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Uni-Virtual Licenseの目的とこれから

アバター文化の為の3Dモデルの利用規約のテンプレートセット「Uni-Virtual License(以下UVL)」は2020年2月28日にリリースしました。
UVLの構想自体は2019年12月頭に開始したので、検討開始からリリースまでに大体4ヶ月。この記事を書いているのが2020年4月21日なので、リリースからそろそろ2ヶ月が経とうかなという頃合いですね。
おかげさまで、正確に追い切れているわけではありませんが、100件弱程度の採用事例があるようです。ありがとうございます!

UVLが無かった頃の話

UVLについて単体で詳しく書いた記事はこれまで無かったので、ここでUVLの存在意義・ビジョンに改めて立ち返ってみたいと思います。

2017年末のねこますさんのみここ・ねこまの配布、キツネツキさんの謳歌ミコ配布、2018年春頃のあいんつさんのアークトラス発売、2018年のVケット、BOOTHの存在等をきっかけとして、アバターとしての用途を想定した3Dモデル(を配布したり販売したりする行為)が激増しました。

一方で、「アバターとしての使用が想定された3Dモデル」というモノ自体が新しすぎた為、利用規約なども整備されない期間が続き、クリエイターさんとユーザーさんの間、もしくはプラットフォームとの間で、様々な問題が起こっていました。(今でも起こり続けています)

起こっていた問題の一例
・MMDモデル等、アバターとしての利用を想定していないモデルがアバターとして使用される
・販売されているアバターを、第三者が不正に外部のアップローダーにアップロードし、クリエイターの収益を阻害する
・再配布や商用利用などといった言葉の定義がクリエイターの解釈によって多岐に渡り、利用者にとって分かりづらい
※UVLのHPより抜粋

「アバター向けモデルに使える利用規約の雛形を作ろう!」という試みは、私が観測した限り、過去何度も立ち上がり、そして立ち消えていきました。利用規約は法的文書の性質を持ち、もしも係争になった際「利用規約を作成した人の責任が問われるのでは?」という恐れから(実際にはそんなことは無いんですけれど)「誰も踏み切れなかった」というのが私が聞き及んだ範囲における認識です。

唯一の事例としては、飛駒タオルさんが作った簡易的なライセンスである「タオルライセンス」が好んで採用されていたのではないかと思います。

私もバーチャルマーケットという「アバターモデルの見本市」を主催する身ゆえ「クリエイター自身の身を守ることがうまく出来ていない利用規約が量産されていってしまう問題」については、どうしたもんかな…としばらくは静観していました。

UVLを作ろうと思ったきっかけ

一念発起のきっかけは、2019年9月に開催されたバーチャルマーケット3のアンケート結果から、来場者属性とその動向を見た時でした。

Vケットは、2までは比較的「日本勢の内輪のイベント感」が強かったのですが、Vケット3でVRChat社と正式に協力関係を結び、Worldタブに「Virtual Market3」というカテゴリを設けてもらいました。

これにより、Vケットは一気に国際的なイベントになりました。
のべ来場者およそ70万人の内、約70%が海外からのアクセスであることが分かりました。また、海外ユーザーのアンケートから、非日本語ユーザーはVケットに来てもアバターを買わない(買い方が分からない/規約が読めない)ことも分かりました。

バーチャルマーケットという機会を提供している者として、これは無視できない機会損失です。本来であれば、もっと海外の方に購入して頂けるはずの日本のクリエイターによる素晴らしい作品がたくさんある。
ただ、言葉が通じなくとも、利用規約は守って貰う必要があります。一方で利用規約を各々で英訳するのはとても大変ですから、選択方式の利用規約のジェネレーターを作成し、多言語に対応したライセンスを作ろうと思い至りました。

