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シラスについて記す、の巻

noteでいいのか考えつつ。どうも、神山です。
シラスについてまた記事を書きます。

はじめに

2022年6月現在、シラスには30超のテナントがあり、ユーザー登録者数は3万人以上という状態である。配信者は、YouTuber的な趣味的な情報の提供をしているのではなく、少額とはいえ一定の収入を得られる(少なくとも、料金を視聴者に課す)場としてプラットフォームを活用していることが殆どだろう。生配信に限らずアーカイブの時間帯にも多くの視聴者がいるということを、2022年のゲンロン総会最初のトークショーで紹介もされていた。

6/16現在、ゲンロン・シラス周辺で話題となっている、シラス呉座勇一チャンネルの開設見送りについて、ここに記す。どういった流れで、配信者の発言やコメントがあったのかもわからないが、自分のなかで整理した言葉を残しておく必要があるからだ。私のスタンスとしては、粛々とシラスはサービスを続けてほしいし、現在オープンしているテナントチャンネルもそれぞれ使用料無料の、広告収入ベースで成り立っているプラットフォームでは出来ないことをやってほしい、というところにある。開かれなかったチャンネルについても、シラスでしかやれないというのであれば、諸事整理して開かれていく方向になればいいと思う。

そのうえで今回の件、オンライン視聴が中心の一地方民の視点から言うと「オフ会やったら揉めてオンラインサービスのレベルが下がる」みたいな話に見えている(そもそもリアル飲み会での風紀とか知らんがな)。という前置きをしつつ、はじめます。

※ここまでは配信プラットフォームとしての「シラス」を記載しましたが、以後の文章では運営会社である合同会社シラスへの言及もあることから、後者については「シラス社」として記載する。

時系列

開設見送り以後の時系列としては次のようになっている。

2022/6/14 シラス社、呉座チャンネルの開設見送りについてツイート
同日深夜 辻田真佐憲番組放送(上記開設見送りについて)
2022/6/15 呉座勇一ブログ投稿(上記開設見送りについて)
同日昼間 東浩紀、辻田番組を受けてツイート
同日昼間 はてな匿名ダイアリーに簡易まとめ掲載
同日深夜 東浩紀、当日の流れを受けて番組配信

簡易まとめが拡散したのは体感としては6/16になってからだが、プラットフォーム側、配信者側、ユーザーだけではなく、シラスやゲンロンについて知らない(東だけを、呉座だけを知っている)人々が様々に言及する形となっている。

この前の時系列として、
2022/6/4 ゲンロン総会
同日未明 風紀の乱れ?(以前よりあったものの発露?)
2022/6/9  風紀問題番組(辻田チャンネル)
2022/6/10 辻田・與那覇・呉座番組(ゲンロンカフェ)
2022/6/12 春木晶子番組(東浩紀に対する批判?現在は公開停止)

というものであった。私はこれら番組が公開されているどのチャンネルにも入会しておらず、都度で購入している為、公開停止番組は見れていない。文字に落とされたものは読んだが、その表現と現場の空気感がわからないため、一旦保留とする。

個人的に見たものについてのみだが、上記の更に前の
2021/4/27 三国志回
2021/5/2 シラスと酒
2022/5/18 東浩紀自己紹介番組1(どちらかといえば、ここに至る経緯)
なども強弱はあるが同じ問題系を抱えていると感じた。遡ればいくらでも類似した匂いのある事例は列挙できるだろうが、そこに意味は見出せないのでここでは行わない。

※それぞれの番組などについて、URL等を貼ることも可能だが、特段それぞれのPVを上げたいという意図もないため、リンクなしで記載している。

言論人としての、ビジネスパートナーとしての「信頼関係」について

シラスは有料動画配信プラットフォームである。これはYoutubeなどの広告収入によってユーザーは基本的にフリーで配信できる(シラスの視聴登録者数をベースに考えるのであれば、Youtube上では収益化できていない)というのとは根本的に異なる仕組みである。Youtuberは広告掲載者という動画発信者とも、運営会社とも異なる主体がプラットフォームの運営費用を供出している。その収入構造があるからこそ、最低限のガイドライン以外動画投稿者が気にする視線はないし、Youtubeのことをビジネスパートナーとも思わなくていいだろう。
この件について、シラス社代表社員である東浩紀は次のように述べている。
7/7追記 東浩紀Twitterにて、氏が代表社員でないことが判明。同日、ウェブサイト内の代表社員表示もなくなったことから訂正する。

