マガジンのカバー画像

対話体小説集

16
地の文を使わず、全編会話文だけで構成された物語のことを、対話体小説といいます。 代表的な作品として、マヌエル・プイグの『蜘蛛女のキス』や恩田陸の『Q&A』、小林泰三の『アリス殺し…
運営しているクリエイター

2023年11月の記事一覧

警部、お願いします!(11)〜毎週ショートショートnote〜

警部、お願いします!【scene11】

(本文410文字)

「警部、お願いします!」
「ほぉ、見立て殺人か。俺も初めてだ」
「見立て殺人……ミステリに出てくる、童謡とか伝説に準えて事件が起きるという、アレですか?」
「分かってるじゃないか」
「で、何に準えているのですか?」
「殺人数え歌だ」
「ど、どういうことでしょうか?」
「一つ、死因は窒息死!」
「え?」
「分からんのか? イチゴだよ。ガ

もっとみる

警部、お願いします!(10)〜毎週ショートショートnote〜

警部、お願いします!【scene10】

(本文410文字)

「警部、お願いします!」
「死因は分かったか?」
「はい、米を喉に詰まらせ窒息死、事件性はない可能性が高いとのこと」
「いや、これは撲殺だ」
「え? な、何故…」
「見ろ、辺り一面ご飯だらけだろ?」
「自治会の祭りで配るおにぎりを、大量に作っていたそうですので」
「つまり、凶器はおにぎりだ。杖のような棒状にまとめると、そこそこの鈍器に

もっとみる

警部、お願いします!(9)〜毎週ショートショートnote〜

警部、お願いします!【scene9】

(本文410文字)

「警部、お願いします!」
「分かってることを教えてくれ」
「はい、ガイシャは佐藤太朗、二十二歳の大学生。ホシの田中次郎は、吹奏楽部の一つ後輩。二人は同じ高校出身で、高校時代も吹奏楽部で先輩後輩の間柄でした」
「なるほど、何者かによる暗殺……厄介な事件だな」
「動機は、アルハラです。ガイシャは下戸の田中に日常的に飲酒を強要し、断ると暴力を

もっとみる