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人を傷つけない配慮した作品は表現の自由を奪うか ~③~


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外国に外国人がいることに驚いたわたし。

事前説明は興味がそがれる、視聴者を限定するような指定を設けていたら良作品への機会が減るという人もいるんですけど。
そういう人には、無作為に与えられた情報による、無意識の影響について考えてほしいのです。


私は小さい頃「フルハウス」を観ていました。
アメリカの家族を描いたコメディです。日本でも「じぇしーおいたん」が人気です。この作品はめちゃめちゃおもしろいんですよ、今でも大好きでNETFLIXで見返したりします。ただ、主要キャラクターに有色人種が出てこないんです。もちろんこのドラマが制作された時代にもアメリカには様々な人がいるんですが。

そんな私は同じくアメリカを舞台にした海外ドラマ「アリーマイラブ」を観たとき、衝撃を受けました。リン (ルーシー・リュウ)というアジア人キャラクターがメインにいたからです。
「外国に外国人がいる!」
意味が分からない文ですが本当にこう思ったのです。
小学校高学年~中学生の私は、世界にいろんな人がいることやその歴史的背景なども学んでいて社会のテストでは正しく答えていたのに。心の中では、まったくそれを理解していなかったのです。


人は何度も、見せられたもの聞かされたものを「当たり前だ」と思ってしまいます。自分の周囲の環境や触れてきた価値観によって、事実と異なることでも「そういうもんだ」と思いやすい生き物です。

何度も殺戮シーンを見たり、レイプシーンを見たり、差別を受ける人を見ると、それが空想の世界(作品の中)とわかっていても、心のどこかで当たり前の感覚になってしまうことがあります。
社会のテストで正解を答えていても、白人ばかりの映像を何百回と見るうちに「アメリカには白い人ばかり」と思い込んでいた私のように。


空想(ドラマや小説)と現実はちがう。大人なら分別がつく。

・・・そうでしょうか?


私たちは、ドラマを見て、映画を観て、小説を読んで、影響を受けます。

影響を受けると言っても”いい大人だから”自分が空飛ぶヒーローになれないことはわかっています。
しかし、アイアンマンのように空を飛んで世界を救うことはできないと分かっていても、アイアンマンのように家族や仲間を愛する人でありたいと思うことはあるはずです。

「半沢直樹」を見て、こんな風にガツンと言ってやろう!と思ったり、
「逃げ恥」を見て、こんな恋愛がしてみたい!とあこがれたりする気持ちは、幼稚園でヒーローごっこをしていた時と大して差はありません。

空想の世界、架空の世界に、私たちの思想は良くも悪くも影響を受けるのです。

心理実験「スタンフォード監獄実験」は6日で中止された話は有名です。
この実験は本来2週間の予定で、大人たちを囚人役と警官役に分けて、監獄ごっこをさせ、与えられた役が人の行動にどう影響するかをみる実験でした。大人たちは嘘だとわかっているのにどんどん役に没していきます。囚人役は悪態をつくようになり、警官役は囚人に暴力を振るうようになるのです。暴力が度を越えたために実験は急遽中止されました。
実験という架空の世界にいることはわかっているのに、必要以上の過剰な行動に出たのです。大人であっても、十分に架空の世界に影響を受けるのです。


人を傷つけない配慮が作品を萎縮させるのか。


続き④

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