きわめて一般的に、批判というものはあるていど信頼関係があって初めて可能なものです。人間関係が構築される以前に他人に軽々に同調しビジネスの相手を批判する人は、内容以前に信用できない人だなと考えます。
いいかえれば、言論の自由とビジネスは異なるということです。むろん知らない相手でも批判していい。言論の自由はあるから。でもその批判相手がビジネスをする気になるかは別。この差異がわかっていない方とはシラスは取引できません。シラスは学校ではないからです。これは今後も同じです。
みなさんに言論の自由があるように、シラスには契約の自由がある。シラスがだれと契約するか、どのような契約をするかもまた自由なのです。わたしたちは好き勝手に批判するよ、でもいままでどおり取引してください、というのは一方的です。真に対等な自由な関係というのは厳しいものだと思います。

https://twitter.com/hazuma/status/1536927556825653253 から続くリプライツリー・東浩紀

言論空間は言論の自由の下にあり、批評家とコンテンツやメディア、作家という対象はフェアであるという信頼関係が前提となっている。ここにおける「信頼」は、人間関係的な意味合いではなく、本格ミステリにおける探偵と犯人の関係に近いものと想像する。哲学や理念、美学といった何かしらの形で開かれており、根幹が相互に認知している状態を指すのだろう。

一方シラスは、言論空間とは異なる規範も有している。東の言葉を借りれば、ビジネス、だ。シラスの収益構造は広告掲載者はおらず、配信者の活動によって得られた収益が配信者とシラス社に入るという仕組みである。今のところチャンネル開設の手続きとして明らかになっている流れは、シラス社のスタッフとの面談などを経た上で、チャンネルを開設する=テナントとしてプラットフォームを利用できる、ということである。このとき、テナントとシラス社の関係は、Youtubeとの関係とは異なり、シラスの理念・思想を取り入れた上でチャンネル開設・配信を行えるか、収益やユーザー拡大に与するかという価値観が駆動している。

それをわかったうえで、シラスの中で、シラス社の代表・東浩紀を相手とした批判を繰り出すのであれば、それは対等な対話として成立するようなロジックや、プロレス的なショーを展開する必要があるだろう。そういった状況下で、もちろん「あえて」「尊敬している」「言うなれば」という留保をしながらであっても、文脈を切られた表現において、シラス社が、代表者が危うい立場になってしまうような発言はするべきではない。シラスは先日ザッピング機能=短時間無料視聴機能が導入され、今後配信の全自動字幕&検索の実装も予告されている。これにより文脈から切り離されるフレーズ検索に晒される可能性に晒されることは目に見えている。

繰り返しになるが、春木番組自体を見れていない(未課金ということではなく、現在公開停止である為)ことから、内容についてどのような態度や形で東浩紀やシラス(社)、ゲンロンへ言及しているかの判断はできない。しかし、少なくとも文字面のレベルでは危うい発言だったと思料する。
→9/8 に春木晶子により一連の経緯についてnoteにて公開された。所感としては、そういった危うさは文脈上なかったものとも読み取れる。どちらが悪かという判断に基づいて判断することこそ、友敵理論に乗ることになる為、ここではどちらも一部正しいのだろうと想像するにとどめる。

企業としてのふるまい

今回の呉座チャンネル開設見送りについて、東浩紀個人の判断でないことは当初から承知していたものの、振る舞いとして結果的に社としてのプレスリリースみたいになっていないことは、結果として不十分だったと考える。即時に開設見送り以上のアナウンスできないにしても、たとえば「詳細のアナウンスはできないが、いずれ社として整理して伝えられることは伝えるので、社内社外問わず個人宛に事情を詮索しないでほしい」という内容のリリースをA4 1枚でも作ってシラス社のTwitterなりトップページに投げていれば風向きは変わったのかもしれない。呉座チャンネル開設を推していたのは代表である東浩紀であり、批判の矛先もゲンロンやシラス社でなく東だったことから、個人対個人という様相に見えていた。しかし、検討も判断も個人ではなく社内で行われており、最終的に現在の予定でテナントとして扱えない、と結論付けたのはグループ会社含め会社としての総意だろう。

結局、14日深夜の辻田番組で多くの人がなんとなくの全体感を掴んだ上で、即座に呉座氏がブログに経緯を書いたことも一因かもしれませんが、番組内外でゲンロン総会や春木番組を見ていた人からの証言が発生し、的はずれな邪推も増えてしまった。結果、東浩紀個人アカウントで追々言及しているように見えている。チャンネル開設見送り以後の引き続きの言及についても、淡々とシラスアカウント側でリリースしていれば、ジャンル:東浩紀的な消費は抑えられていたのではないかと思う。

