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髙田四原則

 体育科教育の実践家であった、高田典衛氏(1915−1993)は、楽しい体育の授業は、以下の4つの原則の上に成り立っていると主張しました。これらの原則は、「高田四原則」と呼ばれています。

1、「動く楽しさ」
2、「集う楽しさ」
3、「伸びる楽しさ」
4、「解る楽しさ」


動く楽しさ

 精一杯体を動かせる授業をすることで、子どもたちは満足します。限られた時間、環境の中で、授業をマネジメントし、体を動かす時間を出来るだけ増やすよう工夫します。
 場づくりを工夫したり、説明する時間を減らしたり、集合回数を減らすことで、運動時間を増やすことができます。
 例えば、バスケットボールなどで、体育館を半面しか使えないとします。クラス35人でゲームをする場合、ほとんどが待ち時間になってしまいます。そこで、半面をさらに半分にし、1つのゴールでミニゲームをします。1チームを5~6人で、短い時間で入れ替わりながら、ゲームをすることで、プレーに関わる機会を増やすことができます。
 ハードル走なら、1コースに5台おいて、2~3レーンつくるより、1~2台で、多くのレーンをつくった方が、たくさん跳べて、上達もします。
 このような視点がないと、1回の授業で、ボールを1度も触らなかったたり、ハードルや跳び箱を数回しか跳ばなかったということも多々あります。

集う楽しさ

 集う楽しさとは、仲間との関わりや協力がある授業です。体育では、ペアやグループをつくって活動することで、普段はあまり関わっていないクラスメートと仲良くなる機会があります。好きな人どうしで活動しても悪くはないのですが、ランダムでペアやグループをつくるシステムをつくってもよいでしょう。例えば、6グループをつくるなら、コーンを6個置いておき、バスケットボールに3回シュートが決まった人から順に並んでいきます。ドラフト形式で折返して並ぶことで、技能面の差も生まれにくくなります。
 このように、体育では、多くの仲間と関わり、協力して楽しむ時間だということを、4月の始めの授業で説明しておくとよいでしょう。

伸びる楽しさ

 授業の感想を書かせると、シュートが入るようになって嬉しかった、タイムが上がって良かった、できなかった技ができるようになって自信になった、などを多く見ます。体育の授業は、競技として行うスポーツとは、目的が異なりますが、できなかったことができるようになるという経験を少しでも味合わせることが重要です。そのため、各種目の運動技能のテクニカルポイントを知り、適格な声掛け(キューイング)をかける必要があります。筋力の発達段階によっては、すぐにはどうしてもできない技能もあるため、基礎的な体づくりの運動を意図的に準備運動などで組み込むことも工夫の1つです。

分かる楽しさ

 体育のことについて考え、課題がわかり、解決方法などがわかることをいいます。近年では、ICTが普及したため、動画を見ることで、より自分の動きを客観的に観察することができるようになっています。もちろん、自分の動画を見ただけでは、課題に気付くのは難しい場合が多いです。よって、お手本と比べて、自分の動きを比べる必要があります。その際には、お手本動画のどの部分を見るのかまで示すことが欠かせません。例えば、砲丸投げでは、首に砲丸を当てたまま投動作に入るのですが、初心者は手で投げようとするため、砲丸が首からすぐに離れてしまいます。この投げる瞬間に砲丸が正しい位置にあるのかどうかを、テクニカルポイントとしてあらかじめ示し動画を撮らせます。すると、自分の課題を認識でき、「あっわかった」という瞬間が訪れるのです。この課題を克服するためのドリルやポイントは教師から、提供していきますが、課題がわかり、方法がわかることで、より体育を知的に楽しむことに繋がります。

 体育の授業づくりをする際は、4原則を満たしているかを意識することで、各段に楽しい体育に近づくはずです。

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