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おたよりコーナー #26 で読まれました。

もう五条悟じゃん、仙台でお土産。どうも、神山です。

5月が終わり6月ですね。シラスでは北海道ローカルチャンネルが生まれます。応援するぞ~。ということで、今回もおたより更新です!おたよりコーナー、日常の謎やら、日焼け止めの話やら、様々な話題が飛び交っているので是非!


おたより本文

さやわかさん、おたより海賊団のみなさん、こんばんは。神山です。札幌はいま、商業施設の閉館ラッシュにいます。四プラをはじめとし、大通側ではIKEUCHI ZONEも閉館、来年にはPivotも閉館予定。新幹線延伸のため札幌駅隣接の商業施設も閉館予定となっており、もう流行のモノを買うのは仙台あたりまでいかないと無理なのかもしれないですね。

さて、今回のおたよりは、はやみねかおるの作品について。去年は都会のトム&ソーヤが実写映画化し、今年は怪盗クイーンがアニメ映画として公開となります。2029年には引退すると宣言しており、様々な作品がだんだんと風呂敷をたたんでいる雰囲気もあります。はやみねかおる作品、児童小説ということもあり小中学生のころには読んでいたけど今は全然読んでない、とか、話題になった頃にはもう成人していて全然読んでない、などあると思います。今からでも読んでみよう、と思ってもらえたらうれしいです。

はやみねかおるは、1990年に「怪盗道化師(かいとうピエロ)」でデビューしたジュブナイル作家である。夢水清志郎シリーズ、虹北恭助シリーズといった本格ミステリーに近い作品から、怪盗クイーンシリーズ、モナミシリーズといったファンタジー要素の強い作品、SF的なギミックを備えたマチトムシリーズやディリュージョン社シリーズなど、様々なジャンルを横断しながら、ジュブナイル作品を執筆している。特徴はすべての作品が同じ世界での物語ということである。本格ミステリーも、なんでもありファンタジーも、宇宙人が遺したオーパーツも、パラレルワールドも、すべてひとつの世界の物語である。そして、この世界の人類は滅亡することが、既にはやみねによって予告されている。滅亡は「人類は、環境破壊や戦争ではなく、覚めることのない夢に入る」ことで起こると述べられている(本格ミステリ作家クラブ編『ミステリ作家の自分でガイド』2010年、原書房、p.141)。はやみねかおるの作品は、虚構がもつ魅力の危うさを描きながらも、子供がどのように成長してくのか、ということに焦点が当てられている。

これら「赤い夢」「覚めない夢」のような、夢や幻のような概念は、はやみね作品のなかで現実と対比される。キャラクターが「いま、夢を見ているのかどうか」わからなくなることも多い。たとえば、夢水シリーズの第6作目「機巧(からくり)館のかぞえ唄」は、児童小説ながら作中作と叙述トリックを駆使し、登場人物にも、読者にも目の前の物語がストーリーにおける現実の出来事なのかどうかを曖昧にする『匣の中の失楽/竹本健治』オマージュの作品である。マチトムにおける「R・RPG(リアル・ロールプレイングゲーム)」も、現実世界につくられたゲーム空間。事件・事象が最早現実と区別がつかないゲームが登場し、主人公たちが翻弄されることが多々ある。更に、R・RPGが普及した近未来を扱うディリュージョン社シリーズでは、メタブックと呼ばれる、顧客が希望する物語を現実世界で体験させるというサービスが商品として扱われている。

はやみね作品はどんなジャンルでも、ミステリーの基本構造である事件発生と解決が組み込まれており、事件発生=赤い夢に入り込む、解決=赤い夢から抜け出す、という流れにある。この赤い夢の世界を案内するキャラクターが「赤い夢の住人」である。これには名探偵・夢水清志郎や怪盗クイーン、竜王創也などが該当し、一つのシリーズに一人は存在する。事件の犯人や敵となる怪人は赤い夢に囚われてしまったキャラクターであることが多い。はやみねが述べる滅亡、覚めることのない夢に入る、ということは、全人類が赤い夢に囚われることを意味しているのかもしれない。赤い夢への入り口はどこにでも存在し、ふとした時に、その扉が開いてしまう。人里離れた山村や孤島、怪しげな館といった特殊な場所だけでなく、文化祭や修学旅行、卒業式といった、誰もが通る少し特別なイベントにも現れる。赤い夢から出てきたとき、キャラクターたちは探偵として、あるいは助手として成長し、「赤い夢の住人」へ接近する。