ゲンロンにせよ、シラスにせよ、東浩紀がプレイヤーとして参加しないとユーザーや収益の増加が見込めないという状況にあるのかもしれない。半公的な立場である東浩紀の発言は社を代表するものでありながら、個人的なものにも見える。『ゲンロン戦記』や東浩紀の突発、シラス黎明期の番組などを見ていれば、そういった部分をくみ取れるかもしれない。但し、多くの人は『ゲンロン戦記』を読んでるわけでもなければ、ゲンロンとシラスと東浩紀の違いもわかっておらず、ゲンロンやシラス社が企業ではなくサークル活動のようなものと思っている可能性すらある。

東浩紀は個人でありながら、経営者として取引先などを考えつつ公共的な発言をしなければならない立場である。にもかかわらず、そういった振る舞いにパターナリズム的な部分を見出してカッコ書きにせよ文字面的に「女性差別的」というレッテル貼りの発言をしてしまうのは、言論空間としてもビジネスとしても、批判としてフェアではないと感じた。

もちろん、これはプラットフォームの管理者という、技術的に横紙破りが可能な権力を持つ立場にあるシラス社に対しても言えることである。無闇に「匂わせ」のような形で、環境的によくないことをしている配信者がいることを、チャンネル登録者ではない会員や、これから会員になってみようという人が見える場でやるべきではないだろう。シラスが構造的に「シラス社によるインフラ提供」「テナントによるコンテンツ提供」「ユーザーによる資金提供」、資金自体はシラス社やゲンロンも出しているし、都度課金や購読など様々な支払方法があるので、均等負担なわけではないが、三角を描いている以上、それぞれへの視点が欠けたプレイは迎合されないのではないだろうか。

おわりに

6/17の時点で、シラスのサービスとは関係なく、東浩紀、呉座勇一といった個人名に対する嫌悪にしか基づいていないツイートなども散見される。炎上慣れしているプレイヤーであるなら、特段気にすることはないのかもしれない。確かに、農家や漁家、個人経営の飲食店や小売店であれば、店主のことばがビジネスとしてのものと、個人としてのものを混交していても良いかもしれない。しかし、シラスは顧客が少なくともユーザー数で3万人、将来のユーザーはもっと広く多くなるだろう。

この件の当事者は前述した通り、シラス社、テナント、ユーザーまで広がるだろう。現在のユーザー数チャンネル数から2倍、3倍と増えても尚、公共的な立場=社代表と東浩紀個人が混交するようなかたちでの状況説明や、スタッフの個人アカウントからの心情吐露を使うことは企業としてのリリースとしてはリスキーでしかない。少なくとも1ユーザーとして安心できない。四角四面な文書は機械的で、ユーザーフレンドリーに思えないかもしれないが、それでも形式的に個人ではなく法人の名前でアナウンスをし、複数人の判断を総合しているものとして提示することが重要だろう。

ユーザーのひとりとして、今後5年は続いてほしいサービスとして考えるのであれば、各チャンネル(あるいはプラットフォーム)の様々な失敗や炎上に対して短期的に判断するのではなく、批判的な視点を保ちつつ、中長期的な変化のために言葉を何かしらの形で残そうと思う。おそらく、これからも同様のことは繰り返し起こる。それに対して1から反応を繰り返すのではなく、知っていることはスキップして、よりよいサービスになるよう共に育っていければよいのだから。


7/7追記

であるなら、尚更公式アカウントによるリリースを主体としたほうが良いと思いました。


7/23追記

参院選ニコニコ番組以降、東浩紀・ゲンロン・シラスについて、何も調べず脊髄反射的に叩いている発言が見える。東浩紀がTwitterを辞めた翌日のニコニコ生放送だったこともあり、時系列すらちゃんと把握していない感じになっている。東浩紀によるnoteも火に油を注ぐ、という結果になっており、もはや脊髄反射的でない文章読解とかは無理なのかもしれない。燃やしたい人は読みたいようにしか読まないのだな、という気持ち。千葉雅也サイゼリヤ炎上くらい短絡的な世界観で悲しいですね。

叩くことで快感を得ているし、より正しいことを知ることで快感を得ないようなツイート類、殆どスパムメールとかイタズラ電話みたいなものなので、反応するのも無意味だな、という気持ちです。

とりあえず皆さん熱いシャワーでも浴びて休みましょう。


春木晶子のムーセイオンが9/27をもって終了とのことです。
→9/8の春木晶子によるnoteにおける経緯では、契約満了のためではあるものの、不透明な部分も多くプラットフォーマーの倫理が問われるシーンだと個人的に思う次第。
→9/30のゲンロン友の会更新入会キャンペーンyoutubeにて、弁護士を通して回答していることが示唆された。


おめでとう、世界がアップデートされました!

ではでは。

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