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ぶりっこテクノ 理想と現実

みなさんはぶりっこテクノをご存知だろうか。

ぶりっこテクノとは、内田温さんが作った曲、フラッシュ動画のジャンルだ。
それらの動画の特徴は、明るい音楽、加工された高い歌声、子供向けののような可愛らしいイラストに、グロ、臓器、闇の深い歌詞。(グロくないものもあるが)
特に「友情リリー」、「輪切りのハニー」という動画は検索してはいけない言葉に含まれている。彼女の曲はどれもなんとなく中毒性があり、考えさせられるような歌詞が書かれている。個人的には「少年めぐる」と「僕らは肉でできている」が好きだ。

今回はその中でも「僕らは肉でできている」「中村さん」「先生、質問があります」という曲について考える。

これらの曲には、ある共通点がある。
それは、他人に対する理想と現実について書かれているという点だ。異なるのは、そのギャップを主人公がどのように捉えているかだ。

「僕らは肉でできている」は、あるカップルの話であり、女の子側はメルヘンチックな理想の世界で生きている。彼女の世界では、周りのものは全て可愛らしく純粋で、クマも現実とは違いぬいぐるみのような姿。二人だけのおかしの家で、彼と純粋な愛を育んでいる。しかし彼は現実に気づいていて、メルヘンな世界の住人である彼女に呼びかける。
僕らは愛や夢ではなく肉でできていて、僕は王子様なんかじゃなくただの男で、性欲もあるんだ。本当のクマは凶暴で、肉を食べるんだ。
そして最終的に彼女は現実に気づき、受け入れる。(男性器の象徴と思われるきのこを口にする)

「中村さん」は、中村さんという女の子に恋する男の子が、彼女をストーカーしながら思いを巡らせている曲だ。この曲は他の二曲と少し違って、好きな人が生身の人間であるということを考えて喜んでいる、少し変態じみた曲だ。
中村さんは人間だから、寝るし、食べるし、排泄するし、内臓がある。自分の前ではでは見せないこともする。そんな当たり前のことを考えて彼女への想いを募らせている。この考え方は、「好きな人への理想」という概念がないと出てこないと思う。人は、理想を抱くことで、自分のイメージとかけ離れた現実との差異を感じる。この主人公はその差異を受け入れて喜んでいるわけだが、この彼も彼女に理想を持っているからこそギャップを感じられるのだろう。いわゆる「アイドルはトイレ行かない理論」とは違い、逆に「アイドルもトイレ行くんだなあ」と考えて興奮するタイプだ。

「先生、質問があります」は、「アイドルはトイレ行かない」派の曲だ。登場人物は、ハンサムで人気な理科の先生と、その助手の女の子だ。その先生は既婚者だが、助手の女の子はその先生に恋している。先生は結婚しているので、当然奥さんと性交渉する可能性がある。しかし彼女はそのことを考えると、いっそ先生が存在しなければいいのにとさえ思ってしまう。つまりこの主人公は現実よりも理想にしがみついていたい、理想が壊れるなら最初から存在しないでほしいと考えている。三つの中ではこの思考が一番厄介な気がする。そもそも現実の彼より理想を選んでしまっている点で、その人自身を好きだとはいえない。愛ではなく、恋に恋しているような状態だ。(この主人公の場合、「恋」というより「推してる」みたいな感じかもしれないが)

しかし、その考えに共感する自分もいる。特に私のような性格の人間は日頃から理想と現実のギャップに悩まされている。現実ってなんてつまらないんだろう、と。現実より理想について考えていた方が楽しいし、心がワクワクする。理想があるからこそ人々の文化が栄えてきた。二次元の世界だってそうだ。アニメの学園や美少女、魔法などはみんなの理想の産物だ。
しかし、その理想が壊れそうになった時、その落差に耐えられるかどうかが、理想主義者にとっての試練となるだろう。現実を受け入れられず、「裏切られた」と、他人のせいにしてしまう人もいる。そうなると理想を押し付けられる側も辛い。
もしかしたら作者の内田さんも理想と現実のについて考えた経験があるのかもしれない。
まとめ方がよく分からないが、とりあえず他にもぶりっこテクノの曲は面白いのでぜひ見てみてほしい。



動画リンク↓


僕らは肉でできている

中村さん

先生、質問があります

ぶりっこテクノ保管庫


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