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ルックバックを見て後悔した話

ルックバックを観た。それについての解説は今更必要もないだろう。大人気の漫画家が描いた、人気の話。僕が観た時はそれくらいの認識でしか無くて、サブカルチャーに精通したいけすかないヤツが絶賛する漫画、ないしは映画。それくらいの創作物でしかなかった。
それで、観終わって。圧倒された、素直に。
第一に、漫画家らしくと言って良いのかは分からないけど、“漫画”や“絵”が軸になった話だった。それくらいはもうみんな知ってるのかな。わからないけど、このnoteでは主人公の藤田に視点を当てたいと思う。1番気持ちがわかって、嫉妬したのが藤田だから。それだけ。
藤田はもともと、絵を描くのが好きだったんだと思う。理由は賞賛されるから。これは不純でもなんでもなくて、こと芸術の分野において賞賛は評価だから、至極真っ当だと思う。
それで、生まれてこのかた賞賛しかされてない藤田は、京本の描く絵に初めて敗北感を覚える。世界は広いよね。多分、僕くらいの歳の人間は一度は感じたことだと思う。自分と同い年とか、それ以下の歳にだっていくらでもすごいヤツはいる。明確に世界一にならない限りそこは絶対に変えようがなくて、他人の感性に評価が左右される芸術ならなおさらで。絵のうまさ、っていうのはもしかしたらある程度までは明確にあるのかも知らないけど、絵については素人もいいところだから割愛。僕が嫉妬したのはその先だから。
藤田、筆を折らなかったんだよね。こんちくしょうって、自分より上手いやつがいるわけがないってさらに絵に真剣になった。当たり前みたいにしてたけど、これができる人は1割も居ないと思う。いや、どうなんだろ、そんな事ないのかな。少なくとも僕は諦めるタイプだから、僕よりかはすごい事だ。比べるまでもないかな。つまらない思い出話だけど、僕は中学生のときに部活でソフトテニスをやっていた。地区大会じゃ負けなしくらいには強かったんだけど、それでも県大会では上なんてごまんといた。もともと田舎の出だから、そりゃあ地区によって乖離はあるなんてことは今になってわかる。当時だって田舎の地元だから勝てただけで、もっと栄えている地区なら県大会にすら出られなかったかもしれない。それから、ペアの子が上手かった。これは当時もわかっていたはずなんだけど、上で書くようなくらいだから、本質的にはそんなことないと思ってたかったんだろうね。自分の力だって少なくともあるはずだ、なんて思っていた。それで、県大会の話。こっぴどく負けて、俺が下手だったなんて言って、心の中ではさ、そんなこと思ってないんだよ。下手なのは始めた時期が遅いからだって、そう言い訳してた。実際、小学生の時にテニスやってみない?って誘いがあったのもそれに拍車を掛けた。遅くに始めたから仕方がないって、昔からやってたやつに勝てるわけがないって、頭のどっかでそう諦めた。これが最初。これが俺のルーツ。諦めることを肯定した、負け犬の誕生。
そんなこともあって、運動は向いてないなんてスッパリ諦めて、高校ではギターを始めた。もともとピアノをやってたのもあって、音楽なら始めるハードルが低いな、なんて気持ちで始めた。
前置きが長くなったけど、話の本題はギターだ。テニスは当時こそそう思っていたけど、今はスッパリ辞めたのもあって後悔もない。でも、ギターは違う。なぜなら趣味で、今だに続けているから。
バンドにおけるギターって大まかに2種類あって、ソロとかを担当するリードギターと、コード引きで曲に厚みを持たせるバッキングギター。バッキングギターはギターボーカルが担当する事もある。そんな理由もあって、簡単なのは間違いなくバッキングギターだと思う。リードギターに比べたらってだけで、バッキングも難しい曲なんていうのはいくらでもあるけど。
僕が担当したのはギターボーカル、要するにバッキングギターだ。だからかな、技量は求められてないなんて、自分はシングルタスクだからなんて、始めたときから悪い癖が出ていた。
コード引きだって上手くないのに、ある程度形になったら曲として問題ないって、対して練習もせずになあなあでバンドを続けていた。主観抜きに、自分より下手で練習しないヤツがバンドにいたのも良くなかった。バンドの失敗はそいつのせいだって、自分の責任から目を背け続けて高校の3年間を終えた。
