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2024年1月受験から見た、2月受験に出そうな問題(公民編)

はじめに

1月受験を行なう中学の受験問題を、おおむね解いてみました。そこから、「2月受験に出そうな問題」がだいたい見えてきました。本稿では、公民編をお送りします。
もう時間がないので、簡略版でお送りします。全て無料で読むことができます(投げ銭をいただけると助かります!)
ちなみに上の写真、日本の三権と関係ない写真が1枚混じっています。さてそれはどれで、なんという施設でしょうか?

1 やっぱり基本

1月受験を見てきた限りですが、やはり基本的な知識を確実に答えさせる問題が多かったように思います。図は栄東東大特待1の問題です。

栄東東大特待1大問3問1,問2

確かに東大特待だけあって、多少選びづらいですが、よく読めば確実に答えを見つけることができます。
よく出題されたのは、「三権それぞれの仕事、三権どうしの関係」と、「選挙制度と数字(被選挙権、任期、定数など)」でした。こうした知識はもうじゅうぶん身につけていると思います。落ち着いて問題を読めば、確実に得点できると思います。

2 日本の政治の中心

1月受験で目立ったのは、日本の政治の中心地について答えさせる問題でした。例えば下は、埼玉栄1医難進の問題です。

埼玉栄1医難進大問3問3

「優越」というキーワードがあるので、衆議院だということはすぐ分かります。ですが衆議院は、議事堂を正面から見たとき、右側でしょうか、左側でしょうか?
国会に見学に行ったことがある人なら分かるでしょうが、行ったことがなければ答えられないですよね。
また渋幕の大問1のリード文では、官庁街である霞が関から首相官邸まで歩いて見学したことが書かれています。

以上、渋谷学園幕張1大問1リード文

よく読むと、都心の地理を知らなくても、文章をよく読めば答えられるようになっています。ですがこれをきっかけに、都心のどのあたりに官庁があり、どのあたりに三権を代表する建物があるか、知っておくとよいのではないでしょうか。
実は、国会議事堂近辺の地理については、参議院のページにわかりやすい地図があります。この地図を見れば、三権を代表する施設が、北から最高裁、国会議事堂、首相官邸の順に並んでいることが分かります。外務省、財務省などの官庁は、国会議事堂の東~南東側にあることが分かります。そして自民党本部は、ふたつある永田町駅改札の間にあります(青いマーカー)。自民党のことを一般的に「永田町」といいますが、まさに永田町にあることが分かります。ちなみに緑マーカーで示した国会前庭北地区には、日本の高さの基準である「日本水準原点」があります。ブラタモリで紹介されていましたね。

出典:参議院Webページ(https://www.sangiin.go.jp/japanese/taiken/shuhen/shuhen.html)


上記画像を回転して、上が北になるようにしたものです。

ついでに、衆議院と参議院の違いも押さえておきましょう。まず衆議院の方が椅子が多いです。次に参議院は、議長席の後ろに白いカーテンがあります。その後ろには国会の開会式などで、天皇が座る椅子があるのです(参議院はもと貴族院だったため)。今でも国会の開会宣言は、参議院で行なわれます。

3 基本的人権

1月受験では、「基本的人権」、特に「平等権」を問う問題がよく出題されました。例えば下は市川の問題です。

市川1大問4問1

男性議員も女性議員も持っている権限は同じなのだから、女性が不利になることはない、と考える人もいるでしょう。ですが現実は、男性と女性を比べた時、男性の平均賃金を100としたとき、女性の賃金は75でしかありません(2021年)。男性と女性は全然平等ではないのです。それは女性議員が少ないために、「女性のための政策」「女性を不利な状況から高める政策」が作られてこなかったことを示します。
また大宮開成特待選抜では、LGBTQ理解増進法に関する問題が出ました。

以上、大宮開成特待選抜大問3問3

Xはウの「不当な差別はあってはならない」です。「修正点の問題点」に示されているように、この文言では「正当な差別なら、LGBTQの人々を差別してもよい」と読むことも可能になっています。性的マイノリティもそうでない人も、平等に「差別されない」(憲法第14条)とされています。ですがこの修正からは、多数派による「少数派は多数派に従わないある種の異常者なのだから、少数派が実権を握らないように、少数派を差別してもいいよね」という意図が見え隠れします。マイノリティの人権よりも、多数派の安心感の方が優先されているのです。
この法律がなかったときに比べれば、マイノリティの人権は一歩前進したかもしれません。ですが最後に修正が入ったことで、法律を作った人々の間に、基本的人権に対する理解がないことが明らかになったのです。「ない方がマシだ」という当事者がいるのも、分かる話です。
確かに「基本的人権」、特に「平等権」は目に見えませんし、世の中でも全然守られていません。ですがだからこそ、「平等であることってなんだろう」と考えることが必要なのだと思います。

出典:https://www.lrhsd.org/Page/10878

左の「EQUALITY」では、3人に「平等」に、踏み台が用意されています。これは確かに「平等」ではありますが、背の低い人、車椅子の人は、サッカーを見ることは難しいです。一方、右の「EQUITY」は、3人に与えられている踏み台は「不平等」ですが、3人とも「平等」にサッカーを楽しむことができます。どちらが本当に「平等」といえるでしょうか。日本では、左であれば「平等」と考える人も多いです。ですが本当の「平等」は、右側なのではないでしょうか。
「EQUITY」は「公正」と訳します。平等権は単に「平等」であるだけでは不十分で、「公正」であることも必要なのです。「公正」であるかを基準にして、問題を考えていくとよいと思います。

4 おわりに

公民分野は本当に「基本」が大切です。ですので落ち着いて、よく読み、これまで学んできたことをきちんと思い出せば、おおむね問題ないと思います。
あと重要なのは「基本的人権」です。「基本的人権」の種類を、ひと通り再確認しておきましょう。そして基本的人権とは、誰もが生まれながらに平等に持つものだけでなく、「公正」を実現することが重要であると覚えておきましょう。
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