「映像の原則」をオススメしたいというおはなし

2023/12/19 更新分

僕は基本的に本を読むのが嫌いな人間で回避できるならできる限りは映像媒体や音声媒体だけを摂取していたいのだ。
それでも回避できない場合は往々にしてあり、その時は諦めて嫌々書物をペラペラするけれど正直めちゃしんどい。最近だと聞いた曲についての感想がうまく書けないのが悔しくて音楽理論についての書物を読んでいたりする。本当にしんどい
そんな活字イヤイヤ人間の僕なのだが、それでもいくつか愛読書というものがある。そのうちの一冊が今回紹介する「映像の原則」だ。

本書はガンダムでお馴染みの富野由悠季監督が主に映像作家志望の方向けに書いた映像の性質について最大限言語化された技術書である。

この本を読むことで普段なんとなく観てる映像を脚本という視点だけじゃなく演出面でその魅力を理解できるようになるかもしれない一冊だ。
中には「いやジジイの言ってること理解できねーよ」となるかもしれないけれど。

映像が持つ性質について事細かに解説されており、
具体的な要素を挙げるならば
例えば「上手かみて下手しもての構図」

nuryouguda氏のブログより

これは上手(右側)にあるものは強く、逆に下手(左側)にあるものは弱い。そしてその位置の変化によって映像に意味合いが生じるというものだ。
(ちなみにこれは上下の概念もある)
能楽由来の法則でその背景には「人間の心臓が左側にあり、右側にあるものに対し生理的な安心感を感じるから」だとも述べており、
上からも分かるとおり映像の性質についてこの本では限りなく理詰めで解説されている。

他にも「イマジナリーライン」(画面内の二人の人物の間を結ぶ架空の線)で、この線をカメラは超えてはいけない事など、アニメ実写問わず当てはまる普遍的な映像の原則について解説されている。

映像だけでなく脚本術、音声の原則に至るまでおよそ映像作品を構成してる要素にはほぼ全て言及していおり、それだけでなく映像業界を志す人向けの現場での実務についても触れられている。

またこの「映像の原作」はアニメ業界で50年以上第一線で活躍してきた富野由悠季監督が、現場で得た実体験をベースに解説されているため、監督の業界についての自伝的な要素もありその手の濃ゆいヲタクも楽しめる内容となっている。(正直その手の方は全員もう持ってそうだけれど)

僕は映像作品全般が好きなので映像の原則を読み込んで以降はなんとなーく
物語以外の映像表現としての側面から評価できるようになり、前よりほんのちょっとだけ深くその映像について堪能できるようになった気がする。
(じゃあ作品感想とかもっとその方向で書けよと言われると返す言葉もないのだが)
ただ一度改定されて大分読みやすくなったとがいえ、文体が独特でめちゃくちゃ読みにくいのだけは本当に気になる。
だが、映像業界を目指す人でなくとも何かしらアニメとか映画を見る人なら読んで損はない一冊なので是非読んでほしい。

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