理想郷

 僕は理想郷を求めて人生という荒波を乗り越える。僕の最後はどんな最後だろうか。僕の理想はゴッドファーザーのヴィトーコルレオーネのような最後だ。孫が庭で遊んでいて、それを見ながらワインを飲んで死ぬ。そんな最後に僕はしたい。 

 別に家族が欲しいわけではない。僕は自分が人を幸せにできる人間ではないのは十分知っている。けれどもしかし、実際問題それは強がりで、理想を言うならこの人のためなら死んでもいいと思えるような妻と子供に囲まれた生活を送ってみたいと思うのは仕方のないことだ。その生活にはまだ程遠い。
 日曜の夕方、僕がキッチンに立って、妻はテーブルに座り、ハイボールを飲んでいる。妻が食べたい物があるから作ってとわがままを言う。それを僕はめんどくさいなぁっと言いながらちょっと照れくさそうに一生懸命作る。そんな50歳になれたら僕はどんなに幸せだろうか。
 こんな理想郷、僕は掴めるだろうか。

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