そしたらどうだ、大学に入ってみて生まれたのは、ギターを経験していたなんて自負だけあるほとんど初心者だ。コードが弾けるから一応初心者ではないんだけど、けれどそれだけ。3ヶ月練習したら俺より上手くなるなんて冗談で言ってたけど、それは間違いようのない事実で、事実を逃げ道として使っていたマジでダサいヤツだった。
大学ってやっぱり人の数が高校に比べて段違いで多いんだよ。つまり、ギターをやってるヤツも、ギターを始めたいヤツも多いわけで。やってるヤツは最初から俺より上手くて、始めたヤツもどんどん俺より上手くなって。当たり前だよね、真面目に練習してないんだから。俺には努力の才能が無いなんて誤魔化して、バッキングだからコードさえ弾ければ良いなんて誤魔化して、ぼんやりサークルで友達作って楽しんでた。
その頃からかな、メタルとか、V系とかさ、技量を要するジャンルが好きになったのは。いざ弾いてみようと思うとさ、全然弾けないの。速弾きなんてしたことないし、しようと思った事もないから。でも、それは今までの経験のせいだって、俺の才能なんてそんなもんだってここでも諦めた。どうにも、俺は過去の自分に責任を負わせるのが上手いらしい。高校のおれがもっと練習してればなんて後悔だけして、今の俺は力入れて練習しねーの。笑っちゃうよな、そんな後悔するくらいならしろよって。歳なんて進むだけなんだから、今をスタートとしろよって。今になってそんな事思うよ。今はダサく速弾きとか地道に練習してるけどさ、それでも思うの。高校の俺が、大学の俺がって。もういねーんだよ、その時期の俺は。別人じゃなくててめーが努力しなかった成れの果てが俺なんだよって、わかってるのに、認めたく無いんだよな。だっせえ。努力すればいくらでも可能性はあったと思う。才能を理由に諦めることになるとしたって、もう少し晴れやかだったと思う。
自分語りが長くなっちゃったな、話を戻そう。ルックバックに観た崇高さってまさにそこで。藤田は現実に打ちのめされて、それでも後悔しないの。それならって、絵の練習をするの。いくら練習しても京本の方が上手いって頭では分かってても、それでも練習。結局6年生まで、漫画を載せ続けたの。マジでカッコいいよ。同じとこに載るんだから、何も知らないヤツは比べ続けるのに。それでも愚直に、友達とかそういうもん全部切り捨ててプライドを取ったの。
あー、これだ、プライドだ。プライドってさ、俺なんかはあるだけ無駄だって思っちゃうんだよね。それに準じた努力をしないから。そういうやつが多いから。プライドばっか高くて、実力が伴わないやつってマジでダセーじゃん?そうならないようにしようって、自分に保険かけてんの。努力はしねーけど、ソイツらとは違うって、低いところで優越感に浸ってんの。変わんねーよってわかってるんだけどな。そういう俺には嘘だって蓋してさ、現実から目を背け続けてんの、
俺が感動して、憧れて、後悔したのはそういうところ。プライドを1番に出来んの。そりゃ漫画家になっても上手くやれるよ。思い描いた自分に向かって努力出来んだから。
これはさ、もうアラサーに差し掛かるおっさんのだっさい説教なんだけどさ、何かを始めるのに遅すぎることっていうのは10代のうちは絶対に無いんだよ。
こんなこと、意味わかんないくらい言われるよね、わかる。でも、そう言うやつらって大体成功してるやつだから。後悔してるだせーやつが言った方が、実感こもってる気がしない?
10代のうちはって頭につけたのはさ、歳を取るごとにどんどん狭まるって話なんだよね。確かに今からでもおれはギターが上手くなれると思う。ピアノだって始めたら可能性は残ってると思うよ。
でもさ、俺はもうV系のバンドマンにはなれないんだよね。あれって歌と技量となにより若さを売るから。24なんて実績なけりゃ見向きもされないで終わっちゃうから。いや、やってる人なんかいくらでもいるよ?恥も外聞も捨ててそれが出来るってのはカッケーよ。でも俺にはそれは出来ない。好きなものに人生ベットとか、正気の沙汰じゃ無いと思う。もっと極端な話をしたらさ、100歳のじーちゃんがギター上手くなるのって無理じゃん。それより先に死ぬから。おれが言いたいのはそういうことでさ。
だからさ、何が言いたいかって、現状で諦めちゃダメだよってことでさ。確かに自分よりできる人なんかいくらでもいるけど、歳取ったらその割合がもっと増えるから。後悔すんのは将来の自分だから。スパッと諦められるなら良いけど、そんな人こそ少数だから。生涯共にする事なら、今からでも本気で打ち込んでほしいって言う話で。諦めるのはその後でもできるよって。
終わり。

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