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#23 進む日本印度化計画。東京に現れたインド料理の新店3つ。


日本をインドにしてしまえ。

と、口で言うのは簡単ですが実際、どうやって日本をインドにするんでしょうか。かねてより、その具体的な実行計画を聞きたいと思っていました。しかし、もはや計画を実行に移すまでもなく、日本は、少なくとも東京は少しずつ印度化されているのではないか。私は、そう思います。

O氏の歌詞では、漠然とした「インド=カレー=辛い」というイメージが先行して語られておりますが、インドにはカレーという料理はないし、インド料理全部がめちゃくちゃ辛いわけでもないというのは、情報の氾濫する昨今、明らかになりつつあります。

また、何かと神秘的なイメージのつきまとうインドですが、ヨガのポーズを組んで火を噴いたり手足を伸ばしたりするようなスーパーインド人はいないということが、これもまたインターネッツの普及によりわかってしまったように思えました。

しかし、今年の統一地方選では江戸川区でインド出身のよぎさんが当選するという快挙もありました(帰化されているので日本人だが)。超優秀なインド人は世界で大活躍しており、大企業のインド人社長率が高まっているなど、やはりスーパーインド人はいるのです。


日本印度化計画というよりは、もはや世界はインド人に支配されつつあると言っても過言ではなく、その流れの中で日本も例外ではなく印度化されつつある、というのが正しいでしょうか。その流れの中で、同郷のインド人や食志向が印度化されてしまった日本人をターゲットにしたお店が少しずつ増えています。いわば、「インド人の、インド人による、インド人のための」レストラン。

ということで東京にも最近、かなり尖ったインド料理店がオープンしているようなので、行ってみました。


▼お店紹介などは「カレーを食べる」マガジンにまとめています。



Priya Mahal Tokyo

笹塚にあるこのお店は、マハラシュトラ料理専門店だ。マハラシュトラ州はインドの西側に属する、大都会ムンバイを州都とする州である。ムンバイの近くには古都プネーなどもあり、個人的にはかなり思い入れの深い州である。


今まで「西インド料理専門」を謳っているようなお店はなかなかなく、上述したよぎさんのレカくらいだった。なんか、全然馴染みのない料理や食材に触れた時って、異常に興奮してしまう。

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たまたまマハラシュトラ出身のインド人の友達が二人ほどいて、今回は料理の解説もしてもらいながら食べることができた。メニューを見るとインドのスナック屋台などでよく見かけるPav Bhaji (パンとおかず)やらMisal Pavなどが並んでいて、興奮する。


昔プネーに住んでいたときは家庭料理を中心に色々食べさせてもらっていたが、料理の名前すらよくわからなかった。何でもそうだけど、名前をつけ対象を分節化し、解説を聞きながら体験することで初めて自分の中にその領域ができて、それを対象として捉えられるようになり、ようやく比較や検討ができるようになる。つまり、カレーが概念になる。


興奮しきったところで、マハラシュートラ・スペシャルからいくつか注文。

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まず、Chicken Maratha。これが、いわゆるマハラシュートラのチキンカレーらしい。味は、とてもスパイシーと言うわけではなくほどよい辛味にほぐれたチキンがおいしい。均整のとれた味と言うべきか。
実は日本で働いているネパール人シェフなどは一定期間ムンバイなどの大都会のレストランで働くのが定石となっており、そういう人にとっての「インドのカレー」というのはこのカレーになっていることが多いらしい。だかた、なんとなく食べたことのある、馴染みのある味。

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それからKanda Batata Rassa。Kandaは神田ではなく、玉ねぎのこと、Batataはじゃがいものことだ。具として玉ねぎとじゃがいもが入った、スープ状のカレー。焦がしたクミンが香りのブーストに一役買っている。

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そして大ブームのタピオカ(サブダナ)のキチュリ。今回食べた中では一番辛かったが、辛味は青唐辛子のみ。ピーナッツやじゃがいも、コリアンダーリーフなどが入っていて食べ応えあり。女子高生たちはきっと飛びつかないだろうけど。

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ピックルも充実している。唐辛子をマスタードに漬けたChilli Pickleはどこか懐かしい味で、ご飯のお供に最適。Lemon Pickleもあまり激しすぎない味でおいしかった。

西インド料理はパンチが弱いような気もするけど、じんわりと美味しい料理が結構あるので、新体験をしたい方にはもってこいです。



BANGERA'S KITCHEN JIMBOCHO

ノリに乗っているバンゲラさんのレストラン、瞬く間に3店舗目を神保町にオープン。マンガロール料理に加えてゴア料理やムンバイ料理なども提供しており、初めて名前を聴くような珍しい料理がたくさんあって、その筋の人にとってはもはやディズニーランドです。

