拝啓、冬。
今朝、六時半。
冷えた空気がキンと鼻をかすめ、冬がきた、と目を覚ました。
わたしは冬が好きだ。
ほんの少しの湿度を含んだ冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、真っ白な息をゆっくりと吐く。それだけで、自分の中身が入れ替わったような気持ちになる。
ゆっくりと朝は訪れるのに、あっという間に夜になる。空がオレンジ色から紺色に変わるのもすぐで、帰り道を急がされるような焦燥感もまたいい。
さむいさむいと言いながら甘くてあたたかいココアを飲み、柔らかな毛布に包まれてまどろむ午後は、想像するだけでぽやぽやする。
唯一、寒いとすぐに耳が痛くなってしまうので、耳あてやニット帽が必須なことが少々難点なくらい。
なんといっても冬にはクリスマスがある。
クリスマスはわたしが一年でいちばん楽しみにしている行事で、街も人もきらきらと浮かれる感じがすごく好きだ。
愉快な音楽には心が踊るし、ずっと跳ねていたいくらい。
わたしを含め多くの日本人が無宗教で、クリスマスを本当の意味で重んじている人は割合としては少ないだろうけれど、大体みんなクリスマスが好きだと思う。(知らないけど。)
特にクリスマスマーケットは最高だ。シナモンやベリーの入ったグリューワインを飲みながら眺めるイルミネーションほど、ゆらゆらと美しいものはない。ホットカルーアミルクにも手を出しながら、アイスバインやプレッツェルで小腹を満たす。
いつかドイツのクリスマスマーケットへ行くことが、ひとつの夢。
本当のことをいうと、いちばん好きな季節は春だ。
あたたかな陽射しが縮こまった身体を少しずつ解し、空気はやわらかくなる。風は穏やかにあたたかさを増し、小鳥はさえずり、花々は蕾を膨らませてゆく。
三月には誕生日もあり、クリスマスの次に好きな行事なので、それもあるけれど。
春の訪れは冬があってこその歓びだ。
というわけで、今年もよろしく、冬。
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