見出し画像

ひとりぼっちでついてきて

私が大好きなバンドの核ともいうべきパール兄弟。よくここで勝手にサエキけんぞうさんの事をサエキ師匠呼ばわりしたり、好きな曲のことを書いたりしてる。そのパール兄弟に"ダークサイドにようこそ!"というアルバムがある。それはアニメのサントラなんだけど素晴らしい出来で、原作やアニメを知らない私には判断ができないが、アルバムタイトルやコンセプトに原作の力があるのか、パール兄弟のオリジナリティが強いのか分からないし多分両方なんだろうけど、聞いている分にはパール兄弟かなと思う。このアルバムを聞いただけの憶測なんだけど。このアルバムの好きなところは多々あるけれど、例えば"世界は僕を殴りにくる"は"鉄兜の女"を思い出してしまう。明確に違うとは思うが"鉄兜の女"の何十倍もパワーアップしたエネルギーを感じるのだ。そして"君に崩えホえ"はなぜか"馬鹿野郎は愛の言葉"を彷彿とさせ、何百倍もパワーアップした愛を感じる。"ジャンボカメラにどんと来い!"は久しぶりにバカボン鈴木さんの歌が聞ける。窪田さんの曲も全て素晴らしくアレンジもぴったりで、さらっとしているのに怒涛がキテて幸せだ。バンドの一体感も感じる。これはサントラではないな、原作をモチーフとしたパール兄弟のアルバムだ。そう思ったのだ。表題曲というものないが、メインの曲と思われる"明日はたぶん大丈夫"はシングルカットされてもおかしくない勢い。"修羅場にようこそ!"は(多分)窪田晴男さんのボーカルで、"冬のゆううつ"のような歌もいいけど、この歌もいい。"ジャンボカメラにどんと来い!"や"蒸し風呂と脳と他人"、"陰謀は夜明けに笑う"、"夜はフワリ風はヒラリ"のようなサントラっぽい曲もある。しかしこのアルバムでずっと引きずられているのは、"ダークサイドについてきて"と"ようこそ!ひとりぼっち"の流れ、曲順、情緒その他すべてだ。これはずっとそうだけど、感じたら、とろけて染み込んで蒸発してしまうよ。

ダークサイドについてきて

どちらの曲もサエキ師匠が作詞、窪田さんが曲。どちらもすごい。歌は女優で声優で歌手の牧野由依さんが歌う。これがまた最高。そして曲と曲のアレンジ。多分アレンジも窪田さんだと思うけど、ダークサイドだけど希望の曲でアレンジもお湯に浸かっているような安心感になっている。ドラム、ベース、アコースティックギターでシンプルに始まる。しかしBメロからのオルガン、そして初めて聞いた時はエフェクトをかけたギターかと思ったエフェクトのかかった(多分)サエキ師匠の声、それが疾走感を増すようにワクワクさせる。サビに入ると響き渡る鐘の音が、とても幸福感を盛り上げる。そしてチェレスタのようなトイピアノのような音がゼロから傍観者の俯瞰的な視点につれてってくれる平穏。特にオルガンは効いていて聞く人間に安心を与え、そして鐘の音が幸福を呼ぶ。ベースもドラムも素晴らしい。そして歌の牧野由依さんが最高で、幸せとかわいらしさと高揚を運んできてくれる。そして高揚の大きな部分が歌詞であり、曲と歌と一緒になったらもう私をバラバラに砕いてしまってかき混ぜてしまう。そして世界に降り注ぐような気がするのだ。そんな幸せな歌。

タブーを破ったときの衝撃は
きっとそれで素直になれるでしょう

ハードル超えた罪の陶酔は
そしてもっと奥へと行けるでしょう

ダークサイドを歩いてね
荒野の心花園に変えてしまうよ
私の夢にささってきて
抱きしめたら
いつのまに天国のゆか

奈落へ落ちるときの快感は
きっとそれでひとつになれるでしょう


ようこそ!ひとりぼっち

"ダークサイドについてきて"と比べて少しヘヴィーな感じの曲。そしてもっとシンプルで、一コーラスが終わるまではアコースティックギターと歌だけで、暗闇を手探りで進んでゆくような静けさと余韻にあふれる。窪田さんのギターの静かな語るような音とサエキ師匠のボーカルが、底のない暗闇を見えないエレベーターに乗せられて急下降してゆくような、それでいてその落下に心地よさを感じてしまう。息をしているギターと歌とのデュエットのように感じる。そしてバンドの演奏が始まりドラム、ベース、ピアノが心に響き沁みはじめる。ドラムの淡々とそして情熱的に進むリズムは、刻々と進む時と闇、苦悩と救いの時を刻んでいる。ベースは心の本当の叫びをリズムにしたように響く。特に入ってくるのはピアノ、時に激しく時に繊細に響くピアノは音色もあってすべてを包み込んでくれる情景のようだ。そして何度も重なってしまうが、サエキ師匠の歌、声によってひとりぼっちに連れてゆかれてしまう。そのひとりぼっちは私にとってはいつものことなのだけど、それよりももっと深く意味のあるひとりぼっちのよう。そこに絶望はなく、きらきらとした数々の思いと同様のひとりぼっちかなと思う。最後はピアノとエレキギター、スチール?のような音が響き沁みわたり、感覚の間をゆらゆら揺れていって消えてしまいそうになる。そんなとても儚い歌に感じる。そしてやっぱり歌詞はとても大きく響き続ける。

紙がくちて黄ばむのと同じ
僕の言葉はマシンの中で凍る

ノックノックノック無言の空間を抱いて
壁をたたいてはもがくよ
大事なセリフなにもいえないまま
ノックノックノック真っ暗星空を抱いて
果てのない宇宙へ
ようこそひとりぼっち
ひとりぼっち

そうなんだ。私は足りないから最近やっと気づいた。"ダークサイドにようこそ!"はこの二曲そのものじゃないか。この二つの曲がとても、ずっと、印象に残ってたのは題名で分かってたはず。この二曲がこのアルバムなのではないか。いやすべての曲がこのアルバムだということは分かっている。しかし私にとってはこの二曲がとても印象に残り、ずっと引きずり続けている。そしてやっぱりどうにもどうしても、とろけて染み込んで蒸発してしまうんだ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?