UVLの思想

これはもうホームページに書いてあるので、ここで長々と話すつもりはありません。UVLのホームページを読んで下さい。

私が、アバター利用とバーチャル空間での生活を想定したライセンスにおいて必要だと思ったのは、主に下記のような点です。

①アバターとしての利用が前提であること
②(個人的な用途で)改変やパーツの一部を使うことを許可すること
③規約の条文の一部を選択式にし、組み合わせることができること
④多言語対応していること

私は、アバター文化とは「個性を表現する目的において他者の著作物の二次創作を許容するアカウント文化」だと考えています。ゆえに、このライセンスは①と②を少なくとも満たす必要があると考えました。
よって、①はUVL基礎条項のAU(AvatarUse)、②はDU(Derivative Use)としてUVLに最初から組み込まれています。

③については、クリエイターさんもユーザーさんも「規約作成における素人である」ことを前提としています。素人でもちゃんとした規約が作れる。販売者側にとっても、購入者側にとっても、規約が分かりにくい。そういう状態を打破することを目指しました。要は「書かなくても良い」状態を作りたいので、選択式にすべきだと考えました。

④は、先に述べたように、今後よりグローバル化していくアバター文化の中で、海外の方にも理解できる形の規約が提示・作成されるべきだと考えました。今後、UVL自体を磨いていきながら、英語以外への言語への対応も視野に入れています。

私が理想とする未来は、UVLが採用された作品にUVLのアイコンが付与されていて、利用者がアイコンを見た時に「あぁこの商品はUVLなのか。アイコンはこれとこれだから…なるほど、クリエイターさんの意思が分かった。こういう使い方を許諾しているんだな」と、UVLという共通言語を通じてクリエイターとユーザーの間でスムーズな意思疎通が行われる状態です。

UVLのこれから

UVLは完璧な規約ではありません
(そもそも完璧な規約などというものは存在しません)
今後、UVLは継続的に改善を加え、世界中のクリエイターとユーザーにとってより読みやすく・使いやすい・安心して採用できる規約テンプレートを目指していきます。

ホームページもまだ最低限のジェネレーターとFAQしか揃っていないので、
・クリエイターさんが実際にどういう組み合わせを選ぶと良いのか
・ユーザーさんがUVL採用作品の購入を検討した時に具体的にどういう用途で使えるのか
といった「分かりやすさの追求」も着手したいと思っています。

よりオープンに意見を集めてUVLの改善に繋げる為に、Gitサービスなどを使うことも検討しています。

CreativeCommonsも、AssetStoreEULAも、幾度とないバージョンアップを重ね、現在の地位を確立しています。
UVLも同じ道を歩んでいくことになります。
何年かかるでしょう。
1年で使い物になるかな。
世界に広めるには10年はかかるかな。
しかし、バーチャル空間の広まり、アバター文化の隆盛を信じているからこそ、私はUVLの改善の手を止めるつもりはありません

UVLを作成するにあたり、私が中心となり、アドバイザーとして多数のアバター販売実績があるクリエイターさん(それだけ多くのトラブルを経験している)、私の所属するHIKKYがお世話になっている弁護士事務所、法的文書の翻訳に長けた翻訳会社と、膝を突き合わせて作ったものが、言うなれば

現在のUVL「Version1.0」です。

大切なことなのでもう一度。

UVLは、今後も継続的に改善をし続けていきます。

これまでに頂いたご意見、アドバイス、レビュー、提示された対案、或いは批判。あらゆるものに目を通しています。批判を見ると思わず反論してしまいたくなるのは人の性ですが、そこはぐっと飲み込んで糧として、より良いものを磨き続けていくのみです。

さいごに

UVLの制作に関わって下さった皆様、
迷う私の背中を押してくれたVケットのスタッフの皆、
UVLを採用してくださったクリエイター様、
UVLについて様々な意見を発信して下さる全ての方々、
本当にありがとうございます。

アバター文化の隆盛と、バーチャル空間における生活の未来の発展を願ってやみません。どうぞこれからも、ご支援、ご応援、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。

Uni-Virtual License検討チーム
発起人 動く城のフィオ

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