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「ゴジラ-1.0」感想

2023/12/09 更新分

先日「ゴジラ-1.0」を観てきました。観るのは「シン・ゴジラ」ぶりだけれど、感想としてはめちゃ面白かった。

僕はゴジラのファンを名乗れるほどそんなに熱心には観てないけれど、何作かは後追いで観てて、
その中でも
初代「ゴジラ」の大戦後じゃないと作れないだろうなと感じさせるほどの恐怖感が強く印象に残ってるし、
昭和だと「ゴジラ対ヘドラ」の社会派な内容だけれどちょっとトンチキな画が続く歪さがどこか愛おしい。
その一方で平成後期の「ゴジラ FINAL WARS」の「バッカじゃねえの!!??」と言いたくなるほど清々しいくらいにアクション全振りな奴も大好き。
そんな良く言えば「バラエティ豊か」悪く言うと「玉石混交」なゴジラは僕結構好きです。

あと僕が感じた全体の印象として
ゴジラは水爆の象徴としての「恐怖の対象」としてのゴジラと、怪獣特撮としての「プロレスラー」としてのゴジラの二つのタイプがあるように感じてて、
今回の「ゴジラ-1.0」は完全に前者で特に初代「ゴジラ」をリスペクトした作品だと感じた。

この作品のゴジラは初代と同様「戦争」の擬人化みたいな存在なので
「如何にゴジラに対して恐怖させるか」というのがキモになるのだけれど
それを強そうなデザインと最新のVFX技術、そして神木隆之介の演技でこれでもかと怖がらせてくれたと思う。

初代ゴジラは恐ろしいけれどどこか愛嬌があってそこはかとない「生き物」感があったけれど「-1.0」のゴジラは「生物の頂点」としての恐ろしさみたいなのを感じるデザインと佇まいでそこがまず良かった。

印象的な黄色い目、マッシブな体つき、太くて長い尻尾、そしてぶっといデカ太もも。
撮り方のおかげもあるのだけれど、なんだか他のゴジラと比べるととてもでっかく、そして強そうに見える。

そんな「暴」のアトモスフィアを全身に纏った「-1.0」のゴジラがその鋭い眼で人をつけ狙い、クソデカ太ももで逃げ惑う人々ごと大地を踏ん付けて、尻尾をぶうんと振り回し、銀座の街をめちゃくちゃにする。


そして極め付けに背びれをゆっくりと展開して放つ熱線が迫力満点だ。
一つずつ伸びていくところの「タメ」が必殺技っぽくてそれが「これからすごいことが起きる」ことを想起させてくれ、
ゴジラの暴力的な強さが遺憾無く伝わってくる。

それだけだとどっちかというと「爽快さ」の方が勝っちゃうんだけれど、そこに神木隆之介の曇らせを足すことによってそれが「恐ろしさ」に反転する。

この部分は初代だと一般モブが担ってたんだけれど、あの表情と悲鳴は当時の戦争経験者でないと絶対出せない。
だからこの作品では神木隆之介がそれを一手に担う。

死んで役割を果たすはずの特攻兵が逃げて、勇気がないばかりにゴジラに仲間を殺され、生きて帰ってきたら皆に「なんで生きてるの」と冷たい目を向けられ、「自分は生きてちゃいけない人間なんだ」と思いつつ、でも死ねないことに葛藤しながらも浜辺美波に出会って人並みの幸せを掴みかけたところでゴジラをひとつまみ…。
街も浜辺美波も全部失い絶望する時の神木隆之介の演技。本当に素晴らしい。

ゴジラの「暴」と隆之介の「絶望」の相乗効果で
破壊の美しさと絶望感がないまぜになった感情を想起させてきて、それがとても良かった。

そして徹底的に堕とし切ったからこそ、そこからのゴジラへの復讐のカタルシスが高まるし(表向きは)綺麗なハッピーエンドで締められる。

でも熱線の存在と最後の首元の描写を考えると…
この作品はどこまでも神木隆之介を虐めまくる。
その一貫性は初代リスペクトとは関係ないこの作品の唯一無二の魅力だと思う。


「ゴジラ」が持つ戦争の恐ろしさと神木隆之介への無限曇らせ。
この二つを同時に楽しめるとても美味しい作品だった。

あとゴジラが「第二次世界大戦」とは切っても切れない関係なのは重々承知してるけれど、脚本については思うところがあるので今回は触れない。






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