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街の選曲家#ZZ1ZZ1

これは一応選曲という形だが、それには前提がある。私は自身について残念なのは、音楽のことがあまり分からないということ。音楽理論も分からず、中学生時代の音楽の試験では吹奏楽部の友人に長調、短調の呪文を試験直前に教わったり、楽器も多少はやったがあまり身につかず、それ以前には声楽もやっていたが、自分自身どうなんだろうという疑問でしかない。だからいつも感覚で書いている。好きとか嫌いとかの感情。それは私という人間の経験などを前提としたバックボーンが影響しているのだろう。世代、時代的なものもある。そんなことを考えると選曲して聞くという、自分に閉じた行為をこうして載せるのもどうかと思う。だが考えるに、いつも書いているカセットテープ時代の友人と共有した経験、それが私にとってはいいものなのだろう。だから書いているし、逆にここでも人に教えてもらった曲を書いたりすることもある。


HOT SNOW [RD.5] 【ファンタジーゾーン より】-(SYSTEM 16版) - SEGA SOUND TEAM

セガである、ファンタジーゾーンである、Hiro師匠である。それだけで最高で、セガのことは何度も書いているので割愛するが、セガの数あるゲームの中でもこのゲームが出たときには驚いた。まず他のSYSTEM16のゲームとは画面の雰囲気が違いポップ、しかもシューティングゲームというアンバランス感。後にQUARTETやダンプ松本もプレイしたが、画面のポップさはSYSTEM16でも一番だと思っていて、ゲームセンターでも目を引く存在だった。画面だけを見たときに思ったのは、誤解を恐れずに言えば、それまでのセガ販売のコアランド製のゲームのような雰囲気を感じていた。当時の最新ということもあり洗練されているのだけど、それまでのセガにはないポップさや斬新さを感じた。しかしそれだけではなくプレイしてみれば耳を引く存在でもある。私はこのゲームが好きで何度もプレイしたし、蛇足にはなるが後にゲーム基盤も買った。もちろんこのゲームがやりたかったし所有したかったからで、一方ではセガの人としてSYSTEM16そのものも欲しかった。ファンタジーゾーンの音楽はサンバホイッスルが特徴的なラテンミュージック風の曲調のイメージもあるが、ハードロックっぽいものまで様々な顔がある。そのバリエーションも楽しみで、まさにBGMというものだ。

このHOT SNOWはゲームでは七面の曲で、メロディがない日本のバージョンだ。メロディのある海外バージョンも好きだが、私はずっとこれをプレイしていたので、やはりこのバージョンがしっくりくる。Hiro師匠によるとメロディが国内版には間に合わなかっただけらしいが、私にとって怪我の功名というか、この滲みるような落ち着いたバージョンが大好きだ。もちろんインプリンティングもあるかもしれない。大体の楽曲は最初に聞いたオリジナルをカバーが超えることはできないし、その上ゲームセンターで何度も繰り返し聞いていた曲だからか。この静かな、童謡のような深々と降り積もる雪のような、そんな曲調なのに、リズムはサンバ調でサンバホイッスルも高らかに鳴り響く。この不思議なおとぎ話の世界に浸っていたくなる。それはゲームの中でのことでもあるが、この曲だけを聞いていてもその気になってしまう。そういう不思議な世界のゲームの不思議な音楽で、不思議な現実の曲。


爆裂パニエさん - tricot

tricotといえば私にとってはこの曲だ。いやこれだけではなく好きな曲は多々あるし、このバンドの代表的な曲と勝手に思っている曲もこれ以外にもある。最初のサブスクでtricotを発見して以来、こんなバンドがあったのかと驚き、聞けるものはすべて聞いていた。その中で一番最初に出会ったのは、この曲が表題曲となっている爆裂パニエさんというミニアルバムだった。tricotは衝動を呼び起こされる四ピースバンドで、このミニアルバムを最初に聞いたのもあったし、その出だしがこの表題曲だったこともあってインプリンティング状態でもあったのかもしれない。たがそれは、ただカッコいいと言えばいいだけでそれ以上はなにも必要なく、耳に入ってきた瞬間からその場所に連れてゆかれている、そんな曲であり存在であった。

