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通信料金の強制デフレの先に待ち構えるトラフィックインフレというジレンマ、そして今更ながらのWi-Fiの重要性


ケータイ通信料値下げの前に考えなければ
ならないこと

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時の政権が進める携帯通信料の値下げへの各通信キャリアへ向けられたプレッシャーは熾烈と言っても過言ではないでしょう。前回のブログで書いたように、確かに我が国の携帯料金は他の先進国と比較すると高いと言えます。

昔、「パケ死」というと、写メや着うた・着メロダウンロードをやりすぎて高額な通信料が翌月課されると言うものでした。
スマホが出現し、桁違いにデータ通信量は増えました。

3Gの時代、最初は定額で使い放題というプランがありましたが、その後、4Gとなり、今は月次のデータ通信量の上限が設定されるようになりました。これを俗にデータキャップと呼ぶことがあります。

データ通信をやり過ぎて、この上限を超えてしまうと極端に通信速度が低下し、翌月までほとんど通信ができない状態になってしまいます。
最近では、このことを「ギガ死」というそうです(笑)

3Gの時代、データハングリーなスマホが急速に普及し、そして定額使い放題という料金プランのため、通信回線の逼迫が顕著となりました。平日の通勤ラッシュ時、駅周辺で3Gが繋がらなくて困ったという経験を覚えています。4Gが出現する前、各キャリアは、増え続けるトラフィックに対応するため、公衆Wi-Fi網の整備を急ぎました。
これをWi-Fiオフローディングと呼びます。

そして同時に、データキャップを設ける施策が導入されました。
データキャップとは、言ってしまえば、できる限りケータイの電波を使わせないための施策、ということに他なりません。

「ギガ死」を無くす事の副作用とは・・・?

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データキャップを撤廃する、つまり「ギガ死」する人を無くしてしまうと、何が起こるでしょうか?

人々は使い放題でケータイ通信を楽しめる訳ですから、あっという間に通信回線はパンクしてしまいます。最近ではデータキャップの量に応じて最大データ通信量を決める料金プランが一般的となりました。
それくらい、人々は大量のデータ通信を必要とする様になったと言えます。

政府が半ば強制的に進めようとしているケータイ通信料の値下げは、利用者にとっては一見すると喜ばしいことのように思えます。一方で、通信料を下げてしまうと、人々はたくさんインターネットを利用する様になりますので、通信トラフィックは増大します。
増大する通信トラフィックに対して、各キャリアが提供する通信網の容量が少なければ、ネットワークが混雑し、最悪の場合、インターネットに繋がらないことも起こります。
3Gの時代に駅でインターネットに繋がりにくくなった現象が再発するかもしれません。

5Gで「ギガ死」はなくせるか?

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5Gとなり、新しい周波数が割り当てられますので、容量は確かに拡大します。しかし、同時に5Gは通信スピードも向上しますので、データ通信量は「より増えやすく」なります。

高速な5G通信だからといって、高品質動画を楽しもうものなら、あっという間にデータキャップ上限に達してしまうのです。

5Gで100倍の通信速度を提供しようとしているのに、容量が10倍では足りないのです。容量も100倍に高めなければ、回線混雑が発生しやすくなってしまうのです。5Gであっても、通信料の強制デフレは、トラフィックのインフレを引き起こしてしまうことを覚悟して置く必要があります。

進化を止めたWi-Fiオフローディング網

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さて、3Gから4Gへの移行期にデータキャップが導入されたことによって、ケータイ回線の混雑はかなり抑制できるようになりました。逆に言えば、利用者はデータキャップを気にしながら使っているということになります。

この様な状況となりましたので、3Gの時代に各キャリアがせっせと整備したWi-Fiオフローディング網は、その後、あまり本腰を入れて強化されることは無かったようです。今となってはこれらのWi-Fi網の品質は決して良好とは言えません。

なぜ、Wi-Fiオフローディング網の通信品質は悪いのか?

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駅でWi-Fiの電波を掴んだのに通信ができない、スピードが4Gよりも遅い・・・このような経験をお持ちの方は多いと思います。
その理由はいくつか考えられます。

まず第一に、Wi-Fi電波が隅々まで行き渡っていないことが考えられます。Wi-Fi規格に許された送信パワーはケータイに比べて非常に低く設定されています。かなり余裕をもった数量のWi-Fi親機を高密度に設置しないと、電波不足となる場合があります。

次に、各Wi-Fiアクセスポイントの収容可能な端末数が少ないことが考えられます。Wi-Fi親機は、小型で低消費電力、さらにコスト制限への要求が厳しく、製品によっては接続可能な最大の端末数が少ない機器が存在します。

