見出し画像

「確率論的思考」を読む

田渕直也
「確率論的思考 金融市場のプロが教える最後に勝つための哲学」
日本実業出版社 2009年9月20日

❝何年も金融市場で仕事をしてきた私にとって、市場から学んだ最も根本的なことは、「相場の先行きを正確に予測することは不可能であるだけでなく、そもそも正確に予測をするという考え方自体が避けなければならないものである」ということだった。❞

❝「相場は100%確実に上がる」という類のことを自信たっぷりに語る人物がカリスマとなり、短期的な成功を収めることはよくあることだ。だが、そうした成功が長続きすることはまずない。

本当の成功者は100%確実な将来があるなどとは考えていない。そのかわり、不確実な現実の中で成功をより確かなものにするにはどうすべきかを考える。それは確率論的に物事を見るということにほかならない。❞

❝不確実性に満ちた複雑な世界においては、成功を持続させるためにある種の考え方が必要とされる。物事を確率論的に捉え、何事をも絶対視しないという考え方だ。それを確率論的思考と名付けて、それがどのようなものであるかを見ていくのが本書の趣旨である。❞

❝簡単 に いっ て しまえ ば、 「(今、自分が想定していることや期待していること以外に)どのようなことが起こりうるのか?」「自分の認識や見通しはもしかすると間違っているのではないか?」「もし間違っていたらどんな損失が発生するのか?」といったことを常に問いかけ、どのような事態がどのくらいの確率で起こるかをできるだけ客観的に見積もり、その起こりうるさまざまな事態で発生する利益と損害を比較考量して、意思決定を下すやり方である。❞

❝「いや待てよ、このやり方は絶対確実だと思っていたが、絶対確実だなんていえない。きっと他にもやり方はあるに違いない」とか、「いや待てよ、この予測は100%確実だと思っていたが、100%確実なんてことはない。別の事態が起こる可能性もあるはずだ」と考えるだけで、随分と物事は違って見えてくるはずである。それが確率論的思考の本質なのである。❞

❝「一発当てたい」というような短期的成功のみを目指すのであれば、さして確率論的思考は必要ない。所詮は一発勝負である。必要なのは資金と勇気だけだ。しかし、一時的に成功して大きな収益をあげても、やがて大損を発生させてそれまでの利益を吹き飛ばしてしまう。

一時的な成功者は数多くいるが、長年にわたって成功を継続できる人はそれほど多くはない。そして、そうした長期的、継続的な成功を実現するために、確率論的思考が不可欠となるのである。❞

❝実際のファンドマネージャーの成績は、概ね正規分布にそって分布している。これは、ファンドマネージャーの成績が、偶然によって決まっているという可能性を示唆するように思われる。

豊富な情報を持ち、高い分析力を持っていることが多少なりとも株価の予測に結びつくならば、ファンドマネージャーの成績は平均すれば優秀であるはずだ。しかし、実際には、ファンドマネージャーの成績は平均すると市場平均をやや下回るという実証結果が多い。

つまり、ファンドマネージャーの成績は、少しも優秀ではなく、しかも、適度にばらついている。訓練を積んだ専門家だからといって、株価を予測することは非常に難しく、明確に素人を上回れるわけではないのだ。その原因として考えられるのは、いうまでもなく偶然の影響である。偶然は誰にも予測することができない。❞

❝株式欄を壁に貼り、猿にダーツを投げさせる。そして、そのダーツが当たった銘柄に投資するのだ。株価がランダムに動いているのであれば、この投資法での成績は正規分布に近い形でばらつき、そして成績の平均は市場平均にほぼ近いか、取引コストの分だけ下回ることになるだろう。

つまり、偶然が支配する市場では、プロのファンドマネージャーが運用しても、猿にダーツを投げさせて銘柄を選んで運用しても、大して変わりはない。❞

❝もしすべての情報を知り、無限の計算能力を持つ全知全能の存在がいれば、将来は完全に予測できるはずである。この仮想の存在を、その提唱者にちなんで”ラプラスの悪魔”と呼ぶ。❞

❝未来は予測できない。しかし、それは情報が不足し、計算能力が不足しているからだ。

本当は、未来はすでに決まっており、不確実性などない。確率も本当は存在していない。ただ、知識と能力が足りないからそう見えるだけだ。だから、知識と能力さえ備わっていれば、偶然に見えることも見通すことができ、運に見えるものもコントロールできるようになる。❞

