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【PFFアワード2024】セレクション・メンバーおすすめ3作品《♯12森川和歌子》

すれ違い不器用に生きる人たちへ。
当たり前だが人生は思うようにはいかない。そして映画の登場人物たちも大抵はうまくいかない人生を歩んでいる。むしろ人生の全てがうまくいっている人の物語なんて惹きつけられるものが多いとは思えない。それはフィクションだろうとドキュメンタリーだろうと同じだ。これから紹介する3作品の登場人物の人生も往々にして人生は思うようにはいっていない。しかし、それは映画としての大きな魅力である。

『わたしのゆくえ』

あなたはどこへゆくのか?

『わたしのゆくえ』というタイトルがすべてを語っているようにも思える。
探偵事務所で働く女性。そう聞くと何やら謎解きに挑む探偵の話を思い浮かべるかもしれないが、まったくそうではない。探偵事務所で淡々と日々の業務をこなす女性が主人公である。派手なことは一つもない。しかし、あることがきっかけで彼女の日々は大きく変わる。彼女はなぜ?どこへ?それが知りたくて、この映画を観ている我々は不器用な彼女の思いとすれ違いにのめり込んでいくのである。

『I AM NOT INVISIBLE』

誰が透明ではないのか?

『I AM NOT INVISIBLE』このドキュメンタリーが見つめるもの。
フィリピンのスラム街に乗り込んだ監督はそこに住む人々の姿をカメラにおさめ始める。しかし、そのカメラが本当に映し出すのはスラム街の人々ではなかった。しだいに見えてくるのは監督自身なのである。祖母との会話は愛情が強いが上にすれ違う。不器用だが素直な監督の悩み迷える姿は切実で愛着すら感じてきてしまう。

『松坂さん』

相手を知るとは?

『松坂さん』は本当にあなたが思う松坂さんではないかもしれない。
バイト先で知り合った松坂さんという女性に惹かれていく主人公の学生。二人は素直で正直ではあるが不器用がゆえに互いの会話はすれ違っていく。じれったいまでの二人の関係は、しかし、他人事ではないのかもしれない。人との距離感、コミュニケーションなどなど自分にも思い当たる何かが滲み出てくる。

そんな不器用ではあるが魅力的な人々を描いた三作品。
この映画に登場する人たちに観入ってしまう。さらにこの人たちこの先の人生までをも知りたくなるほど愛おしいのだ。

セレクション・メンバー:森川和歌子(映画人材育成事業スタッフ)

「第46回ぴあフィルムフェスティバル2024」
日程:9月7日(土)~21日(土)
会場:国立映画アーカイブ ※月曜休館

「ぴあフィルムフェスティバル in 京都2024」
日程:11月9日(土)~17日(日)
会場:京都文化博物館 ※月曜休館

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