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2022年中学受験・見るべきテレビ番組(Eテレ以外編)

はじめに

2021年受験も終わり、2022年受験に向けての学びが始まりました。
すでに中受を経験した家庭では、どのように行動すればよいか、分かっているかと思いますが、中受が初めてという家庭では、迷うこと、知りたいことが多いと思います。そこで社会科の視点から、やっておくべきことを書いていきたいと思います。まずは「見るべきテレビ番組」(Eテレ以外)です。
(更新履歴 2021年2月24日「これから始まる番組」を追加しました)

1 大河ドラマ

受験生が見るべきテレビ番組といえば、なんといっても大河ドラマです(NHK、日曜20時~20時45分)。大河ドラマに関係する事柄は、毎年どこかの学校で出題されます。
2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」は、とりたてて多く出題された、という印象はありませんでした。明智光秀も織田信長も本能寺の変も「普通に出題される範囲」なので、出たとしても目立たないのです。一方、話題になった作品や、面白かった作品は、通常の学びの範囲を超えて出題されることがあります。

印象的だったのが2017年受験です。2016年の大河ドラマは、三谷幸喜が脚本を書いた「真田丸」でした。真田信繁を演じた堺雅人の熱演(怪演?)が光りましたが、このドラマは脇を固めるキャラクターも強烈な個性を放っていましたね。草刈正雄が演じた真田昌幸、山本耕史が演じた石田三成(2016年3月に公開された、滋賀県による石田三成プロジェクトも話題になりました…CMは必見)、内野聖陽が演じた、ラスボス徳川家康……どのキャラも魅力的だったんですよ。
「真田丸」は高視聴率を博し、「大河の復権」と評されました。そして受験でも、あちこちの学校で出題されました。作中で争奪の地となった沼田がよく出ました(河岸段丘や利根川も)。中にはノーヒントで「上田城」を答えさせるという学校もありました。それは見てないと分かりませんって!
このように、面白かった、評判が良かった大河ドラマは、よく出題されるのです。

そして今年の大河は、渋沢栄一を描いた「青天を衝け」です。渋沢栄一は普段の大河ドラマより、いっそう出題されやすいと思われるのです。
①渋沢は、日本の資本主義の父と呼ばれています。最近の受験では経済の問題がよく出題されるようになっているため、2024年発行予定の新一万円札と合わせて、経済と関連付けて出ることが予想されるのです。
②渋沢は、教育にも関わっています。現在の一橋大学、東京経済大学、同志社大学の設立に関わっています。また渋沢は女子教育の重要性を認識しており、東京女学館、日本女子大学の設立を支援し、いずれも自ら校長に就任しています。女子校で出題される可能性が高いといえるでしょう。
③渋沢は、社会福祉活動や医療にも関わっています。済生会(渋幕で出ましたね)や、聖路加病院の設立に関わっています。
④なにより、織田信長や明智光秀と違い、「普段の学びでは出てこない」ことが重要です。渋沢栄一が活動した「結果」は学びますが、「渋沢栄一」本人は、学習指導要領には載っていないのです。つまり普段の学びに追加する形で、学んでいく必要があるのです。大河ドラマの開始に合わせて、渋沢栄一に関する多くの本が出ており、それで学ぶことはできます。ですが大河ドラマを見るのが、もっとも手っ取り早いでしょう。
2021年受験では、「大河ドラマ自体を問題にする」ことも行われました。画像は大宮開成1回目の大門2です。

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表にある情報をよく見れば解ける問題ですが、大河ドラマを見ておいたほうが良いことはいうまでもありません。
そしてなにより、大河ドラマを見ることによって、歴史に親しむことができますし、物語の楽しさを知ることができます。人生の豊かさが違ってくるでしょう。ただし「史実をもとにしたフィクション」(=史実通りであるとは限らない)ことは踏まえておく必要があると思いますが。
とまあ、大河ドラマはとにかく「必ず見るべき」です。できれば4年生のうちから、大河ドラマを見る習慣をつけたいところです。見る習慣のない方は、まずはガイドブックから入ってみると良いのではないでしょうか。

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渋沢栄一についてはこの本が小学生向けにオススメです。小学生は必読ですよ!

