yokii/オレオレ物理学ノート

数学や物理の備忘録。 かつての専門は超伝導や電気化学、非鉄金属材料あたり。

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数学や物理の備忘録。 かつての専門は超伝導や電気化学、非鉄金属材料あたり。

マガジン

  • キッテル熱物理学の勉強録

    キッテル熱物理学は基本エントロピー(無次元)と基本温度(エネルギーの次元)を中心として論が展開されるのだが、通常のエントロピーと温度で書いた分かりやすいんじゃないかという試み。

  • シュレディンガー方程式のオレオレ解法

    シュレディンガー方程式の級数展開法は面倒くさすぎるのでオレオレ解法で代数的に解いていくシリーズ。

最近の記事

ギブズ因子・大分配関数・粒子数・内部エネルギー

ギブズ因子 ある系$${{\mathcal{S}}}$$があるとする。この系は非常に大きい系$${{\mathcal{R}}}$$なる系と熱平衡にあり、粒子とエネルギーの出入りが可能であるとする。この系$${{\mathcal{R}}}$$を熱だめと呼ぶことにする。 このとき、全系$${{\mathcal{R}+\mathcal{S}}}$$は共通の温度$${{T}}$$を持ち、その全エネルギー$${{E_0}}$$および全粒子数$${{N_0}}$$は保存する。系$${

    • 化学ポテンシャル

      1成分系の化学ポテンシャル 熱だめ$${{\mathcal{R}}}$$に系$${{\mathcal{S}_1}}$$および系$${{\mathcal{S}_2}}$$が接しており、それぞれの系の体積$${{V}}$$は一定とする。また、系$${{\mathcal{S}_1}}$$と系$${{\mathcal{S}_2}}$$は粒子のやりとりができるとする。このとき、平衡状態にて合成系$${{\mathcal{S}_1 + \mathcal{S}_2}}$$のヘルムホルツの

      • 理想気体の分配関数・ヘルムホルツの自由エネルギー・圧力とエントロピー

        1粒子の場合 体積$${{V=L^3}}$$の立方体の箱の中を自由に運動している$${{1}}$$粒子のエネルギー$${{\epsilon_s}}$$は量子力学によって与えられて $$ \begin{array}{rcl} \epsilon_{s} = \frac{\hbar^2}{2m}(\frac{\pi}{L})^2(n_x^2 + n_y^2 + n_z^2) \end{array} $$ である。$${{n_x, n_y, n_z}}$$は任意の正の整数である

        • ヘルムホルツの自由エネルギー

          私はキッテル熱物理学で統計力学を学んだ。この本ではエントロピー$${{S}}$$と温度$${{T}}$$ではなく、基本エントロピー$${{\sigma = \frac{1}{k_B}S}}$$と基本温度$${{\tau = k_BT}}$$を中心に論が展開されていく。 それはそれで美しいのだが、熱力学との対応を考える際には結局$${{S}}$$と$${{T}}$$に変換することになって混乱してくるので、最初から$${{S}}$$と$${{T}}$$で論を展開した場合どうなる

        ギブズ因子・大分配関数・粒子数・内部エネルギー

        マガジン

        • キッテル熱物理学の勉強録
          5本
        • シュレディンガー方程式のオレオレ解法
          5本

        記事

          ボルツマン因子・分配関数・内部エネルギー

          私はキッテル熱物理学で統計力学を学んだ。この本ではエントロピー$${{S}}$$と温度$${{T}}$$ではなく、基本エントロピー$${{\sigma = \frac{1}{k_B}S}}$$と基本温度$${{\tau = k_BT}}$$を中心に論が展開されていく。 それはそれで美しいのだが、熱力学との対応を考える際には結局$${{S}}$$と$${{T}}$$に変換することになって混乱してくるので、最初から$${{S}}$$と$${{T}}$$で論を展開した場合どうなる

          ボルツマン因子・分配関数・内部エネルギー

          統計力学温度と統計力学エントロピーの導入

          分かりやすい統計力学温度と統計力学エントロピーの導入を見かけたので備忘録的にまとめてみる。キッテル熱物理学のそれをそのままビジュアライズしたような内容。 モデル系 モデル系として$${{2}}$$準位系を考える。$${{N}}$$粒子が存在し、各々の粒子はエネルギー$${{E=0}}$$および$${{E=1}}$$の状態を取れるとする。相互作用はなく、粒子の区別が存在するとする。 状態数 系の粒子数を$${{N}}$$、エネルギーを$${{E}}$$とする。このとき、

          統計力学温度と統計力学エントロピーの導入

          無限の井戸型ポテンシャルの因数分解法による解法

          上の記事で因数分解法によるエルミート演算子の固有値問題の解法を示した。また、過去の記事で調和振動子、水素様原子の動径方向のハミルトニアン、ルジャンドルの陪微分方程式を因数分解法で解いてみた。 因数分解法が見通しのよい解法であることが分かってきたのだが、シュレディンガー方程式が容易に解ける無限の深さの井戸型ポテンシャルではどうなるか試してみる。 問題の確認 無限の井戸型ポテンシャル問題のハミルトニアン$${{H}}$$は $$ \begin{array}{rcl} H

          無限の井戸型ポテンシャルの因数分解法による解法

          ルジャンドルの陪微分方程式の因数分解法による解法

          上の記事でエルミート演算子の固有値問題の因数分解法による解法を示した。過去に調和振動子や水素様原子の動径方向の固有値問題に適用したが、今回は趣向を変えてルジャンドルの陪微分方程式に適用してみる。 問題の確認 ルジャンドルの陪微分方程式は $$ \begin{array}{l} \lbrack -(1-z^2) \frac{d^2}{dz^2} +2z \frac{d}{dz} + \frac{m^2}{1-z^2} \rbrack f(z) = a_j f(z) \en

          ルジャンドルの陪微分方程式の因数分解法による解法

          水素様原子の因数分解法による解法

          上の記事で因数分解法によるエルミート演算子の固有値問題の解法を示したので、水素様原子のハミルトニアンに適用してみる。井戸型ポテンシャルにも適用してみる予定。別の記事で調和振動子に適用済み。 問題の確認 水素様原子のハミルトニアン$${{H}}$$は、 $$ \begin{array}{l} H = \frac{1}{2m_1} \vec{p_1}^2 + \frac{1}{2m_2} \vec{p_2}^2 - \frac{Ze^2}{4 \pi \epsilon_0}

          水素様原子の因数分解法による解法

          調和振動子の因数分解法による解法

          上の記事で因数分解法によるエルミート演算子の固有値問題の解法を示したので、調和振動子のハミルトニアンに適用してみる。水素様原子や井戸型ポテンシャルにも適用してみる予定。 問題の確認と無次元化 調和振動子のハミルトニアン$${{H}}$$は $$ \begin{array}{l} H = \frac{p^2}{2m} + \frac{m \omega ^2}{2}q^2 \end{array} $$ である。ここで、座標と運動量を無次元化するために $$ \begin

          調和振動子の因数分解法による解法

          因数分解法によるエルミート演算子の固有値問題の解法

          生成消滅演算子による調和振動子の解法がなぜあれでうまくいくのか釈然としない人へ贈る。 調和振動子だけでなく、水素様原子だって井戸型ポテンシャルだって因数分解法(Factorization Method)により解けるのだ。 手続き エルミート演算子$${{A_0}}$$に対して以下の手続きを実行できたならば、$${{A_0}}$$のすべての固有値が得られる。 (1) まず、エルミート演算子$${{A_0}}$$をどうにかして以下のように変形する。 $$ \begin{a

          因数分解法によるエルミート演算子の固有値問題の解法