著者は 量子力学の研究成果について記述
多世界解釈(MWI)と複雑系に言及

多世界解釈(MWI=Many-Worlds Interpretation)
量子力学の解釈の一つ
・すべての測定結果が異なる「世界」に分岐して実現する
・全ての可能性が同時に存在する別々の世界として分岐
・異なる結果が互いに干渉しなくなることで、各結果が独立した「世界」として存在する

複雑系(Complex Systems)
多数の相互作用する要素から成り、全体として予測不可能な振る舞いや自己組織化を示すシステムのこと。

例として、相場の値動き、政治状況、天候、生態系など。

ChatGPTに聞いてみた
複雑系としてのマーケット

❝相場は個々の投資家がここに投資行動を起こすことで形作られる。ある投資家の行動は別の投資家の行動に影響を及ぼし、それが波及してやがて違った形で自分に返ってくる。まるで一つの生き物のようにうねるようにして相場が動いてゆく。❞

❝複雑系においては、最初はとても小さな動きだったものが、複雑な相互作用の中でとてつもなく大きなものに発展することがある。こうした性質を「カオス」と呼ぶ。象徴的事例として「バタフライ効果」が挙げられる。❞

❝多様性を確保すること だ。 多様な観点、 多様な手法、 多様な才能、そうした多様なものの存在が、予測でき ない事態への対応 力 と なる。❞

❝不確実性のもとでは、失敗を避けることができない。

正しいやり方をしたからといって100%確実に成功できるとは限らない。実力があるからといって100%確実に勝てるとは限らない。

正しさや実力は確率というフィルターを通してしか結果に影響を与えられないのだ。❞

❝人間には、偶然を何らかのやり方でコントロールできるという厄介な幻想がある。失敗を悪と決めつけ、失敗を忌避するために偶然をコントロールしようと血眼になる。

だが、偶然をコントロールするよりも、偶然がもたらすものに柔軟に対処できるような仕組みを整えることの方に専念すべきである。❞

❝不確実な世界においては、不確実性に起因する失敗は許容されるべきだ。❞

❝不確実な世界では、すべては確率を伴う。❞

❝短期間で見ると、確率通りの結果にならないことは大いにありうる。確率は、回数が多くなってようやく姿を表すのだ。だから、短期で見るよりも、長期で見る方が確率は安定して現れる。❞

❝不確実な世界では、長期的な視点を持つことが大切だ。偶然はコントロールすることができない。人がコントロールできるのは、確率だけである。成功する確率、勝てる確率を高めるように努力することはできる。そして、その確率は長期でしか現れないとすれば、長期的視点でものを考えていかざるを得ない。❞

❝短期よりも長期の方が、不確実性が増すと思いがちだ。だが、確率は長期でこそ意味を持つ。正しいやり方をしていても短期では結果に結びつかないことがあるが、長期では概ね正しい結果に結びつく。実力のある者が短期では勝てないこともあるが、長期ではほぼ実力通りの結果を出せる。❞

❝時間がたっていくと、数多くの偶然がお互いにその影響を打ち消し合うようになっていくので、次第に不確実性の霧は晴れていく。❞

❝不確実性のもとでは、多様性の確保、失敗の許容と活用、長期的視点が不可欠となる。❞

❝さまざまな観点を取り入れながら、小さな失敗を時に繰り返しつつ少しずつ前進し、長期的に安定した成功を成し遂げるというプロセス それこそが、確率論的思考の真髄なのである。❞

❝何かをするべきときに何もしないことによって失敗するのは、不確実性により失敗ではない。なにか重要な情報や兆候を見逃したことによる失敗もそうだ。あるいは異論を封じ込めたために、防ぐことができたはずの失敗が起こってしまうこともある。❞

ここからは ケメコ語り

不確実性に対処するためには
確率論的思考が不可欠
そしてそれは3つに集約される
1️⃣ 多様性の確保
2️⃣ 失敗の許容と活用
3️⃣ 長期的視点

これをトレードに当てはめて考えてみると―

1️⃣ 多様性の確保
・複数のシナリオを構築する
 複数のストーリーを想定する 
 複数の筋書きを立てておく
 ことが大事
・おつきい足とちつさい足
 大局と中局と小局 など
 多様な時間軸を観察することが大事
・複数の根拠や確証が重合するところ
 複数の根拠や確証が重合するとき
 でのエントリーが大事
・インジケーターやオシレーターは
 それぞれ異なるものを計測する
 それぞれ異なる状態を見える化する
 ものを複数組み合わせることが大事
・特定の手法や戦略に固執するんぢやなく
 多様な手法や戦略を習得/修得しておいて
 相場の地合いやチャートの形状に応じて
 それらを駆使することができる能力が大事

