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人工芝に生えたヨモギ
地方の山深い場所にある大きな公園。地方観光の起爆剤か、はたまたバブル期の遺物か。そこは私にとっては幼少期の思い出の場所だ。
その管理業務を始めてすぐ、ある作業を任された。古くなったテニスコートの人工芝を切断して解体する作業だ。
すぐ近くの山に野生の鹿が見られるほどに自然豊かな公園。そんな環境で20年以上経過すれば汚泥や落葉が堆積し、苔が生え始める。
もはや人工芝とは思えない、自然と一体化したようなテニスコート。ディストピア作品のアートワークのような、美しさすら感じる様相であった。
「けっこう大変な作業だけどたのむ」
上司はそう言った。その通り、思っていたより大変な仕事であった。そんな嫌な作業の中、思いがけず私は感情が揺さぶられることとなった。
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金属のフェンスはツタと木に蝕まれ、人工芝は苔の群生地となっていた。野鳥は慣れた仕草でフェンスを飛び越し、虫狩りに勤しんでいた。
当然の如く生と死が共存する野生の世界で、人間が自然に配慮すること自体おこがましいことなのかもしれない。野生はただ容赦なく、与えられた環境に適応していくだけであった、たとえ人工物であっても。
このヨモギは、ただの雑草の一種であるが...
なにやら特別な感情が芽生えた瞬間だった。
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人工芝を切り取る。裏は硬質なラバーのような素材だが、ヨモギの根が貫通していた。
作業をサボるわけにもいかないので、ひとまず水道の排水口に置いて水を与えておく。ヨモギは非常に生命力が強い植物なので大丈夫だろうと思っていたが...
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業務が終了したので様子を見に行くと、明らかに弱ってしまっていた。翌日から休日だったので、復活を祈りつつ帰宅した。
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2日後、始業時間より早めに公園に到着した私は、すぐさまヨモギの様子を確認した。
さすがの生命力でヨモギは元気を取り戻していた。休みの間、雨が降っていたのも幸運だった。
私は上司に許可をもらってヨモギを持ち帰ることにした。
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皿に置けば盆栽のようになりそうだと考え、ハサミで丸く切り取った。
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人工芝に生えたヨモギの盆栽(?)ができた。
自然の一部を、文字通りそのまま切り取って持ち帰る、面白い体験だった。
おわり
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