親になると、なんで強くなるのか

夫はビジネス書をよく読む。読んでくそ真面目にノートにまとめたりしている。一緒にご飯をたべながら「成長っていうのはね……」などぺらぺら喋りだしたりする。「また始まった」と思いつつ、へえーふんふんと私は相づちを打っている(えらい)。

先日、彼が読んでいた本、田端信太郎氏の『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』 について話をした。

「こんなこと書籍以外で言うと大炎上するだろうが、あえて言わせてくれ。僕は今年42歳だ。妻とは結婚して13年目で、子どもが3人いる。そんな僕に言わせれば、子どももいなくて、まして結婚したこともないような、ケツの青い『ガキ』に負ける気はしない。なぜなら、そんな連中は『他者と向き合う』というブランド人の基本、ビジネスの基本を疎かにしているからだ。ブランド人たるもの、家族と向き合うことで理不尽を学べ。理不尽を楽しめ。」

らしい。夫も、同意すると。

夫は27歳、0歳と3歳の二児の父だ。彼の同期で子持ちはいない。「だから同期に負ける気はしない」。へえー。たしかに夫は目標売上額の何倍も達成させているらしいし、こないだ表彰もされていたし、きっと会社で評価されているのだろう(ハナホジ)。

とはいえ、わたしもなんとなく同意する。親じゃないやつ全員に勝てるなどとは全くもって思わないが、少なくとも親になる以前のわたしには勝てるな。自分自身は、親になってとてもレベルアップしたという実感がある。

その実感はどこからくるのか? ということを考えたので書いておこうと思った。これが本旨。


さて、「親じゃないやつに負ける気はしないね」という発言、何かに似ていません?

わたしは、「俺はスラム育ちだから、そこらのやつには負けないぜ」という洋画でよくあるやつを連想した(えっ、そんなセリフはない? すみません、実は洋画とかぜんぜん見ないんです)。

そのことを夫に言ってみたところ「しようと思ってもできない貴重な経験をしているって意味じゃない?」と。夫は自信満々で指摘してくれたけど、わたしには、うーん、あんまりしっくりこなかった。

田端氏も書いているとおり、やはり「理不尽」がキーワードだと思う。

昼夜なく泣いたり、眠ってほしいのに眠らなかったり、腰肩手首の痛みに耐えながらずーっと抱っこしてゆらゆらしてたり。お世話に翻弄されて、眠れないし、トイレや風呂もぜんぜんゆっくり入れなくて、あったかいうちに食事もとれない、そもそも食べられない。世の中のほとんどの親にヘッドバンキングしてもらえるであろうこれらのこと、子どもが居なかったらまず体験できなかった。

わたしは、自分がこの20数年間でつみあげてきた自分の生活リズムやパターンがガラガラと崩れていくことがすごくショックだった。「風呂ぐらいゆっくり入らせてよ!」とか、そんなことは贅沢なんだと初めて知った。

「理不尽」に直面したとき、それまで意識をしたことのなかった自分のアプリオリな輪郭を知るのだと思う。

自分というものが揺らぐ。壊されて、また新しく積み上げる。そのことによって自分への理解が深くなる。このことが、理不尽に直面することによる経験値なのではないか。


だから、カスタマーサポートなどですんごいクレーマー対応している人も多分きっと経験値すごいんじゃない? と思いつつも、それと親の経験値とはまた違うという直感がある。また、わたし自身有料老人ホームで色んな人の介護を仕事としてきたけれども、その経験値ともまた違うなあと感じる。その違いは、なんだろうなあ。

自分自身が責任者であること、ととても関係があるような気はしているけれども、まだよくわからないね。

今日はここまで。

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