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「回復」について新たな気づきを与えてくれる本 #PIECESの本棚

今日の担当はPIECESで組織づくり(PIECESの言葉でいうとまきばづくり)を担当している松井より。

#PIECESの本棚  のリレー企画として、個人的にバイブルとして何度も読み返している本をご紹介します。

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)上岡 陽江,大嶋 栄子著

この本は,ダルク女性ハウスで薬物依存症の女性たちに長年かかわってきた上岡陽江さんと,DVや性暴力被害者のためのシェルターを運営している大嶋栄子さんが二人で,トラウマを受けた女性の回復のあり方を,当事者の目線から描いた本です。

この本を、「回復」という観点を中心に、印象に残っている点をいくつか紹介させていただきます。

なぜ寂しさを感じるのか

この本で紹介されている依存症当事者の方のエピソードの中で、以下のような特徴があげられています。

・あらゆる人とニコイチの関係性(自分と相手がぴったり重なり合った二個で一つの関係)を望んでしまう                                                                     
・健全な距離を「寂しい」と感じてしまう

こういった特徴は、"そこそこ健康的な家庭"に育っていれば、(父母・兄弟・祖父母・従兄弟・友達・学校・近所の人たちといったような形で)持てているであろう自分の応援団を持てていなかったことがきています。

そういった中で、「回復」にとって必要なのは、自分のまわりに(医療者も含む)応援団をつくることだとこの本では指摘しています。そういった応援団を持つ中で、「人との安全な距離感を練習する」ことが大切なのです。

相談の難しさ

「相談する相手が変わり、相談する順序が変わると、トラブルの質が変わる」といった言葉を交えながら、重要だけど難しくもある相談について、この本では触れられています。ここでの「相談」は、「頼る」とも言い換えられるかもしれません。

1年半前、 PIECESの活動説明会に参加した時、代表のいぶきさんが語った「"人に頼る"のはとても主体的な行為」という言葉にとても衝撃を受けたのですが、その内容にもつながることが、この本には多く含まれています。

最後に、「回復とは回復し続けること」という言葉がこの本には出てきます。これは、回復とは何かゴールが決まっているのだろうと思っていたけれども、そうではなく、「回復とは回復し続けること」ということがわかってくるタイミングが、回復の段階としてある、というのです。

再発などの可能性もある中で、「回復とは回復し続けること」という言葉そのものに、励まされた読者が多いのではないでしょうか。

その他にも、「自傷からグチへ」「生き延びるための10のキーワード」といったように、回復を考える上に必要な内容が散りばめらているこの本。ぜひ手にとって読んでいただきたい内容です。

今日の担当:松井 貴宏(まついたかひろ)
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