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めじろの水浴びのお話

ヒヨドリは、庭の風呂場に毎日何度もやってくる。水浴びにやってくるのだ。鳥類きってのキレイ好きだ。

水浴びの前は、電線や庭の木にとまって、「ヒーヒーヒー!」と鳴く。水浴び宣言だ。

宣言を終えると、風呂場に一直線に下りて水に飛び込み、バシャバシャ! と派手に水しぶきを上げたかと思うと、すぐに風呂からヒョイと出る。そして、羽をワサワサワサッとふるわせて、羽全体に水滴をいきわたらせる。あるときは、その行動を何度も何度も繰り返し、ゆうに10分ぐらい入り浸っていた。長風呂だ。

その風呂は、地面に置いている。その周りには、シャガという植物の葉っぱが茂っている。ヒヨドリがバシャバシャ!  と水しぶきを上げると、当然、その葉っぱに水滴がつく。

ある日のことである。ヒヨドリが、いつものように派手に水浴びをし始めた。と、チチチ…という控えめなさえずりが聞こえた。メジロだ。

メジロはヒヨドリが怖いはず。というのも、冬、庭に置いたミカンをメジロが食べ始めると、ヒヨドリが「お前のものはオレのもの!」といわんばかりに、シャーッと飛んできて鋭いくちばしでメジロを追っ払うという、わんぱくぶりを発揮し、メジロは「チチチ…」と言いながら命からがら逃げ出す、という光景を幾度となく目撃していたからだ。

なぜ、メジロはあえて、怖いヒヨドリの近くにやって来たのか。と、ヒヨドリが飛び去ったかと思うと、メジロはすぐさま、シャガの葉の上に乗って、パタパタと羽をふるわせた。そしてすぐに、別の葉の上にピョンと飛んで、またパタパタとした。何をしているのか。水浴びをしているのだ。

ヒヨドリが入るお風呂は、メジロにとっては深すぎて怖い。でも、葉にたまった水滴は、浅いから怖くない。だから、ちょうどいい。

ヒヨドリは相変わらず怖いけど、夏、メジロはヒヨドリのおかげで体をキレイに保ち、涼をとることができる。メジロはそれがうれしくて、気持地よくて、しばらく口を開けてパタパタとしていた。

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