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Twitter社がX社に統合

TwitterがX社に統合されたということが話題になっています。

こちらの記事でも:

米Twitter社が、イーロン・マスク氏の保有する「X Corp.」という名前の企業に統合され、企業としてすでに存在していないことが分かった。カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所などで開かれている訴訟において、提出された資料から判明した。
 X社はイーロン・マスク氏の持株会社「X Holdings」の子会社。ネバダ州で設立され、カリフォルニア州サンフランシスコに事務所を構える非公開企業という。4月4日付の資料で、旧Twitter社の弁護人が「Twitter社はX社に吸収合併され、もはや存在しない」と明かした。

ITmedia NEWS

一方で、昨年4月にTwitterとElon Muskが締結した買収契約書 Merger Agreementには以下の通り記されています。(SEC米国証券取引所 提出資料

Merger Agreement

On April 25, 2022, Twitter, Inc. (“Twitter”) entered into an Agreement and Plan of Merger (the “Merger Agreement”) with X Holdings I, Inc. (“Parent”), X Holdings II, Inc., a wholly owned subsidiary of Parent (“Acquisition Sub”), and, solely for the purpose of certain provisions of the Merger Agreement, Elon R. Musk. The Merger Agreement provides that, subject to the terms and conditions set forth in the Merger Agreement, Acquisition Sub will merge with and into Twitter (the “Merger”), with Twitter surviving the Merger and becoming a wholly owned subsidiary of Parent (the “Surviving Corporation”). Parent is wholly owned by Mr. Musk.

法律的な文書になっているので、簡単にまとめます:

  • 2022年4月25日、Twitter は X Holding I, X Holding II, Elon Musk と買収契約を締結した。

  • X Holding I は X Holding II の100%株主

  • 買収成立後、X Holding II は Twitter と合併し、Twitter が存続会社となる。

としています。いわゆる逆三角合併の方式です。

したがって、まず2022年10月27日の買収時に、X Holding I は Twitter 株主に対して一株$54.20 ドルを支払い、Twitter を取得、そのまま Twitter は X Holding II と合併します。その時点では Twitter が存続会社です。
この結果、TwitterはElon Musk が主要株主である X Holding I の100%子会社になったことになります。

その後、Twitter が買収の利払いを行ったという報道がありました。

イーロン・マスク氏による買収に伴って借入金が大幅に増えている米ツイッターが最初の利払いを履行したことが30日、分かった。取引に関わる金融関係者が明らかにした。利払い負担が重くなる一方、一部企業が広告の出稿を止めたことにより業績が落ち込み、経営が行き詰まるとの見方が浮上していた。

上記の通り、買収資金は X Holding I が調達、旧 Twitter 株主に支払っています。したがって、当然その借入の利払いは X Holding I がするべきです。
その場合、子会社の Twitter が配当を X Holding I に支払い、X Holding I が利払いを行うのが普通です。
しかし、この場合配当金支払いに伴う税金が発生してしまいます。これを回避し、報道のようにTwitter が直接利払いをできるようにするためには、X Holding I と Twitter が合併する必要があります。

昨年10月末の買収完了時に非公開会社となっているため、このような情報を公表する必要はありませんが、推測するにこのような合併が行われていたということではないでしょうか。
そして、その合併の存続会社が X Holding I であったということかと思います。

今回の報道は、2019年にアカウントを停止されたユーザーの訴訟に対して、訴えられた Twitter 社は形式的には存在せず、合併した(法人登記番号が異なる)X 社が存続会社であり、訴訟を承継する旨を明らかにしたことに伴うものです。

したがって、今回の一連の報道は全体を理解したものではなく、裁判資料の一部を根拠にした、事実ではあるものの、中途半端な報道であったものと思います。

なお、最新の資料では X Holding I ではなく、X Corp や X Holding Corp などの社名が出てきています。このあたりの社名変更(?)などの経緯は現状不明です。

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