Pray for 311

はろーぐりゅすごっと！
Pianist Daiです。

今日は前置きもなしに3月11日にアップした曲について書こうと思います。

1.迷いと共に

今年はちょうど東日本大震災から10年となる節目の年でした。
10年前ぼくはパリにいました。
ネットで地震が起きたという情報を知りました。
街で行く先々で、

日本は大丈夫なのか？津波の被害はどうだ？ご家族は無事か？

とフランスは基本的には親日家が多いので沢山の方が心配して下さいました。
すぐにチャリティーコンサートの企画がされ、ぼくもソロと室内楽とで演奏会に出演し、その後予定してた4月の自分のソロリサイタルを急遽チャリティーリサイタルに変更しました。

チャリティーイベントというのはとても繊細に取り扱わねばなりません。
というのは、中には不幸を材料として自身の活動の一環とする人が存在するのも事実ですし、また絶対にあってはならないのは、プロモーションに使ってしまうことです。
震災のチャリティーイベントのフライヤーを見て、まるで自身のコンサートの宣伝に使ったように思えた時の違和感を、自分がチャリティー活動をした時に聴きに来てくださる方々に抱いてしまわぬように当時気を使ったり、また考え方の方向性の違いからチャリティーの主催の方と決別したこともありました。
気を使っても使っても足りることはない、全ての仕事において共通していることですが、チャリティーに関してはいつも以上にそう思います。

2.選曲について

選曲もだいぶ悩みました。
東日本大震災復興支援ソングである菅野ようこさんの『花は咲く』も勿論真っ先に浮かびました。
多くの方々の拠り所となったであろうこの曲を弾くべきかなとも思ったのですが、去年演奏しているのもあったのと、じゃあ来年再来年と毎年あげていく中で、毎回同じ『花は咲く』を弾くのか、毎回アレンジをいれるのか、と考えた時に毎年違う曲がいいかなと思って違う曲にしました。
震災の曲だから花は咲くを弾こう、ではなくただ全ての過程において悩みたかった。
特にぼくは、国外に居た身なので被害を一切受けていない。
そんな中安易に曲を決め、ただ弾くのでは何も寄り添うことなどできないと思ったのと、本当に大変な想いをされた方の外で輪を作るようなことだけにはならないようにしたいと思いました。

そんな中、今回はLiberaという少年合唱団の曲を演奏させて頂きました。
Liberaとはイギリスのボーイソプラノのユニットで、祈りを捧げるような歌声と曲がとても特徴的なので、Libera以外には考えられなかった。
ただLiberaの曲は少し短いものが多いので、今回は3曲続けて演奏することにしました。

2-1.■1曲目 Far Away

1曲目はFar Awayにしました。
邦題では『彼方の光』です。
最初にまず優しく包むような曲と演奏を届けたかったのでこの曲にしました。

以下歌詞を一部引用させて頂きます。
掲載元StudioWebli様
https://studio-webli.com/article/lyrics/270.html

私が、どこへ行こうとも
遥か彼方　どんなところでも
何度でもあなたはいつも輝いて
暗い夜を抜けて　私に呼び掛けてくださる

私がどこを登ろうとも
遥かかなた　どんなところでも
あなたは私は高めてくれる　空を越えて
嵐の夜を抜けて　私を引き上げてくださる

精霊よ来たりたまえ、天の御使いを送りたまえ
精霊よ来たりたまえ、天の御使いを送りたまえ
精霊よ来たりたまえ

この曲で祈りを表現できたらなと思いながら演奏しました。

2-2.■2曲目 Ave Maria

Ave Mariaとはカトリックにおける聖母マリアへの祈祷のことを指します。
この曲は一見暗い曲ですが、人が悲しみの中にいる時は明るい曲だけではなく、こういう悲しみに寄り添うような曲も大切なのではと思い2曲目に演奏しました。
過去にはライブでヴァイオリンバージョンに編曲しお届けしたこともありますが、元は合唱の曲なので音が伸ばせる弦楽器はとてもイメージにぴったりだと思いました。

2-3.■3曲目 You were there

最後の曲はYou were thereという曲にしました。
こちらは邦題では『あなたがいるから』です。
3曲の最後の曲はこの曲が合っているのではないかなと思いこの曲をラストに持ってきました。

悲しみを乗り越えた先には未来があり、そこには光で満ちている。
震災に関わらず、生きていれば悲しいこと・辛いこと・理不尽なこと、そんなことだらけですが、人生それだけではなく、誰かに救われることもあるし、乗り越えるべき壁があって強くなれることもあります。
その希望の光を演奏に込められたらなという想いで演奏しました。
ちなみに1曲目のFar Away(彼方の光)とこの3曲目You were there(あなたがいるから)は村松崇継という日本人の作曲家の方によって作られています。
心から尊敬する、そしてとても大好きな作曲家です。
過去には村松崇継さんの思い出のマーニーも演奏させて頂きました。
そちらもYouTubeにアップしているのでよかったら聴いてみて下さい。

3.終わりに

悲しみや辛さはたった一人で乗り越えるのではなく、誰かの力によって誰かは助けられることもあるかもしれないし、もしかしたらその誰かはあなた一人一人かもしれない。
見知らぬ人は見知らぬ人にとって無関係だけれど、震災では、その見知らぬ誰かが見知らぬ誰かに祈り、想うことで繋がれる世界もあるんだなと思うことができました。
無関心は無関係から生まれるものだし、人の気持ちはその人になってみないと決して全てわかるものではないですが、想いや気持ちを傾けることが大切なのではないか、またそれを持ち続けることが大切なんだとぼくは思います。
長文書いておいて何ですが、言葉にできない、またはしきれないものが音楽の持つ力。
是非今回アップした動画聴いてみてください。
ちなみに今回の動画のサムネイルは、多くの人が祈りを捧げたであろうと思うので、光のイメージで作ってみました。

今回もお付き合い頂きありがとうございました。
次回は【最も美しいクラシック12選】よりドビュッシーのノクターンの動画についてお届けしたいと思います。

ちゅーすばっばー！
Pianist Dai