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SCP-JPサイトでも同名義でまれに書いてます。

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最近の記事

【備忘録】Amazon Musicで聞けるボカロアルバム(20240425追記)

(☆は個人的に特にお気に入りの意味) 瀬名航 - せなのおと 収録曲: aimai、想い出など ancou - MINZOKU COLLECTIVE 収録曲: SOMOSAN、Did Geri Dooなど ばぶちゃん - みんなのびょうき 収録曲: みんなのびょうき、結合性少女など ☆ばぶちゃん - おわりのはじまり 収録曲: 朝に嗤う黒百合、せかいのおわりのさいしょのうたなど 紙崎ねい - grief 収録曲: 夏が泣いているから、微睡むライラなど E

    • 【ショートショート】春ギター

      楽器は奏者を映す鏡だと冬は語った。 「私もかつてはこのピアノが壊れるくらい叩くように引いたことがあった。すると決まって大寒波がくる」 信じる信じないは別として、確かに春にも身に覚えがあった。 年に一度催される秘密の演奏会。春はギター、夏はドラム、秋はベース、冬はピアノ。ボーカルはなく、セットリストもない。楽譜もない。各々が好き勝手に演奏する。それが不思議と一つの曲となる。四季を司る曲となる。聴者は日出国の者たち。彼ら彼女らに祈る者たち。 あるとき。春のギターが唸りをあ

      • 【ショートショート】おばけレインコート

        道を歩いていると稀に魂を宿した道具を目にすることがあるだろう。一つ目一本足の唐傘、大口長舌の提灯、それらは付喪神と呼ばれ、長年大切に使われてきた道具の果てである。だが、そこまで大切にされてこなかったにも拘らず、魂を宿す道具が生まれることもある。 私が先日見つけたのもそれだ。神になれず、道具として朽ちることも叶わない狭間の存在。強いて言うなら「おばけ」となったレインコートである。 仕事帰りに突如降る予報外れの驟雨にずぶ濡れになっていた私の上から覆い被さってきたのがそのおばけ

        • 【ショートショート】命乞いする蜘蛛見つめる錦鯉

          苔の浮かぶ城郭の溜池に垂れ下がる老木の枝先に巣を作った老蜘蛛は、どちみち長くない命を延命するため藻掻いていた。もう何年も前、まだ巣くった樹木が、全ての枝先までピンと伸び切って健やかであった頃にこのあたりでは最大の巣を作って、樹木中の生態系の頂点となったのも今は昔。今では弱った枝葉が池の水面に溺れ、老いて管理が行き届かなくなった巨巣は水に濡れていた。 錦鯉が苔の絨毯から顔を出し、蜘蛛の巣を見ていた。蜘蛛は何年も前からあの鯉の視線を感じ続けていたのだ。言葉は通じぬが、きっとこの

        【備忘録】Amazon Musicで聞けるボカロアルバム(20240425追記)

          句点を使わないで深夜日記(文体練習3)

          20余年の人生で数回の引っ越しをしたが、一度として生まれた県以外に住んだことはなく、一時期は一生この県から出ずにいようとさえ思ったこともある(しかしそれは私の生まれた県を大切に思うとか、いわゆる”故郷で仕事をし故郷に役立とう”といった胡散臭いキャッチコピーのような考えを持っているわけではなく、ただ外に出ることの恐怖心のためにすぎない)のだが、就職するにあたりいよいよ県外に暮らすことが決まり、それが始まる日が目の前まで来ていて、 いまが引っ越しシーズンの最繁忙期であり、卒業式

          句点を使わないで深夜日記(文体練習3)

          読書の個人的な原始体験についての思い出

          読書の原始体験は混乱であった。 それは筒井康隆の短編集『日本以外全部沈没』を読んだときである。世界のほとんどが水没し日本の一部だけが海上に顔を出している。そこに各国の代表が集まる。なにやら会議をしているが内容は忘れた。ともかくその会議は長続きしない。会議室が揺れる。部屋が傾く。日本が沈没することを示唆して物語は終わる。たしかそんな話だったと思う。 だが、私はそこで混乱したのだった。もう大昔のことだが、何とかして当時の私の思考を辿ってみよう。 私はその物語はまだ続くと思っ

          読書の個人的な原始体験についての思い出

          読点を使わないで深夜日記(文体練習)

          Twitterで『「美味しそうなアップルパイがあるね」という言葉は「美味しそうなアップルパイがある」ことを伝達する意図のみならず「そのアップルパイを食べたい/とってほしい/買ってほしい」といった意味が裏にあると考えるのが自然である』という旨のつぶやきを目撃した。仮に私が相手に「美味しそうなアップルパイがあるね」と聞かれたら間違いなく「そうですね」と答えてこの会話は終了するだろう。それであとになって「いやあのアップルパイが食べたかったんだけど」などと言われても「ならそういえや」

          読点を使わないで深夜日記(文体練習)

          おしゃべりな文体で深夜日記

          私事であるが大学院を修了した。 これで晴れて私も○×マスター(具体的な情報は伏せておく)を名乗れるのだが、私が修士に値する人間であるとは今の今まで思えず、修論発表を経てますますその思いは募るばかりで、まだあれを勉強していない、それの知識も不十分であるし、これについては検討さえしていないのではないか、どれが何でどうしてこうなった、云々と考えていけばきりがなく、2年程度で人が成長するというのも烏滸がましい思い違いで結局私は大学入学時から何も変わっていない、年だけは立派にとったの

