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AIキャラクターの現状と、世間の期待値のズレ

著者:Pictoria 代表 明渡

これからAIキャラクター、あるいは周辺領域に参入する方々が、大きく道を踏み外さないように何かヒントになれば...と思っていくつかの観点から考察を書きます。

そもそもAIキャラクターって何なのでしょうか。
2023年11月現在にあっても、まだまだAIキャラクターへの認識が人によって違いすぎると感じています。
AIってsiri?とか、あるいはアニメの中のアンドロイドやAI歌姫的キャラだったり、はたまた映画「Her」のイメージだったり... ドラえもん、あるいはリアル人物のAI化?

AIキャラについて同じ議論をしているように見えて、各々が培ってきたイメージや前提が違いすぎるので、プロトコルを意識しないと全く建設的な議論にならない事が多いです。
ここの徹底的なすり合わせは、同じ社内ですら定期的に行わないといけないですね経験上。
これやっとかないと、「プロンプトすごいこだわったぞ!」って数十時間かけたAI人格が、「LLM変更・ファインチューニングでよくね?」で30分で上書きされたりとかの悲しい顛末が待つことになります。

大前提:
皆さんご存じの通りOpenAIは世界No.1AI企業です。
そんなOpenAIが繰り出すGPT(究極の倫理観と知識を持った存在)は人間のイデア(誤用?)と言ってもよいのではないでしょうか。
つまり、グローバルで最大多数の最大幸福的に成立するようなAI人格は、魅力という点でいけば、平均性と個性の欠如が問題になるのです、いや既になっています。
やはり日本発でやるなら、アンチ優等生型AIキャラクターが必要になってくるでしょう、と。
何が表現できるかではなく引き算で個性を考える。

明渡の個人的なポリシーとしては、自社キャラクターの中身に言及することはご法度なのですが、
弊社のAIVTuber紡ネンなんかも、ファンの皆さんの言葉から学習していて、頭の良さの観点だけで言えばそんなに良くはないはずです。
非常にAI的で、頭いいのか悪いのかいまいちわかりません。
でも多くの人が3年たっても愛してくれています。
これは嬉しいと同時に重要な示唆だと思っています。

エンタメとしての考察:
弊社は創業当初から(非AIの)バーチャルYouTuberの事業をやっているので、人がもたらすエンターテイメント性をAIで真正面から超えることは、忸怩たる思いですが難しいと感じています。
AITuberが、YouTube同接10万行ってる姿想像できますか?
しかも、人間側の供給はほぼ無限に近い状態です。これほどヤバイ戦場はありません。

AITuberはIPホルダー側の課題はいくつも解決するかもしれないですが、その実エンドユーザーに面白いを提供できるロジックはかなり少ないんですよね。
この圧倒的な絶望からAIキャラのもたらす価値の構築をスタートしているかが、とても重要だなと思っています。
ただ、ロイヤルティやファンダムにつなげる方法は「面白い」だけじゃないはずなので、色々なAIキャラが出てくるのは純粋に楽しみです。

パートナーとしての考察:
彼女・彼氏作る系のアプリ、最近増えたなと。
ただ、単なるチャットアプリだと、チャットするという体験には人はお金を払うイメージは湧きませんね。
どんなに優れた返答をくれたとして、チャットそれ自体に課金する人っているんでしょうか。多分いないと思います。
チャットすることをどういう体験にUPDATEするのかが重要です。
キーワードは「感情移入」ですかね。

あと、いきなり彼女(彼氏)です!って言われてそんな恋愛感情わきますかね。
そんなカップラーメンみたいな勢いで一生のパートナーってできますか?
インスタントすぎでしょという。
チャットアプリケーションの枠組みは限界はあると思っています。

まぁあとはRAG(Retrieval-Augmented Generation)を使った記憶で、自分のことを覚えていってくれる体験ですかね。
自分のことここまで知ってくれてるなら手放したくないってとこまでいったら、もう戻れないですね。
いずれにせよ、キーワードは感情移入をまず作る体験かなと。

ビジュアルへの考察:
リアル寄りのデザインは(相対的に)難しいと思っています。
実写系コンテンツは、相手の実在が確信でき、変な言い方ですが実際の肉体関係を想起することが可能なコンテンツです。
異性のアイドルや配信者の価値も、多くの場合は結局身体性に紐付く欲求に行きつくと考えています。
(最近は推しは清らかに推すというムーブメントもあるみたいですが)

現状の技術レベルでは身体的欲求を満たすことができないので、「AIキャラ業界」で戦うなら、個人的には悪手な気がしています。
もちろんやり方はいくつかあると思います。
うーん明渡個人が二次元的ビジュアルが好きだからそう思ってるだけかもしれませんね。
ただ、AITuberが家事とかやってくれる世の中になったらマジでやばいですね。15年後くらいに期待。

オタク文化の変容:
オタクって言葉なんとなく古いですよね。自分がオタクという言葉を発するとき、毎回あーやばいと思っています。
国民総オタク化していて、もはや特定の何かを指し示すワードではなくなっている気がします。
明渡は今年29歳ですが、中高はずっとノベルゲームをして暮らしてきたので、(二次元の)女の子と一対一で深く向き合う体験、画面の向こうの異性の存在を真剣に考えるという体験に慣れています。
ただ、1on1の「自分とあなた」を中心とした文化から、話題のシェアを中心とした文化に、少なくとも20代中盤より下の世代はなっている気がします。
なので、ガチ恋とか、そういうのって、ちょっと自分か、自分より↑の世代な感じがしますね?
年齢層によって、明確に欲している体験が違いそうだといろいろな人と話していて思います。

マネタイズへの考察:
AIを使おうが、結局キャラクターなんだから、セグメントとしてはキャラクタービジネスモデルに落ち着く?
AIキャラクターならではの優秀なマネタイズを所望します。

AIキャラは日本の人口減少に寄与してしまうか?:
YESでありNO。既に人口減少は始まっている中で、むしろ異性(あるいはパートナー)と話すことの楽しさを知れることは重要な事なはずです。
GPTであれば恥ずかしげもなく英会話練習できるという人が増えてきていますが、むしろAIキャラを人間関係構築の練習台として、自分を人間社会にうまく適用させていくために使う方法もあると思います。
個人的には、内向きな(自分を含む)日本人のための救世主くらいに思っています。

結論:
「AI」であることにそれ自体に大した意味はないなと。
AIがエンタメにもたらす具体的なベネフィットを常に真剣に考える必要があります。
このベネフィットの仮説を持っている会社やクリエイターのみが、エンタメAIの領域で新しい価値を作れるのだと思います。

弊社はもう三年もこの問題に向き合ってきたので、そろそろすごい体験を提供できる自信があります。
エンタメAIで、初めて持続可能なコンテンツ(ビジネス)を作るという、前代未聞の偉業を成し遂げたいと考えています。
そして、ウチの子がみんなに人気になって、街中のディスプレイで活き活き喋ってるキャラをみて、アレ俺がつくったねんって言いたい。

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