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077_後悔しないなんてあり得ない 1

今回はつまらないリストラの話です。もう10年以上前の事ですから、黙っていた事も多いのですが、時効だと考えて良いでしょう。

当時はリーマンショックの影響で日本経済は大荒れでした。社会問題になった「派遣切り」が一段落した時点で、いよいよ古参社員へとリストラの魔の手は伸びていました。

当時の私は50歳を過ぎていました。中途採用ながら在籍は19年目。一応、社内改革のデジタル化の功労者として社内で褒章された事もありました。しかしそれは過去の話でしたし、リストラに限ってはそういう社員ほど上層部に疎まれる傾向は珍しい事ではありません。

最初に呼ばれたのは9月でした。直接の上司ではなく、そのまた上の管理職からでした。「重要な話について面談」…そのメールを読んだ時に「いよいよウチでも始まったか」というのが素直な感想でした。

その上司との面談の前日、組合のミーティングで誰に声がかかったのかを調べました。私を含めて10名でした。そのうちの4人は私と同様に過去に何らかの形で褒章された経験がありました。

この10人の平均年齢は50歳弱。当時から、ごく一般的なサラリーマンの平均年齢は上がっています。その会社も広告・印刷業種の割には平均年齢が高いとは実感していました。
社の財政を云々という前に、総体的に若返り化を図らないと生き残るのは難しいというのは客観的に事実だったでしょう。

私は組合のミーティングの席で退職勧奨を受け入れる方針を明らかにしました。
その場にいる人たちは黙り込みました。私の意向について、肯定も否定もできないという印象だったと思います。
「…おそらく社としては今回10人に対して退職勧奨を行ったが、若返りが目的であれば20~30名を減員する計画だろう」
というのが、その場の皆の意見でした。

おそらくリストラはオーソドックスな手法で行われると予想されました。
・社の財政と業績は厳しい
・残留しても昇給はなく減給される可能性がある
・今であれば規定の退職金に上乗せする
・上層部の会議では整理する人数は決定している
・その人数に達するまで退職勧奨の面談は継続される

といった項目を面談にて繰り返し言われ、勧奨を受け入れるまで説得されるという事でしょうか。
私が早々と受け入れる方針をとったのは、過去にシビアな減給を2回食らった経験からでした。残留して減給を食らうのか、それならばと新天地を求めるのか、私は後者を選んだ次第です。

しかし目の前に光が見えているわけではありません。どう乗り越えれば良いのか、そして乗り越えた先に何が待っているのか…。それはライオンかトラかのどちらの檻に入るかという、一種の究極の選択でした。

選択肢としてベストもベターもない以上、どちらを選んでも後悔をしないで済むという事はあり得ないわけです。(続く)

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