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2 ブラタモリ

受験生が見ておきたい番組の筆頭は、間違いなくブラタモリです。
ブラタモリは、タモリと、アシスタントの女性アナウンサーが各地を訪れ、その土地の魅力を伝える番組です。説明するのはそれぞれの土地の専門家(大学の先生や博物館の学芸員など)。専門家ですから、情報は信用してよいでしょう。旅行番組の一種ですね。

ブラタモリの特徴、利点は次のとおりです。 
①地質と地形に必ず言及する
他の旅行番組とブラタモリが決定的に違う点は、ブラタモリは地質と地形に必ず言及するところです。その地域の成長には、地形が密接に関わっています。ブラタモリでは、地形がどのような作用で作られていったか(浸食、堆積、山体崩壊→三角州、扇状地、三日月湖など)が説明されます。そしてその地形が、どのような地質の活動によって作られたかも説明されるのです(火山、隆起、沈降、断層など)。その土地が成長していった理由をわかりやすくつかむことができますし、理科の地学分野の学びにもなります。これはひとえに、タモリが地質や地形に非常に詳しいからこそできることでしょう。
②歴史と地形を結びつける
その地域の成長は、歴史的な状況の変化とも関わってきます。戦国時代になれば他の大名との争いが起こるでしょうし、江戸時代になると全国的な流通網ができます。当然地域の様子や産業も変わります。ブラタモリはそうした歴史の変化も、きちんと説明します。歴史の視点が、バッチリ入っているのです。そして時には戦後の政治の変化も入ります。
③現在の視点で、楽しめること・興味深いことを紹介する
こうした地質・地形の視点と、歴史の視点を踏まえたうえで、ブラタモリは現在の街の様子を紹介していきます。地質、歴史、政治の視点が入っているため、その土地の名物や特徴を、より深く理解できるのです。ブラタモリは勉強になるだけでなく、そこに行ってみたくなりますし、もっとその土地のことを知りたくなるのです。

このように、ブラタモリが示している事柄は、社会における地理、歴史、政治の三分野にまたがっています。加えて理科や国語との関連もあります。地域の変化を、複合的な視点から見ることができ、映像の力で深く納得できるようになっているのです。
これは、社会の先生が考える「理想的な学び」に、かなり近いといえます。社会の受験問題では、特定の題材を提示して、そこから地理、歴史、政治の出題をすることが多いのですが、ブラタモリの番組構成は、これに近くなっています。先生側からみると、とても出題しやすいのです。ですので、これまで何回か、上位校を中心に「ブラタモリまんま問題」が出題されてきました。
2021年受験では、あからさまなブラタモリネタは今のところ見つけていませんが、今後も、ブラタモリのまんま問題が出ると思われますし、影響を受けた問題が出ると思われます。4年生から見ておくことを強くオススメしますし、6年生も見るべきです。2020年1月にブラタモリは浜名湖を取りあげましたが、2月1日の麻布で出た、という例がありますから。
本に関しては、ブラタモリの単行本が出ています。ただこれは、映像の魅力が大幅に薄くなっています。NHKオンデマンドなどで、映像を見たいところです。考え方が近い本は、タモリさんの番組にもよく登場する、皆川典久さんの『増補改訂 凸凹を楽しむ 東京スリバチ地形散歩』が良いかと思います。高低差を意識すると、身近な町歩きが楽しくなる本です。

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3 戦国炒飯TV、戦国鍋TV

中学受験生が見るべき番組として強力にオススメしたいのが……ズバリ戦国炒飯TVです!

