喜ぶとなんて思わないでいただきたい。
こちらは会うこと自体を楽しんでいるのだから。
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