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◇018.「涙は好きな人のために取っておくもの。職場で流す涙ほど、もったいないものはないよ。」

久々の出社。そして、久々に職場で泣いた。

今の職場では初めてのことだ。


ことの発端は、社内のチーム全体でのオンラインミーティングでのこと。

先週お願いされた報告事項を共有したら、


「それなんで報告するの?要らなくね?」


と上司からバッサリと言われ、そこから2分くらいの間、お説教タイムになった。まあ、公開処刑という言葉が適切だろう。


その場で意見しても良かったのだが、周りの人たちの時間がもったいないので余計な口答えはしなかった。


上司の理不尽さに対するものなのか、公開処刑のみっともなさからなのか、目には一気に涙がたまってしまった。マスクの下で鼻水が垂れるのを感じたがティッシュはそばになく、マスクで顔半分を隠せていたのと、モニター越しだったことが唯一の救いだった。



これもHSPの特徴かもしれないが、ある程度のことまでは我慢をできても、キャパオーバーになると一気に悔し涙が出てくるということがあるらしい。この時の涙は生理現象に近い完全なる悔し涙だった。理不尽なことを言われ、しまいに公開処刑。そんなにメンタル強くないんだこっちは。



終わってからトイレで嗚咽を殺し、席へ戻って目薬をさした。




用事があり、たまたま出社していた先輩のデスクへ向かった。

(チャットで聞くよりも、わざわざ電話をかけるよりも、やっぱり楽だなオフライン。笑)


「お疲れ様です。お忙しいところすみません。先日確認した件の進捗を伺いたくて。」


そう一言声をかけると、お疲れ様〜と言いながら、先輩はこちらを見た。


「あれ?目が充血してるみたいだけど、大丈夫?何かあったの?」


"あれー?まだ目が赤いですかねー?ちょっと寝不足で。あはは!"と漫画でありそうな明るめキャラのセリフを言いかけたが、それより先に大粒の涙が今の気持ちを代弁してしまった。


止まらなかった。さっきトイレでバイバイしたはずの嗚咽も無事帰宅。


職場は学校ではあるまいし、泣くのは甘えだと思っていただけに余計に悔しかった。(個人的に生産性のない愚痴や相談は、時間外にするようにしている)


先輩はなんとなく知っていたのだろう。例の上司の話をチラッと持ち出してきた。そして、近くにあった冷蔵庫から個装のクッキーをそっと渡してくれた。


先輩は椅子の向きを私の方に変え、


「若かった頃におじさん上司に言われたんだけどね。女の涙は好きな人のために取っておきなさいって。もったいないからねって言われたことがあるのよ。あら、こら、言った先から大切な真珠を何粒落としてるの笑 仕事で悔しいことがあったからって、高価な真珠を無償で配っちゃダメダメ。職場での涙ほど、もったいないものはないよ。そう思わない?」


と、経験談を交えて冗談口調で、でも真剣な目でそう話してくれた。


ものすごく衝撃的だった。

その言葉には薄っぺらい同情のかけらもなく、一緒になって上司を愚痴るわけでもなく、かと言って涙している私を否定しているわけでもない。


そして、"女の涙は最強の武器"、みたいなニュアンスは聞いたことがあったが、"真珠"と表現されたのは初めてで、何かくすぐったいものがあった。



何度お礼を言ったか分からない。泣いたことに謝罪もした。聞きたかった例の進捗についてもちゃんと教えてくれた。



私にとって悔しい時の涙は生理現象に近いのでコントロールが難しいが、



•••これからは、大切な真珠を大切な旦那さんの前だけでたくさんこぼそう。



そう思いながら、先輩のデスクを後にした。

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