          おしゃべりな文体で深夜日記

          【ショートショート】お返し断捨離

          ある村(仮にA村と呼ぼう)では物を捨てることを神様にお返しすると言い換える習わしがある。A村の村民は生ごみを捨てるにも、読まなくなった本も、個人情報も、全ては元々神様から頂いたものであり、所有権を手放す際は返却義務があると信じている。 ある日、村民の一人が断捨離をすると宣言した。その人は大変な蒐集家として著名だった父親の一人息子なのだがその特性は受け継がれず、むしろひどく物があることを嫌う性格だった。だから親が亡くなった時に、親に代わって(遺言状にもしっかりその旨を書かせ)

          【ショートショート】お返し断捨離

          【ショートショート】突然の猫ミーム、あるいはある患者がブログに遺したメモ書き

          (20240304更新) 3月4日(筆者により日付に横線が引かれている) 既知の情報: 一つ、このウイルスは空気感染する、一つ、このウイルスは人のあらゆる思考を「猫」に変換する、一つ、感染すると偶然の自然治癒以外に助かる道はなく、やがてあらゆる活動が「猫」に置換され死に至る、一つ、発症から死亡までの猶予は平均1か月である、一つ、このウイルスの発生源・発生時期は不明であり、(20240306更新)広い国と地域で同時多発的かつ唐突に症例が報告され始めた、一つ、このメッセージは

          【ショートショート】突然の猫ミーム、あるいはある患者がブログに遺したメモ書き

          【ショートショート】洞窟の奥はお子様ランチ

          良い人生とは即ち良い食事だ。良いものを幼い頃から食べ続た者は必ず大成するものだ。しかし、良いものとは冒険なくしては決して得られないのだ。だからおまえが生まれた日から俺はお前を連れて家を出たのだ。男なら冒険という試練を経て初めて一人前になるのだ。おい泣くんじゃない、まだ始まったばかりだぞ。 おまえも随分逞しくなった。だがまだだ。最高の食事はあの山の奥地にある洞窟に隠されている。おまえは体格も恵まれているしいい嫁さんとも結ばれた、さすが我が息子だ。しかし過信してはならん。あの洞

          【ショートショート】洞窟の奥はお子様ランチ

          【ショートショート】デジタルバレンタイン向けチョコレシピ(抄)

          まずはチョコレートを作りましょう。おいしく作れるかな、と不安に思う必要はありません。貴女に必要なのは、料理の腕ではなく、彼氏のデータシートです。 (略) さて、チョコができてからあなたが行うべきなのは、あなたのチョコレートを彼氏にも理解できるようなデータにすることです。あなたはありのままを彼氏に届けたいと思っているかもしれませんが、彼氏にはあなたの作ったものは重過ぎます。 (略) 仮に、彼氏の味覚周波数が5~50 Hzで、あなたがあなたの作ったものに限りなく近いデータ

          【ショートショート】デジタルバレンタイン向けチョコレシピ(抄)

          『失われた時を求めて』の凄い言葉リストを作る

          はじめに 誰かが私に言ったのだ。「凄い言葉リスト」を作れと。 というわけで、勝手ながら「凄い言葉リスト」を作っていくわけだが、今まで読んできた中で(量的にも、質的にも)最も凄い言葉に出会った(そして、記録する必要があると判断する)書物とは何か、となれば、それは マルセル・プルースト『失われた時を求めて』 である。 本書に関して私は以前noteを書いた↓ そこで私はいずれ「再読」すると書いた。だが、なんの手立てもなければ、またその圧倒的な情報量と文量にノックアウト

          『失われた時を求めて』の凄い言葉リストを作る

          【ショートショート】夜光おみくじ【毎週ショートショートnote】

          くじの封を切ると一粒の光が飛び出した。 「末吉かあ」 中身に詰まった光の量で運勢を占う夜光おみくじ。蛍の光を一部借りているとも噂される仄かな光の粒は、空を揺らめきながら舞い上がり、夜空の一部となった。そこかしこで封が切られ、光の粒が夜空に向かってあがり、小さな星になっていく。 毎年恒例のことだが、このくじで大吉がでることはない。神主ですら大吉がでたのを見たことがないとも囁かれ、毎年くじを買い占める不埒な輩もいるが、そういう輩のくじからは不思議と光が出ないのである。 「大吉

          【ショートショート】夜光おみくじ【毎週ショートショートnote】

          【エッセイ】背伸びした読書

          読書初心者の人に何の本を勧めるべきだろう。私の答えは『星新一』のショートショートを何でもいいから一冊買って読む(借りるではなく買うというのが個人的にはポイントだと思っている)、なのだが、そういう私はというと、読書を自分からやりたいと思い始めたとき、最初に手に取ったのはティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』(河出文庫)だったし、星新一はどちらかと言えば学校の朝読書を過ごすために読んでいた面があった。実のところ、心の奥底では(人に聞く前にまず本屋に行って何でもいいから手に

          【エッセイ】背伸びした読書

          【ショートショート】荷台に記念日を乗せて【毎週ショートショートnote】

          軽トラックの喇叭が響けば「記念日運行」の合図だ。町民たちは各々が今日が何の記念日か調べ、それにまつわる物を運んで軽トラックの荷台にどんどん積み込んでいく。 佐藤家の一枚の手紙:佐藤夫婦の結婚50周年を記念して 加藤家の一冊の本:加藤氏が初めて誕生日プレゼントを親からもらってから25周年を記念して 田島家の乳歯:田島氏の乳歯を初めて抜歯して1年経ったことを記念して 森家の弾丸:今は亡き森氏が戦場で敵兵を初めて撃ってから150年経ったことを記念して 鷹野家のギター:ライ

          【ショートショート】荷台に記念日を乗せて【毎週ショートショートnote】