見出し画像

街の選曲家#ZZZZZ1

このnoteにて街の選曲家というのを書いていた。以前は記憶をたどりカセットテープやリライタブルの光学メディア、DAP等で過去に実際選曲していた中から思い入れのある曲のことに触れるという感じだった。それは繰り返し聞いていたもので記憶には刻まれている。また大まかには同様でもあるのだが、今回からは時間的に当時のその次に進んだ頃、インターネットの音楽サブスクリプションサービスを初めて利用した頃のプレイリストから書くことにする。この時代に最初に加入した音楽サブスクリプションはおまけというか制限があるもので、新譜や巷で商業的に成功しているバンドやビッグネームの多くも解禁されていなかった。その中でどれだけ音楽を楽しめるかということを考えた。今までは積極的に聞かなかったような曲や、今までの経験からは繋がらず、まったく知らないようなジャンル、曲、アーティストまで聞くようになり、なんだか不自由の中の自由のような感覚を楽しんでいた。特にその頃から病気の中ということもあり、楽しむということに飢えていたのかもしれない。そういった様々な歪みや鬱屈したものが何でも楽しむという方向へと向かったのかと思っているし、そういう部分は今も変わらないだろう。


La Muralla de China - Astor Piazzolla

以前ここにも書いた"酒の頃"には夕方から夜中気絶するまでお酒を飲んでいた。朝起きるといろいろ破綻していたり、時間の進みがその時々で違っていたりして、それらを調整する意味でもある時からずっとインターネットラジオでクラシック専門チャンネルのOTTAVAを聞いていた。番組はいろいろあって夜に飲んでいるときも聞いたりしていたが、その再放送だったのだろうか、様々な番組を昼間にもやっていた。それをずっと聞いて気持ちを調節していたのだ。その頃はまだWindows2000の何かのアプリのプリセットでOTTAVAを選曲できたのでそれもよかった。ずっとヘッドフォンをして、毎日ずっと聞いていたのだが、その中でいつもアストル・ピアソラの曲がヘビーローテーションで掛かっていて、タンゴではあるのだが不思議で魅力的な曲ばかりで耳を奪われていた。OTTAVAでは新世界クラシックとかそういう言い方をしていて、アストル・ピアソラという存在を知り、後に制限付きのサブスクに入ったときに聞けるアルバムがあったので自分のライブラリに入れ、そしてそのアルバムを聞いているうちにLa Muralla de Chinaという曲を知った。バンドネオンとギター、それにヴォーカル、ドラムの派手さ、それらがガツンとくるところが気に入って、散歩のためのプレイリストの最初の曲にしていた記憶。この曲はタンゴ的な盛り上がりというのだろうか、そういう情景を気に入っている。オリジナルはWith Jose Angel Trellesというアルバムだそうだが、私は有名なLibertangoが入っている編集盤で聞いていた。曲自体は同じもので今ではオリジナルアルバムも当時の曲順で聞くことができる。そしてやっぱり変わらない、この曲が好きだ。


おんな港町 - 八代亜紀

私は積極的に歌謡曲を聞きたいと常々思っている。それはその時代を過ごしていたのもあるし、当時は何枚もレコードを買えなかったり、その曲たちと時代が少し違っていたりしたのも理由だ。当時のオケは思ったよりゴージャスだったり、プレイヤーの仕事を感じるのが楽しいというのは後に感じたが、それも理由にはなっている。この曲は歌謡曲というか演歌だが、それらも含めて歌謡曲とも言ってもいいだろうし大ヒット曲だ。しかも八代亜紀さんの歌で彼女の美貌と歌唱力、少しのハスキーボイスにとても痺れる。大ヒットしたのも納得だ。私がプレイリストに入れていたのはこのリンクのオリジナルではなく、もう少し後に録音されたもののようだ。このオリジナル盤は初々しくかわいらしくとてもいい。私が聞いていたものの方が完成度は高いとは思うが、これはこれで遜色なくオリジナルのよさがある。歌唱も違うし声の熟成度も違う、しかし当たり前だがどちらも八代亜紀さんであり、亜紀さんの歌は最高だなと思わずにはいられない。


oiseau - dip in the pool

制限付きサブスクでdip in the poolを検索し、存在していると知ったときすぐにbrown eyesというアルバムをライブラリに入れて聞きはじめた。dip in the poolは八十年代、九十年代には聞いていてボーカルの甲田益也子さんも有名だったし、今思うとアンビエントのようなもの、それでいてエレクトリックなサウンドでポップでもあり、聞いていたら自分の聞く音楽の中においても独特さを感じられて、また甲田益也子さんの存在感も大きかった。甲田益也子さんはその後も細野さん繋がりでも聞いたりもした。そのdip in the poolのbrown eyesの中でもこの曲はオケもボーカルも沁みわたる。アルバム自体もそうなのだが特にこの曲が気に入っている。ボーカルも含めてそれぞれの音が体の中に響いてきて曲からも歌詞からもその情景が入ってくる。歌詞は明確にというか完全にはニュアンスも訳も分からないが、それでも伝わってきて沁みるような曲だ。


バンド・デシネ - ドレスコーズ

ある日その制限付きサブスクを聞いていたらリコメンドに現れた、それがドレスコーズだった。その頃私は制限付きということもあり積極的に知らないアーティストを聞こうと決めていたので興味がわき、とりあえずアルバムをライブラリに入れ聞いていた。初めはボーカルの志磨遼平さんの声に特徴があるなあと思って聞いていたが、聞いているうちに全体が見えてきた。聞きやすく分かりやすく世界がある、そしてロックでポップで聞きやすいのにこころが揺さぶられる。アルバム自体もこの表題と同じタイトルだが、この曲のタイトルはうがった見方をすると、ダブルミーニングのようにも感じる。それはよろしくはない意味も含まれているが、それを放り投げるような軽快なロック、そういうのがいい。このアルバム自体多様で魅力的な曲があり、いい出会いだったと今も思っている。こういうノリのいい曲は私のプレイリストにはいい。


For the Sake of Making Games - C418

C418といえばMinecraftのサウンド、音楽で有名だが、この楽曲はその後のMinecraftのドキュメンタリーのサウンドトラックとして制作されたらしいOneというアルバムに入っている。その制限付きサブスクでご多分に漏れず私はゲーム音楽、チップチューンを検索していて、そこでC418の楽曲があると知った。当時はアルバムジャケットで一目瞭然のようにMinecraftの音楽の人だというくらいの印象しかなかったが、アルバムを聞いてみてDaniel Rosenfeldさんの多彩な音楽に感心し、もっと聞きたいという気持ちになった。この曲名が表すようにゲームを作るときのリラックスできるような音楽なのかもしれない。そのドキュメンタリーを見てはいないが、そういう情景のサウンドトラックだったのかなとも思う。プレイリストではこの曲はアンコールがあるとしても最後の落ち着けるような曲で、チルアウト的なものだ。最初に聞こえてくるゆっくりした鐘のようなガムランのような音には静の世界に引きずり込まれてしまう。いや、引きずり込まれるというよりも、何も問題なくその世界に入ってゆくよう。短い曲ではあるが単純に"お わ り"というものを意識できるような位置付けにしている。まあ普通っぽい話だけど。散歩でいうとクールダウンだね。


今回も少し違うが変わらず選曲ということになった。何も変わらないが、私の記憶の時間軸が少し違う。ゆっくり歩いているが、それでも音楽は変わらずそして蓄積されてゆく。それを思い出すのもいい感じ。曲が頭の中で鳴ったりね。そういうこともある。

街の選曲家



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?