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ムンバイ定番のひよこ豆とメティリーフのカレー、Methi Pithla。どろどろのひよこ豆が溶け込んでいて、もはやこれはシチュー。さらに生メティとディルの香りがアクセントとなっていて、クノールカップスープとして家に常備したいと思った。



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今回はフィッシュを攻めようと心に固く誓っていたので、西海岸地域マルヴァニのフィッシュカレー、Malvani Macchi Kadhiを。上に乗っかっているのは、最初きゅうりかと思ったのですが、生マンゴーらしい。タマリンドの効いたグレイビーに白身魚が妙にマッチしていた。かなり止まらなくなる味で、もちもちのルマリロティと相性がよい。



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チキンバンブービリヤニ。実際に竹でダムっているらしい。最初から最後までではないと思うが。銀座本店にもあるが、パフォーマンスも含めて見かけると頼んでしまう。もちろん単体でもいいのだが、そのほかのカレーと合わせて食べてもかなりイケる。

やはりビリヤニは合法の危ない何か。


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そして完全に語感だけで決めたPulimunchi(プリムンチ)。イワシかタコを選ぶことができる、タコをチョイス。

タコのカレーとは珍しい。。マラヴァニマッチカディーよりもかなり辛くスパイシーに仕立てあげられており、汗をかきながら食べた。タコを使ったカレーをインド料理店で初めて食べたのだが、グレイビーと完全に調和している。さすが海の街マンガロール、魚介類はなんでも食べるのだな。。


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これはニールドーサ。人生で食べるのはまだ3回目だが、これは結構イドゥリっぽさを感じた。あまり癖がないので、海鮮系のカレーとマッチするように思う。

まだまだ気になる料理があるバンゲラズキッチン。神保町はアクセスもいいし、かなり期待大なお店です。




TOKYO MITHAI WALA

最後にインド料理店というか、西葛西にできたインドのお菓子屋さん。

インドの街中でよく見かけるMITHAI(あまいやつ)のショーケース。これを日本で見ることになるなんて。インド人は甘いもの大好きで、カルダモンとギーの香りがする激甘の砂糖の塊をみんな喜んで家族ぐるみで食べている。

お店の営業時間は16~21時なのですが、リトルインディア西葛西ということもあり、インド人のお持ち帰りのお客さんがひっきりなしに来店されている感じ。大人気。

母体は六本木や二子玉川などにお店を持つモティらしい。

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店内にイートイン用の席が8席ほど、外のテラス席が数席あり、メニューは全てお持ち帰り可能。甘いもの以外にサモサやダヒプリ、ベルプリなどのチャート、パオバジやドーサなどのティファン類も充実しているので、甘いものが苦手な人でも楽しめる。



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この懐かしきショールーム。グラブジャムンやジャレビー、ラスマライやバルフィなどたくさんのあまーいお菓子が並ぶ光景は、子供だけでなく大人たちも魅了されるようだ。

注意点としては、下の方のグラブジャムンなどは250円から1つ単位で買えるのだが、上の方のバルフィやカラカンド、ラッドゥなどは250g単位での量り売りになってしまうため、それ相応の覚悟を持って望まないといけない。数人で大量に買って、シェアパーティーをするのも楽しそう。

インドで食べるのに比べると確かに値段は高い。でもこういう生菓子はなかなか日本では食べられないため、好きな人は飛びつくのだろう。


自分はインドの甘すぎるお菓子はそんなに好きではないので今回はナムキーン(しょっぱいやつ)に逃げ、ベルプリとチャイをイートインし、サモサをお持ち帰りすることにした。

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ベルプリはインドのストリートとか、バスに乗っている時に売り込まれたりするスナックで、ポン菓子的なものに玉ねぎやじゃがいも、コリアンダーリーフなどを混ぜ、タマリンドソースで甘酸っぱしょっぱく味付けした軽食だ。ピリ辛でスパイス感もあり、軽食としてはもってこい。

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おなじみサモサは一つ200円。アルマサラにレーズンが入れてあり、冷めてもサクサク食べられるレベルの高いサモサだった。クミンシードやコリアンダーシードなどのホールスパイスも目立ち、何よりグリーンチャトニが美味しい。そんなサモサ体験だった。

てかチャトニってうまいよね。チャトニだけをいろいろ集めて米と一緒に食べたい。



終わりに

日本印度化計画は、ご覧のように着々と進んでいるようだ。そしてさらには、我々人類は一つのカレーという統一に向かっているのかもしれない。
上記3店は、人によっては今までにないような新体験をもたらすかもしれない。マンネリ化した日常を打破するために、是非一度トライしてください。



全然更新してませんが、ブログもやっています。パキスタンのこと、そろそろ書かなきゃ。





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