戦国炒飯TVは、「戦国時代の様々な史実を、なんとなく学べる映像でお送りします」と銘打っています。まずは1話を配信で見てみるとよいでしょう。

最初に出てくるのがうつけ坂49。森蘭丸をセンターにした男性アイドルグループです。歌は「黒い小姓」。センターを務める蘭丸が、いかに信長様を思っているか、信長様に気に入られているかを歌っています。それを某坂系アイドルグループみたいな感じで歌って踊るのです! なんですかそりゃ!
話が進むと、蘭丸と他のメンバーには亀裂があることが分かります(蘭丸だけ信長様のLINEを知ってたりとか)。蘭丸は信長様のごり押しでセンターになったため、他のメンバーからハブられたりするのです。チームからはじかれた蘭丸。蘭丸がチームに戻る方法は……これが史実に基づいているのですよ。一見歴史をネタにしただけのように見えますが、史実を知っているとニヤリとできる表現が満載なのです。そしてこの展開……現実の坂みたいなアイドルのあり方を思い出しませんか? そう、「戦国炒飯TV」は、戦国時代を手軽に知ることができるだけでなく、今の社会や文化に対する痛烈な皮肉にもなっているのです。
この他、「謀反しちゃった武将」と「謀反されちゃった武将」が話し合う「古田織部のひょうげ御殿」や、戦国大名がラップバトルする「戦フリースタイル」など、現代のネタを使って、戦国時代を面白おかしく紹介するのです。「戦国武将がよく来るキャバクラ」など、ちょっとお子様向けでないコーナーもありますが、基本がギャグですし、どこかで見たようなフォーマットなので、お子様にもわかりやすいと思います。

「うつけ坂49」の蘭丸を演じるのは、2.5次元ミュージカルなどで活躍する木津つばさ。この他舞台で活躍するイケメン俳優が多数出演し、舞台好き、俳優好きの人にも受ける内容になっています。イケメンで釣るのは大河と一緒ですね!

戦国炒飯?で気づく方もいるでしょう。この番組は10年前に放送された戦国鍋TVのリニューアルなのです。「鍋」の方は、tvkや千葉テレビなどで頻繁に再放送されるので、見る機会も多いと思います。先に挙げた石田三成CMに通じるところがありますよね。「歴史と現代」を結びつけると、とたんに親しみやすく、わかりやすくなるのです。
残念ながら「戦国炒飯TV」の放送は終わってしまいましたが、ソフトが入手できますし(Amazon)(楽天)、配信で見ることもできます。またYouTubeチャンネルでは主なコーナーを見ることができますし、新作も続々作られています。「Official付髭男dism」とか、「ChoushU」とか……まんまヒットしているグループのマネなんですが、うまーく歴史的史実をからめていて、実に楽しいんですね。まだまだプロジェクトとしては続いており、第二シーズンがありそうです。親世代がはまらないように注意が必要です。いや、はまっちゃった方が面白いのですが。

4 余裕があれば見ておきたい番組

世界くらべてみたら」「世界ふしぎ発見!」(いずれもTBS)、「Youは何しにニッポンへ?」(テレビ東京)のような、世界につながっていく番組は、余裕があれば見ておきたいですね。グローバル化が進んだ現在、受験でも「世界と日本との関係」「世界全体の動き」は多く出題されます。やるべきことを早めに片づけ、こうした番組を多く見ると良いでしょう。

5 要注意な番組

大人気ですが、要注意なのは「チコちゃんに叱られる!」と「突撃!カネオくん」(いずれもNHK)ですね。最近は、その筋の権威の学者を出すようになり、情報の内容はおおむね信頼できるようになってきていると思います。ですが「チコちゃん」は間違った内容を放送したことがあります(2020年8月の肉じゃがの回など)。いずれの番組も、情報を「鵜呑みにしない」姿勢が重要です。

6 見るべきでない番組

中学受験生が見るべきでない番組ははっきりしています。世界の果てまでイッテQ!(日テレ)、ポツンと一軒家(テレビ朝日)、せっかくグルメ(TBS)です。
いや、どれもいい番組だと思いますよ? 「イッテQ」は世界の様々な風俗を知ることができます。「一軒家」は、日本の産業の変化、過疎化の状況を知ることができます。「せっかくグルメ」は、各地のおいしい食べ物を、その土地の様子と一緒に知ることができます。どの番組も日曜のゴールデンタイムにふさわしい、面白い、ためになる番組です。
ですが。こと中学受験を考えると、圧倒的に大河ドラマを見るべきです。圧倒的に大河ドラマを見るべきです(二回言いますよ!)。特に今年の大河、渋沢栄一は出る可能性が非常に高いです(内容も面白くなりそうですし)。大河ドラマを録画しておけばOK? いえいえ、録画した番組を見返す時間などありません。大河を見ないでこれらの番組を見るのは、社会の得点を数点捨てるのと同じです。ですからこの3つの番組は、「受験の敵」なのです
ついでに書いておくと、鉄腕DASH」も要注意です。面白いし、ためになりますよね、この番組。「ものや食べ物はどのように作られるか」「私たちの身近な環境はどうなっているか」を知ることができますから。ただ、「鉄腕DASH」を見て、そのまま「イッテQ」を続けて見る流れになりがちです。「イッテQ」は、大河ドラマが始まるちょっと前、58分から始まるのですから。そこで、
①「鉄腕DASH」が終わったら速攻でNHKに変える
②19時からNHKニュース→19時30分から「ダーウィンが来た!」→20時から大河ドラマ の流れを作る
のどちらかにすると良いと思います。「ダーウィンが来た!」は、理科の学びにもつながりますし、カワイイものを扱った回の破壊力が絶大なので、②の方をオススメします。

