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街の選曲家#7

音楽は変わらず聞く。耳から感じる景色も以前と大きく違うわけではない。選曲するのは以前から好きな曲やテープに録音したことのあるもの、CD-RやUSBメモリに焼いたことのあるものが多い。そこに新しくサブスクやwebで聞いたものも蓄積されてゆく。そう考えると大まかな景色は変わらずとも世界は少しずつ変わっている。そんなこと関係ないけどね。音楽が好きなだけ。


仏滅トリシュナー - 八十八ヶ所巡礼

どこで出会ったのか憶えていないが、出会った瞬間から引き込まれたバンドが八十八ヶ所巡礼だ。どの曲もカッコよくてシビれる。パッと見は普通の、いや、普通じゃない3ピースバンドだけど、この曲もいきなり不穏なギターリフ、バスドラをガンガン連打するドラム、ベースは派手じゃないけど忠実にリズムを刻んでゆく。ボーカルもベースの人で不穏だ。指や脚が死にそうな演奏にも感じる最初のリフを含め、曲を通して、いや他の曲も含めてカッコよくて仕方ない。歌詞もとてもいい。演奏と共にすべてにおいて八十八ヶ所巡礼の世界を作っている。これはロックバンドとして人に伝えたい。もっとみんなに聞いてほしい。そんな思いが飛び出してしまう音の楽しみだ。あー


Sneakman(Jet Set Radio) - Mothership Loudspeakerz Remix

よく載せてしまうゲーム系、セガ系の曲でJet Set Radioというゲームの中のトラックだ。このゲームには思い入れがある。その大きなものは長沼英樹さん中心の音楽だった。トーキョーやシブヤチョウという世界、キャラクターとかの特徴、当時は新鮮だったトゥーンレンダリングという技術、それらの世界観の素晴らしさがあるが、やっぱり気持ちは音楽だった。このゲームに音楽は必須で、実際ゲームでも物語はDJから語られる。そしてこのRemixは長沼英樹さんのカッコいい曲をさらにMothership Loudspeakerzさんが細分化し組み立て直し、光を散りばめたような曲に仕上がっている。それがよすぎる。それは例えばRemixなのでベースでもドラムでももっとドカドカきてもいい気もするが、逆にこの軽快さがいい。


Hurricane Jane (The Twelves Remix) - Black Kids

オリジナルはナチュラルで少しノスタルジックなBlack Kidsの曲、それをThe TwelvesがRemixしたもの。原曲も好きだがこのRemixは一段上に感じてしまう、それくらいいい。オリジナルの音をミニマルとまではいわないが、シンプルでいいのだ。だがこのRemixの方がオリジナルよりもいい意味で雑っぽく感じ、また音が太い。オリジナルでよく聞こえていたギターはあまり表には出てこず、オリジナルよりも跳ねるベースを含めリズムとコーラスが前面に出ていて、それが体に響いてくる。歌詞は淋しげで抽象的な表現が好きだ。いや完全に理解はできてないけれど。このRemixが原曲よりもいいと思うのは最初に聞いた刷り込みということが大きいのかも。でも原曲のバンドサウンドも大好きだし、それはそれでいいと思っている。


100℃バカンス - 中森明菜

アイドル全盛時、中森明菜さんはそんなに知らなかった。いやアイドル全般をそうだったし、それは好きになれなかったというより余裕がなかった。お金や時間というリソースは限られていたのでその余裕はなく向いていた方向が違った。だが彼女ほどのアイドルだと追わなくても向こうからやってくる。テレビでラジオで雑誌でね。この曲は当時は聞いたことはなかったけど、彼女は大アイドルだったが、アイドルとしてのイメージは固くシリアス。ヒット曲もそうで、思うにこの歌のような曲が多かったら彼女の道も変わっていたのかもと思わせる、この歌はそんなアイドルらしい歌。どちらかというとバラードとか、夜とかのイメージが似合う彼女だが、この曲は太陽降り注ぐバカンス、この新鮮さはアイドルの王道で安心できる。この曲の明菜さんの歌唱は声の伸び、かわいらしい歌い方、今はまでに見ていた明菜さんとはまた違うアイドルそのものだ。そして曲は細野晴臣さんだけどこれがシングル曲なら当時細野さんと気づいて聞いたかもしれないな。Bメロは特に細野さんぽい気がするし、サビの一部もそう、だから明菜さんの歌唱も含めて当時にも聞いていたかった。どんな世界が広がっていただろう。


WHAT'S THAT - Vritra

好きな曲。ヒップホップだが、とりたててフロウに特徴があるわけじゃない、トラックも音の少ない構成でシンプルなものだ、リリックなんて語学が薄弱なので何を言ってるのか分からない。でも好きなんだ。例えればワンノートベースとでもいうベースらしき極低音の電子音、そのワンノートのシンプルさ、力強さ。ヒップホップは好きだけど、なぜこの曲が私にたどり着いたのか、それを考えると大いなる流れを感じる。音楽は移動している。シンプルなトラックの中にシンプルなラップ、淡々としているそれは大いなる流れとは関係ない。しかしこの曲の持つものがここにたどり着かせてくれたのだ、と思うようにしている。そう、淡々としてるのだ。でもこころを揺さぶられる。好きなんだ。


マイミステイク - SKYE

中学生越しの活動をしている大型新人バンドSKYE、メンバーは誰もが知っている有名アーティスト、そしてそれぞれ様々な場所で活躍している。そんなバンドの新譜が発売された。実はそれ以前にも佐野史郎さんとのSKYE、松任谷正隆さん名義の音源は出ていた。サブスクで聞いてみていたがピンとこなかった。しかし後に松任谷正隆さんがSKYEのメンバーになり今度のアルバムが発売になった。聞いてみると今度はしっくりくる、いやぴったりと心に寄り添うようなサウンドで、力が抜けていて穏やかになれるようなアルバムだった。その中のこのマイミステイクだが、小原礼さんの曲で詞も同じ。小原礼さんのバンドサウンドといえば矢野顕子さんや奥田民生さんのコンサート、サディスティックミカバンドが思い浮かぶ。この曲は気持ちが晴れるようなロックでコーラスもいい感じに入っていて、あの時代にタイムスリップしたような、今の時代を踏みしめているような感覚を覚えてしまう。茂さんだけなのかは分からないが幾重にも顔を出すギター、世界から降ってくるようなオルガンの音、こころに響き続けるドラム、ホーンセクション、そのすべてが素晴らしく、歌詞も素晴らしい。アルバムはカントリー風やR&B風のロックもあるが、これはストレートなロックだと感じる。また、小原さんが長年一緒にやっている奥田民生さんの雰囲気も感じるような。素晴らしいアルバムの素晴らしい曲。もちろんアルバムにはほかにも素晴らし曲ばかりだが、今回はマイミステイクを選曲したかった。


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