爆裂パニエさんというミニアルバムの表題曲で、その最初の曲というインパクト。そしてこの爆発、このパワー、この躍動。曲自体が独特な構成で、一コーラス目と、二コーラス目ではAメロにあたる部分が違う。だがトータルとして面白い曲で、ドラムは変則的なところもあって心を踊らせ、ペースは表に出ることはないが力強くリズムを支えている。ギターがとにかくコッコよく乾いた音で感情を揺さぶる。それはAメロというか最初のセクションの静寂からサビ直前に向けて徐々に音が増え、サビの爆発は抑圧からの開放が感じられ、それがパワーになっているのが伝わる。それはリードギターもリズムギターも同じで、レールの上に載っているのにもかかわらず、逸脱しそうなやぶれかぶれ感をももっているような気がするのだ。私にはそう感じられ、その危うさがとてもいいのだ。また歌詞がとてもすごい。私がどうこう言うこともないが、感情があふれているようで抑えているような、そういう微妙な心情がタイトロープの上で歩いている感覚をおぼえてしまう。そうだ、結局はただ最高と言いたいだけ、それだけでいい、音も歌詞も、曲も、歌も、すべてがあるところにある。それを発見してしまった喜びは聞き続ける現実だ。


Dreamgirls - Jennifer Hudson, Beyoncé Knowles, Anika Noni Rose

当時あるテレビ関係と言えそうな人間から、試写会のチケットがあるから映画を見に行かないか、という話があった。当時も今も私はどうせ暇だし見に行ったのだけど、それがドリームガールズという映画だった。ミュージカルというのは聞いていたが、それがブロードウェイのミュージカルだったことや、シュープリームスがモデルとなっているということ、シュープリームスを今は、いや当時からなのかも知れないがスプリームスというのだということなど、後にいろいろ知った。だが当時はビヨンセとエディマーフィーくらいしか知らなかったし、これによってジェニファーハドソンのすごさを知り、後にジェイミーフォックスは数々の映画で見ることになった。ジェニファーハドソンのすごさと書いたが、やはりミュージカルという点も大きく、映画のストーリーやドラマもいいが、歌のパワーがとてもすごい。その中の映画のタイトルと同名の曲がこのDreamgirlsだ。このサントラがサブスクにあったので早速プレイリストに入れた。当時それだけこの映画の曲に衝撃を受けた。

この曲は映画タイトルそのもので、ドリームガールズというグループが成立した曲そのものであり、すべてがあるべくところに収まったフィナーレの曲でもある。グループが成立した曲という意味では、メインボーカリストになった主人公のビヨンセの繊細さと力強さのバランス、その歌唱が素晴らしい。ゴージャスな曲でシュープリームスの曲っぽいとは思わないが、映画の体を成している曲というのはとても感じる。基本的にはビヨンセが歌っているが、三人のボーカリストの割り振りの部分もあり、それらがドリームガールズというグループの存在を感じさせる。ビヨンセは書いたように繊細さと力強さを兼ね備えていて、アニカノニローズは繊細さとキュートさを、そしてジェニファーハドソンは力強さとファンキーさがあり、それぞれの輝きや役割を感じる。そして最後のジェニファーハドソンがメインボーカルとして歌うバラード的なバージョンでは、フィナーレを演出する総仕上げとしての意味もあるが、彼女の圧倒的な歌唱が印象的だ。その映画の記憶は今でも鮮明に憶えていて、そんなに記憶力がない私でさえも明確に憶えている曲が何曲もある。


生まれかわれるものならば - いしだあゆみ

この曲もご多分にもれずサブスクリプションのリコメンドか検索で発見した。細かくは憶えてないが歌謡曲のいくらかをプレイリストにも入れていたし、時々はいろいろな曲を検索していた。いしだあゆみさんの曲が目にとまったのは過去にブルーライトヨコハマを懐メロで聞いたことがあったり、それを好きなアーティストがカバーしてたりということがあったからだ。さすがにブルーライトヨコハマの時代は直撃世代ではないので彼女の歌で知っていた曲は少なく、ブルーライトヨコハマとあなたならどうする程度だった。それらを聞いてみようと彼女のベスト盤を聞き始めたのだけど、その中でもこの曲が耳にとまった。私でも知っていた大ヒット曲もいいのだけれど、この曲に耳が奪われてしまったのだ。

この曲もブルーライトヨコハマなどと同じく筒美京平さんの曲だ。アレンジは筒美さんではなく高田弘さんという方で、その人のアレンジによるものが私にそう感じさせるのかは分からないが、ホーンとストリングスの一部がどことなく洋画を思い出させる。欧州映画っぽくもあるし、筒美さんの作曲の感じかもしれないが、バートバカラックっぽく感じる気もする。いや、それは少しだけだけど、私にはなぜか昭和歌謡のなつかしさとともに古い映画を見ているような記憶が呼び起こされるのだ。イントロやアウトロの統一感のある特徴的な泣きのアコースティックギターには昭和歌謡、ともすれば演歌の流れも感じなくもない。クラリネットにもそれは感じる。そこにニュートラルで美しいいしだあゆみさんの歌唱があって、それが大好きなのだ。決して派手ではないが誠実さを感じるような歌声で清涼感があると思う。この曲に出会えたのは私とってうれしいことだ。




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