特に旧規格の旧い製品では顕著に接続端末数の少ない機器が存在します。駅のプラットフォームなど、多数の端末が一つのWi-Fi親機に同時に接続しようとした場合、接続可能な端末の許容数を超えてしまい、溢れた端末は接続ができない状態に陥ります。

さらに、各Wi-Fi親機と認証サーバまでの回線が混雑していたり、あるいはそもそもの帯域幅が狭いことも考えられます。この場合、認証までにかなりの時間を要することになり、ケータイ回線からWi-Fi接続が完了するまでの時間、通信が遮断された状態になってしまいます。接続が完了しても、非常に低速な通信品質を許容しなければならない場合もあります。

低品質なWi-Fi網の存在は、Wi-Fiそのもののイメージを悪くしてしまうこともあり、本当にどうにかして欲しいものです。

通信料の強制デフレは、再びWi-Fiオフローディングの需要を生む

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政府が進める通信料の強制デフレは、キャリアの収益性を確実に損なわせてしまいます。5Gが始まり、設備投資を強化しなければならないタイミングでもあり、きっと各キャリアは頭を抱えていることでしょう。
何か良い解決の糸口はないのでしょうか?

私は再びWi-Fiオフローディングが重要になるのではないかと思います。

5G時代となり、しばしばWi-Fi不要論を耳にします。しかし、世界のモバイルトラフィックの実に6割はWi-Fi経由であることをご存知ですか?

週末にネット配信映画を1本、観るとしましょう。これだけで、月間16GBのデータ量が消費されます。自宅に引いた光回線経由のWi-Fiや、フリーWi-Fiサービスの環境なら気になりませんが、データキャップのあるケータイ回線を使って視聴しようとは思いませんよね?

超高速5Gの活用法

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5GではNew Radioと称して、3~5GHz帯と26~29GHz帯の電波が新たに割り当てられました。俗に言う5Gの超高速性とは、26~29GHz帯の5Gによって提供されます。しかし、ミリ波帯と呼ばれるこれらの周波数帯は電波の直進性が顕著で、障害物の影響を受けやすく、エリア展開は容易ではありません。

そこで、米国では、5G FWA(Fixed Wireless Access)と呼ばれる、超高速5Gの電波を、光回線やADSL回線などの固定回線の代替として利用する手法が注目される様になってきました。

Wi-Fi網の構築にはインターネットと接続するためのWAN回線が必要です。これまでのWAN回線には、ADSLや光が専ら利用されてきました。このWAN回線に5Gのミリ波帯無線を利用することで、Wi-Fi網構築の煩雑さは大いに軽減できるようになります。

どこかズレてる日本のモバイル通信施策

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現在、米国や欧州では新しいWI-Fi周波数の割り当てが行われようとしています。新たに6〜7GHz帯に1.2GHzもの帯域が割り当てられます。
これによって、Wi-Fiの通信環境は格段に向上します。

5Gフィーバーは世界的なトレンドですが、他の先進諸国は、同時にWi-Fiの強化にも取り組んでいるのです。

それほどに、Wi-Fiは人々にとってかけがえのないモバイル通信の基盤だと言えます。翻って日本はどうかというと、まだWi-Fiへの新周波数の割り当て議論はほとんどなされていません。それどころか、世界ではあまり聞いたことがないケータイ通信料の値下げの議論が、政府によって主導されているような状況です。

どこか視点がずれているような気がします。

トラフィックインフレをWi-Fiオフローディングで回避、その先の競争環境の変化

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ケータイ通信料を下げるとトラフィックは増加します。

Wi-Fiオフローディング網は、増加したトラフィックの受け皿となります。Wi-Fiオフローディング網の強化のためには、欧米が先行する新たな周波数帯のWi-Fiへの解放について、わが国でも直ちに議論を開始すべきです。
5Gのミリ波帯をFWA用途に活用すれば、5Gの電波利用を促進させ、キャリアへ新たな収益源を提供します。

本格的なWi-Fiオフローディング網の整備が進めば、通信料金の値下げにともなう収益の落ち込みをカバーするに十分な新たな収益源を、各キャリアは得る事ができかもしれません。

日本のケータイ通信料が高いのは、キャリア間の競争が十分ではないことかと思います。

しかし、世の中を支えるモバイル通信はケータイだけではありません。
Wi-Fiだって皆さんにとってかけがえのない重要な通信基盤であるはずです。

Wi-Fiは周波数ライセンス不要で誰もが使えることをご存知ですか?
参入障壁は、ケータイに比べて格段に低いのです。

Wi-Fiオフローディング網に参入する事業社が増えれば、モバイル通信産業全体の競争環境へも影響を及ぼすほどの変化が必ずやもたらされるでしょう。