7 これから始まる番組(3~5年生向け)

2021年4月から始まる番組でオススメといえば……新幹線変形ロボ シンカリオンZです!(テレビ東京、金曜19時25分)
「シンカリオン」は、小学生がロボットに変形する新幹線に乗り込み、謎の敵と戦うという作品でした。「ロボットアニメなんて」と思うかもしれませんが、以前の記事でも紹介したとおり、なかなかどうして、中学受験に直接役立つ情報を示していましたし、大人も考えさせる要素を持った作品でした。なんたってメインテーマが列島改造論ですよ! 田中角栄ですよ!
それにとにかく新幹線は受験に出ますすべての新幹線を覚えておくのは必須です。「シンカリオン」は、新幹線を知るための、わかりやすい入口になるのです。
今度の「シンカリオンZ」は、在来線の電車と合体するようですね。昨今の受験では、新幹線が一段落したせいか、在来線や高速道路も出題されるようになってきています。「シンカリオンZ」は、まさに受験の趨勢に合った作品になると思われるのですね。
放送が金曜19時25分ですので、多くの5年生、6年生は見ることができないと思います。3年生、4年生、可能なら5年生は、見ておくとよいでしょう。そしてオモチャのロボットを買って、鉄道に親しむのです。中学受験では鉄オタが圧倒的に有利ですから!

8 おわりに

かつては保護者に、「テレビを見ないで勉強しましょう」と言うことが多かったものです。ですが現在では、「テレビを積極的に見ましょう」と言うようにしています。現状の中学受験では、幅広い情報を映像で知っていることが求められます。それにはテレビが一番なのです。
「テレビは信用できない」「ネットの方が好きな情報を好きなときに知ることができる」そういう方もいらっしゃると思います。ですが現状では、知識や情報を総合的に得るには、テレビの方がまだまだ有利です。テレビが信用ならないと思うなら、テレビの見方や考え方を、親がきちんと教えるべきでしょう。また、親自身が、テレビの見方や、局ごとの立場、情報の示し方の違いをきちんと知っておくべきでしょう。ネットは、親や子どもが「よい」と思う立場や情報ばかりになってしまい、反対の立場や情報を知ることができなくなるという問題もあります。親のメディアリテラシーが問われるのです。
加えて、親がテレビを見ないと、子どももテレビを見ません。急に変える必要はありませんが、受験を考えるなら、低学年の頃から次第にテレビを見る時間を増やしていくべきだと思います。そしてテレビの情報をどう受け止め、考えるかという、「メディアリテラシー」を、親子で身につけていくべきだと思います。
問題となるのは、テレビを見る時間です。大河ドラマとブラタモリは、他の時間を削っても見るべきです。ブラタモリは録画してでも見るべきです。ですからタイムマネジメントが重要になります。漢字練習しながら、白地図をやりながらなどの「ながら視聴」も仕方ないかと思いますが、大河ドラマとブラタモリの時間はキッチリ空けて、テレビを集中して見るのも良いかと思います。
しみじみ思うのは、「テレビを見ましょう」と言わなければならない時代がやってきていることです。ボブ・ディランも言っていますが、「時代は変わる」のですねえ…。

以上、有益な情報だと思いましたら、ぜひ投げ銭をお願いします。

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