90年代細野晴臣ワークス10選


これは糸井重里のウェブサイトで80年代の細野さんを褒めたりないという企画が組まれたときに条件反射でしてしまったツイート(エアリプ)だが、実際のところ90年代の細野さんはざっくりと「アンビエント期」と括られることが多く(実際のアンビエント期は80年代のMonad Recordsからのリリースから始まっていると見做すべきだろうが)「陸に戻ってきた」以降と比べてもあまり顧みられることがないように思う。

そういうと「アンビエント作家としての細野はちゃんとその方面から評価されているじゃないか」といわれそうだが、実際にはこの頃の細野さんは単にアンビエントと括るだけでは収まらないような電子音楽家としての独自性に溢れた仕事を色んなところに残している。
そういうのを集めて紹介して90年代細野を褒めきりたいというのがこの記事です。
なおサブスクの有無は記事記載時点のSpotifyとApple Musicを基準にしています。

Rubaiyat - Haruomi Hosono Remix / Coldcut (1998) from “Let Us Replay”

いきなり細野名義ではなくリミックスなんだけど、この曲をとにかく聴いてほしいんですよ。何を吸収してきたらこんなアウトプット出せるのかって最初聴いた時ぶったまげた。カットアップの連続の中にはっきりと記名されている細野さんの絶妙なタイム感を感じてほしい。

サブスク

これが収録されているColdcutのリミックス盤には収録内容が全然違う海外盤と日本盤があって、今サブスクで聴けるのは海外盤のほうなのだが、これは日本盤にしか入っていないのでサブスクで聴けない。なお日本盤には教授と幸宏さんによるリミックスも収録されている。
余談だがさらに別内容でCloned Againという曲のリミックス盤という体のアナログがあって、これにだけrei harakamiのリミックスが入ってるんだけど未入手なんですごくほしい。

Bush / Haruomi Hosono & Bill Laswell (1996) from “Interpieces Organization”

Bill Laswellとの共作アルバム所収だが、この曲のみ細野さんのソロ。細かく執拗に刻むビートに変拍子ベース、呻き声のようなシンセ、よく聞き取れない話し声…などが重なっていって終盤のベル(自転車の?)が鳴るあたりまでにはトランス状態に持っていかれる。

サブスク

サブスクで聴けない。

Dr. Gauss/Yakan Hiko / Mixmaster Morris & Jonah Sharp (1998) from “Quiet Logic”

“Quiet Logic”はMixmaster MorrisとJonah Sharpが細野さんのハウススタジオで録っていった大名盤で、一部の曲で細野さんが共作している。この曲/アルバムはアンビエントにもある種のグルーヴってものがあるんだってことを教えてくれる。

サブスク

サブスクで聴けない。

Spinning Spirits / Haruomi Hosono (1995) from “N.D.E”

個人的に2023年の音源リリースにおけるトピックの一つはこのアルバムのアナログ再発で、手元に届くまではずっと疑ってた。
N.D.Eはすごく音がよくTECHNODONと共通する質感があるアルバムで、私はそれを勝手にGoh Hotoda感と呼んでいる。このオープニング曲はU-zhaanが後にrei harakamiや蓮沼執太とのコラボで示したような、タブラ(この曲の音が本物かどうかわからないが)と電子音楽の相性の良さを先取りしたかのようでもある。HeliotherapyなんかはTECHNODONに入っていてもおかしくなさそうな曲。
ところでN.D.Eって今度が初アナログ化だと思ってたんだけどDiscogsによると当時もアナログが出ていて、それにはCDに入っていないRain Dreamという曲が入っていたようだ。えー。ちなみにN.D.EはNear Death Experience(臨死体験)の略。

サブスク

サブスクで聴けない。

Uptown Pulldown / HAT (1998) from “DSP Holiday”

細野さんとAtom Heart、Tetsu InoueによるHATは2枚アルバムを出しているが、2枚目のDSP Holidayで唐突に明るくなっていて、なんかウクレレとか入ったりしている。多分だけどAtom Heartの陽の部分が出たんだと思う。Shinjuku Photoshopという曲は中でもポップで、ボーカルまで入っている。その2枚目の中で細野的グルーヴを感じられるこの曲をチョイス。ちなみにダジャレで韻踏みされているPulldownっていうのは電子回路用語。

サブスク

HATのアルバムは両方ともサブスクで聴ける(逆になんで?)。

Paradise, ver.2 / Swing Slow (1997)

Swing Slowの唯一のアルバムはコシミハル主導と思われる楽曲の間に「曲というよりはエディット」みたいな細野さんの短いトラックがインタールードのように挟まる構成になっていて、そのうちの1つ。細野作品には珍しいジャズ感のリズムループの中でいろいろ遊んでる感じの可愛らしい作品。日本のテクノアーティストの曲を集めたPacific Stateというコンピにも収録された。
Paradiseっていったら「はらいそ」なんですけど、意識して付けたのかはよくわからない。

サブスク

Swing Slowはアルバム再発に合わせて最近サブスクで聴けるようになった。めでたい。

Omukae de Gonsu / Haruomi Hosono (1998) from “ATOM KIDS Tribute to the king O.T.”

手塚治虫のトリビュート盤に細野さんが提供した曲。Three Sunsとかの40年代の細野さんのルーツが入っている感じもあり、あるいはVAGABOND cpaぽくもある。うろ覚えで打ち込んだという鉄腕アトムのメロディーっぽいものがちょっとだけ入っている。

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HOSONO BOXに再録されているがサブスクで聴けない。

Drag The Beat / Haruomi Hosono

元々Atom Heartらによる著作権フリーサンプル素材集という中々な珍盤に作例?として収録された曲。
グルーヴしていないグルーヴみたいなループの中に確かに細野さんを感じるフレーズが入ってくる。

サブスク

HOSONO BOXに再録されているがサブスクで聴けない。

Biogenic Frequency / Haruomi Hosono (1997) from “Summer Of Rainbow 97”

レイヴイベント出演者の楽曲をコンパイルした盤に細野さんが提供した曲。取り憑かれたような執拗な細かいエディットに満ちている。ここまで聴いてきたらこの感じが私が伝えたい90年代細野の手触りなんですよっていうのがわかってくると思います。

サブスク

HOSONO BOXに再録されているがサブスクで聴けない。

(おまけ) O.K. / YMO (1993) from “Technodon”

細野さんは音楽性が多岐に渡り過ぎていて細野節みたいなものを捉えるのが難しい感じがするが、この曲は私の中ではTHE MADMEN(YMO), AIWOIWAIAOU(細野), Supreme Secret(Sketch Show)の並びの中に置きたくなる、ああ、これは細野世界観!っていう感じのやつ。

サブスク

Technodonがサブスクに来ないのはまじで何故なんですかね。本人たちがなんと言っていようと私は好きなんですよ。ちなみに2020年にフィジカルでの再発があったのは気づかなかった。


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