また、児童文学らしく、子供の成長についても多くのシリーズでテーマとして取り扱われる。作中の子供たちは、単に大人たちになるのではなく、先人たちがおこなってしまった過ちを繰り返さないよう自ら考え行動し、成長するというフォーマットに乗っている。たとえば、夢水シリーズにおける主人公岩崎亜衣とその姉妹、真衣、美衣は三つ子であり、相似であることがアイデンティティだった。しかし、シリーズが進むにつれ、性格の違いが強調されていく。最終的にはそれぞれ異なる高校に進学することになり、三人バラバラな制服を着て、肉体以外は似ていない存在同士となる。交換可能だった「岩崎三姉妹」から「岩崎亜衣・真衣・美衣」という三人の個人へと変化する。大人として自立している、あるいは何かのプロとして人生を謳歌しているキャラクターを見ながら、まだ成長過程の主人公や周辺のキャラクターは成長を重ねていくのだ。

まとめよう。はやみね作品はジュブナイルでありながら、「赤い夢」というキーワードを用い、現実と虚構の狭間の危うさを表現する。魅力的な虚構に囚われて犯人、怪人になってしまう可能性も示しつつ、基本的に「赤い夢の住人」がその魅力を引き出してくれる。また、児童文学として、キャラクターたちが読者とともに悩み、成長していく側面もある。主な読者である小中学生はまさに当事者として、どのように生きればいいのか些細でも悩みを抱えているだろう。はやみね作品では、そういった読者に近しいキャラクターが配置され、その成長が描かれる。赤い夢の世界への往復によって、キャラクターも読者も成長できるよう構成されている。

はやみねは2029年、65歳=定年となった際には引退し、拡げられた物語は完結すると2021年のインタビューで答えている(https://ddnavi.com/interview/853152/a/ ダ・ヴィンチWebインタビュー2021/9/25)。ほんとうに人類は滅亡するのか、その終幕がバッドエンドなのか、7年後には結論が出ているだろう。2020年に発刊された『令夢(れむ)の世界はスリップする 赤い夢へようこそー前奏曲ー』では、帯文に「はやみねワールドを解き明かす壮大な物語が始まる」と書かれた。ついに赤い夢それ自体がメインに据え置かれたのだ。まだ令夢シリーズはこの一冊だけであり、どのように展開していくのか、世界の終わりはここで描かれるのかまだわからない。しかし、なにはともあれ、この世界が滅びるまで、一緒に赤い夢を楽しめればと思う。

お読みいただき、ありがとうございました。怪盗クイーン映画回、楽しみです!


おすすめのコーナー

今からはやみね作品を読む人へ、おすすめ作品はこれ!

『僕と先輩のマジカル・ライフ』
真人間と霊能力者の幼馴染コンビと、あやかし研究会のあやしげな先輩が、オカルトっぽい事件を解いていくという連作短編。はやみね作品らしく殺人事件は起こらないものの、比較的ブラック展開が多かった気がします。王道の大学生青春ミステリ、なのかな?

『オリエント急行とパンドラの匣』
夢水・クイーンコラボ作品。両作品のいいとこどりをして、キッチリ1冊で名探偵も怪盗も活躍します。しかも舞台は古典名作でおなじみオリエント急行。クイーンや夢水にここから入ってOKです!

『ディリュージョン社の提供でお送りします』
ジュブナイルでもヤングアダルトでもなく、一般(主人公的には20代、かな)向け。ちょっと主人公のフィクションエンタメ会社に入社したのに小説苦手、外連味苦手のキャラクターが鼻につきますが、はやみねの「いま」の新本格ミステリ志向が正面から見られる作品です。かつてはやみね作品を読んでいたあなたにおすすめ。

夢水も怪盗クイーンもマチトムもめちゃくちゃ面白いのですが、如何せん巻数が多いので、シリーズを最初から手を付けるのはちょっと・・・となるのであれば、これら3冊がコンパクトでいいかもしれません。そうでなければ、kindleに合冊版もあるので、まるっと買ったりしてもいいですよ!


札幌中心部商業施設連続閉館事件

おたより冒頭の札幌商業施設の閉館情報をまとめると、
・大通サイド
すすきのラフィラ→2020年5月閉店
IKEUCHI GATE→2020年6月閉店
4丁目プラザ→2022年1月閉店
IKEUCHI ZONE→2022年5月閉店
Pivot→2023年5月中旬閉店予定
・札幌駅サイド
サツエキBridge(西口高架下→2022年6月閉館予定
パセオ(駅地下直結)→2022年9月閉店予定
エスタ(駅ビル直結)→2023年夏頃閉店予定
となっています(2022年6月現在情報)。

アウトレットでないファッションビルとして残るのは最早ステラプレイス(札幌駅ビル)とPARCOだけ、という状況になりますね。確かに再開発なので新規ビルも建ちますが、ホテルやマンション、オフィスとの複合施設も多くなるので、店舗数などは減るという目算でいます。アウトレットモールもインバウンド需要によって正規品に近いものを置いているし・・・。いったい中高生はどこで服を買えばよいのだ・・・?しまむら、GU、ユニクロ、イオンなのか?札幌三越90周年、丸井今井150周年をアイヌ柄ロゴで祝っている場合ではない、普通に繋がってきたカルチャーが滅びてるんだぞ・・・。という気持ちです。

ではでは。

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