2️⃣ 失敗の許容と活用
不確実性に起因する失敗を失敗と思はない
・不確実性のせいで損切られたり利確が早かったとき
 悔やんだり気に病んだり凹んだりする必要はない
・不確実なマーケットと対峙するときに
 怖気づいたり不安を感じたりしない

3️⃣ 長期的視点

・1度や2度のまぐれ当たりで
 自分を天才だと思はない
・数十回負けが続ひても
 自分にはムリだと絶望しない
・かうなつたらエントリーと決めたことを
 ブレないで ソレないで
 100回200回300回とひたすらリピートする
・いまのこのトレードは これから先100回200回300回つて
 繰り返していくたくさんのトレードのたつた1つにすぎない
 この1回のトレードで負けても勝っても
 長いトレード人生には ほとんどなんの影響もない
 カズマル君も云つてるぢやないですか
「ドンマイドンマイ! 僕は好きだよッ」つて

ケメコは
トレードをサッカーの1試合
チェスの1對局みたいに考へてゐます
得點や駒を取られたり取つたりして
最終的に勝てばいいつて

對戰チームに1點も與へずに
全戰全勝なんてありえないし
對局相手に駒ひとつ取らせないで
勝つことなんてありえないですよね?

だから
一回一回の負けトレードや
損切りつて
あんま氣にしなくていい
いや
全然氣にしなくていいんです

たとへば
4回損切りして
次の1回で大きく勝つてプラスになつたら
そこまでが「1試合」つて考へればいい
5戰1勝4敗ぢやなくて「1勝」
4回の負けは勝つための布石

たとへば
ロンドン時間にトレードする人は
ロンドン時間中に何回何十回トレードしても
それがその日の「1試合」
損切りは相手チームにゴール取られたとき
利確は味方チームがゴール決めたとき
得點を取られたり取つたりして
試合終了のときにプラスだつたら「勝ち」

もちろん
1回1回のエントリー大事だけど
1回のエントリー=1試合 ではない
1回のエントリーは テニスでいへば
1回のサーブ/レシーブ
それを何十回何百回繰り返して 1試合終了
トータルで勝つてゐればそれでいいんですよ

【追記】2024年7月16日
偶然とランダムウォークに関するケメコ的見解は
天地万物の創造主である全知全能の神の目には
偶然なものは1つもなく
ランダムなものは何1つない
将来は細部にいたるまですでに決まつてゐて
不確実性は存在しない
つて立場です

著者が”ラプラスの悪魔”についての書いてゐる文章を
「天地万物の創造主である全知全能の神にとっては」
つて置き換えて読んでみてください

マシュマロ匿名質問箱Q&Aより
Q
ランダムウォーク理論に関するケメコ先生の卓見をお聞かせください。
A
偶然でもランダムでもないが
不確實で予測不可能である
つて考へです

遠藤周作が云ふ「神不在」の日本人に
正確に伝はるとは思はないけど
要點だけ述べますね
ケメコは有神論的世界觀に立ちます
人格と意思を持つ神が
目的と計画をもつて世界を統べ治めてゐる
と云ふ考へかたです
雀一羽 髮の毛一筋たりとも
神の御心でなければ地に落ちないと聖書は言ひますから
相場の値動きも偶然やランダムではありえません
ある明確な意志と目的と計画がそれを動かしてゐます
でも人間にそれを知ることは絶對にできません
「神のみぞ知る」です
Deo Volente(God willing)つて表現がありますよね
神の意思であるなら 神がさう望めば 御心ならば
価格が上昇したのは「神の御心だつたから」
価格が反転してトレンド転換したのは「御心だつたから」
ですから相場に「偶然」とか「ランダム」な要素はありません
でも不確実であることに変わりはありません
予想や予測や先読みは絶對にできつこない
Q
カトリックですか?プロテスタントですか?
A
オランダ生れオランダ育ちですよ
カトリックなわけないぢやないですか

Tota fere sapientiae nostrae summa, quae vera demum solida sapientia censeri debeat, duabus partibus constat, Dei cognitione et nostri.

神と人について必要なことは全部
CalvinのInstitutioと
Heidelberg Catechism
に書いてある

【追記】2024年7月28日