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腰痛を学ぼう①個人と社会への影響

はじめに

はじめまして。理学療法士のよーへいです。日頃勉強しているテーマを少しずつアウトプットしていこうと思い、初投稿しました。今回、腰痛は個人や社会にどのような影響を及ぼしているのか説明していきます。

国民病である腰痛

腰痛は多くの人が、人生で一度は経験しているのではないかと思います。私は中学生の頃、剣道の練習の帰りに、急に鋭い痛いが腰に走りその場から動けなくなった思い出があります。立っているのが精一杯で、前進するのにスローモーションでやっとこ帰宅しました。リハビリ現場で働く今でも、疲労に伴ってジワジワ忍びってくる腰痛もあれば、巨体な患者さんの移乗動作を重度介助で実施した時に迫り来る鋭い腰痛など、今でもとてもみじかな存在です。2019年の国民生活基礎調査でも腰痛は国民が訴える自覚症状の中で上位を占めています。

Fujii(2013)らの報告では、インターネットで調査したところ、直近4週間での腰痛有病率は約30%、生涯有病率では約80%をも占めました。まさに国民病ですね。

腰痛による仕事への影響

同じくFujii(2013)の報告では、腰痛を経験した人の腰痛の程度を、仕事や学校への支障の程度によって5段階に分類しました。その結果、腰痛を経験した約4割の人が仕事や学校生活に支障をきたしていることが明らかとなりました。

詳細にみると、グレード2(支障はあるが仕事や学校などは休まなかった)が13%、グレード3(連続4日未満休んだ腰痛)が16%、グレード4(連続4日以上休んだ腰痛)が10%とのこと。

個人的に興味があるのはグレード2のタイプですね。この中には、「支障はあるけど、休むほどではない」と「支障があって本当は休みたいけど、仕事の都合上で休めなかった」が混じっているのではないかと勝手に想像してしまいます。

さて、そんな腰痛を抱えた中で仕事に集中できるのでしょうか?

表・グラフはFujii2013より筆者作成

プレゼンティーズム

みなさんはプレゼンティーズム(presenteeism )という言葉はご存じでしょうか。これは産業保健の用語であり、山下(2006)は「presenteeismとは出勤している労働者の健康問題による労働遂行能力の低下であり,主観的に測定が可能なものである.」と定義しています。

先ほどの腰痛のグレード2(支障はあるが仕事や学校などは休まなかった)はプレゼンティーズムに当てはまる状態であると考えられます。腰痛を抱えていると仕事のパフォーマンスが落ちることはみなさんも共感できることではないでしょうか。私自身、仕事中に腰痛が強いと、評価の解釈や治療プランの思考がまとまらなかったり、動作介助や触診の精度が落ちることを実感します。

さらに、プレゼンティーズムによって労働の生産性低下とともに経済的損失を調査した論文もあります。Nagata(2018)は、日本企業でプレゼンティーズムの影響を調べたところ、腰痛によって生じた労働生産性低下は、1年間で一人当たり約2万7千円であると報告しています。

まとめ

今回は、腰痛によって仕事に支障をきたしている人が少なくない、また腰痛によって労働の生産性が低下し経済的な損失をも招いていることを解説してきました。腰痛の影響力は凄まじいですね。この影響力は、医療者はもちろん、医療者ではない人も良く知っておくべきことではないかと思います。

なんたって、腰痛は国民病ですからね。
なんたって、大切な自分の体のことですからね。

次回は、そんな腰痛の原因について説明したいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

引用文献

  1. 厚生労働省.国民生活基礎調査. 

  2. Fujii,T:Prevalence of low back pain and factors associated with chronic disabling back pain in Japan :2013.

  3. 山本 未来:Presenteeismの概念分析及び本邦における活用可能性:2006.

  4. Nagata,T:Total Health-Related Costs Due to Absenteeism, Presenteeism, and Medical and Pharmaceutical Expenses in Japan

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