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実験的なエレクトロニカ、IDM入門

ポップスやロックなどの音楽を聴いていると度々、電子音楽からの影響を感じることがよくある。RadioheadのKID AやKanye WestのYeezusがそうであったように、電子音楽を知ることはポピュラーミュージックを知る事でもあると思う。今回は電子音楽に興味を持ち始めた方向けに実験的なアルバムを紹介していこうと思う。私のお気に入りでもあるため「あの人が紹介されていないじゃないか」という意見もありそうだけど、軽い気持ちで見て頂ければ。


Aphex Twin - Richard D.James Album

イギリスのコーンウォール出身の作曲家であるAphex Twin。実験的な電子音楽を聴く人間なら誰もが通る道であろうアルバム。ドラムンベースを軸としながら電子音に留まらず、繊細なストリングスが調和する瞬間も。トラック1の「4」は初見だと面を食らうかもしれないが、慣れると意外とグルーブがあるビートで丁寧に作られている事がわかる。

おすすめトラック - 4

Autechre - Confield

イギリスのマンチェスター出身の2人組であるAutechre。ロックファンにとってはRadioheadのKID Aに影響を与えた存在として名前を聴いたことがあるという人も多いだろう。エレクトロニカやIDMを代表する音楽家であり「Confield」はエレクトロニカの歴史に革命を起こした傑作。不規則性と規則性を兼ね備えた静謐な世界に浸ろう。

おすすめトラック - VI Scose Poise

Squarepusher - Feed Me Weird Things

イギリス出身の作曲家であるSquarepusherの1stアルバム。先程紹介したAphex TwinによるレーベルであるRephlexからリリースされた本作は高速で複雑なドラムンベースのビートとジャコ・パストリアスに影響を受けた卓越したベースプレイが絡み合う。演奏技術が高い為、複雑でありながらとても気持ち良く聴ける完成度となっている。

おすすめトラック - Squarepusher Theme

Venetian Snares - Huge Chrome Cylinder Box Unfolding

カナダのウィニペグ出身であるVenetian Snares。ブレイクコアというジャンルを代表する音楽家であり革新性を持った複雑なビートは唯一無二。1番人気のアルバムは「Rossz Csillag Alatt Született」かも知れないが、本作は私のお気に入り。今作はIDM寄りの音楽性でブレイクコアにありがちなアーメンっぽいキットは使わず無機質な電子音が鳴り続ける。無闇やたらと複雑にビートを鳴らすことは誰にでも出来るが、隙間や余韻を持たせつつ高速に複雑にする事は難しい。それが実現出来ているのが本作だと私は考えている。

おすすめトラック - Vida

Richard Devine - Aleamapper

アメリカのアトランタ出身の作曲家であるRichard Devine。電子音と効果音を巧みに融合したSF映画のような音像を得意とする。メロディーは殆どなく効果音を織り交ぜた壮大な楽曲とダンサブルなビートの楽曲が交互に訪れるアルバム。ミックスが非常に優れており音の立体感は1つの音響体験といっていい。聴き終えると1本の映画を見終わったような重厚感がある作品である。

おすすめトラック - Foci Ducplication

Flying Lotus - Los Angels

アメリカ出身の作曲家であるFlying Lotus。J Dillaに影響を受けたようなHIPHOP的なビートとIDMやエレクトロニカに影響を受けたであろう電子音が時折、民族音楽やジャズからの影響も覗かせながら展開される。Flying Lotusはアルバムごとに作風が大きく異なる為、全作おすすめだが本作は最も電子音楽要素が強いアルバムとなっている。

おすすめトラック - Sleepy Dinosaur

Arca - Mutant

ベネズエラ出身の音楽家であるArcaのアルバム。壮大で美しいメロディーと地鳴りのような低音のミックスが特徴的な作品。Mutant=突然変異体というタイトルに相応しい異形の電子音がインストゥルメンタルにテーマ性を持たせる事に成功している。

おすすめトラック - Mutant

Loraine James - FOR YOU AND I

イギリスのノースロンドン出身の作曲家であるLoraine Jamesのアルバム。時折見せる高速で複雑なビートもありながら、音の隙間を生かした繊細なトラックはクールで全体の印象はIDM的で静かな仕上がりだ。

おすすめトラック - Glitch Bitch

qebrus - ⊶⊑∷⌊∴⊹∵⌉∷⊒⊷

フランス出身の作曲家であるqebrus。Richard Devineの効果音を多用したSF的な側面を更に強調して発展させたような音像。私にとって実験的な電子音楽で重要なのは音色(おんしょく)のオリジナリティや豊富さと楽曲の展開の豊富さである。その意味でqebrusは最高峰の個性を持っていると考えている。一見、好き勝手やっているように聴こえるが、反復が殆どないフレーズを考えるのはとてつもなく時間のかかる作業だと思う。またミックスも大変優れており1つの音響体験といっていいだろう。

おすすめトラック - 全曲

おすすめは以上になる。エレクトロニカやIDMは実験性が高く聴いていて飽きない作品ばかりで、普通の音楽に退屈している音楽ファンにこそ聴いて欲しいジャンルだ。記事でも述べたが個人的に電子音楽を評価する点において重要なのは音色(おんしょく)の豊富さと展開の豊富さである。歌などの制約を持たない音楽だからこそ、そこにどれだけ複雑さを持たせられるかが魅力だと思う。またここからは主観になるが私は電子音楽には歌がない方が良いと考えている。人間の体温がない無機質な電子音の世界。感情移入や慰めにする事すら許さない無情な孤高さに憧れる。皆さんもこれを機に電子音楽の荒涼とした世界へ足を踏み入れてみませんか。

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