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空港ビフォーアフター〜空港は成長する〜

 初めに、三枚の写真を紹介したい。

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地理院地図 1961年〜1969年
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地理院地図 1974年〜1978年
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地理院地図 全国最新写真2004年以降

 この3枚の写真は全く同じ場所を撮ったものだが、撮影された年代がそれぞれ異なる。1枚目の白黒の写真には空港は確認できないが、2枚目の写真にははっきりと空港が映っており、3枚目の写真では2枚目の時よりも滑走路が伸びているのがわかる。この写真だけでどこの空港かわかった人はすごい!(正解は、島根県の出雲空港です。)
 

 何もない場所に空港が建設されるだけであれば、まあそういうこともあるだろうという感じだが、これらの写真が面白いのは、一度小さめの空港が建設された後に、大きな空港に進化している点である。飛行機の大型化と航空輸送の発展に伴って拡大されたものと思われるが、出雲空港の場合はもともと湖ギリギリの場所に建設してしまっために、宍道湖に突っ込んだような形になっている。

ということで、今回は航空写真から空港の成長の様子を観察していきます。


 先程の出雲空港の発展形式を「水上突っ込み型」と名付けることにするが、このタイプは割とあちこちの空港で確認できる。いくつか例を挙げていくと、

果敢に太平洋に突っ込んでいった宮崎空港

地理院地図 1974年〜1978年
地理院地図 全国最新写真2017年

徐々に前進していく松山空港

地理院地図 1961年〜1969年
地理院地図 1974年〜1978年
地理院地図 全国最新写真2010年

ギリギリ出ちゃった鳥取空港

地理院地図 1974年〜1978年
地理院地図 全国最新写真2009年

 初めに空港を作る時、なぜこんなにも水辺ギリギリな場所に空港を建設してしまったのだろうか。用地の確保の問題、騒音問題、地形の問題、安全上の問題等、考えられる理由はさまざまあるが、「待てよ、もしかして後で空港を拡大するとき困るんじゃないか?」と言い出す人はいなかったのだろうか。あるいは、当時すでに「まあその時は海の上に延長すればいいんじゃない?」などという議論があったのかもしれない。ちなみに、ここで紹介した空港以外にもこのタイプは割とあちこちにあった。

 続いてのタイプに移ろう。次は「滑走路増設型」を紹介したい。「水上突っ込み型」が一本の滑走路を延長してきたのに対し、次は滑走路の数を増やしてきた空港を紹介する。

一本増えた大阪国際空港(伊丹空港)

地理院地図 1961年〜1969年
地理院地図 全国最新写真2012年〜2013年

角度を変えた仙台空港

地理院地図 1961年〜1969年
地理院地図 全国最新写真2019年

どんどん増える東京国際空港(羽田空港)

地理院地図 1979年〜1983年
地理院地図 1988年〜1990年
地理院地図 2007年
地理院地図 全国最新写真2019年

 このタイプの空港は必然的に利用者の多い空港に絞られる。むしろ、利用者が増えたから滑走路を増やしたという方が正しいだろう。調べてみたところ複数の滑走路を持つ空港自体、国内にはそれほど多くはないようで、大きな空港でも中部国際空港や福岡空港などは滑走路が一本しかない。そういう意味では滑走路増設型はレアなタイプと言える。写真をじっくり見比べていくと昔から変わっていないところと激変したところの対比が面白い。特に羽田空港では新しい滑走路を建設する一方で、古い滑走路を廃止していることがわかる。

最後にもう一つ「空港全取っ替え型」を紹介しよう。ここまでに紹介した空港が、なるべく元からあったものを活かそうとしていたのに対し、「えーい、新しくつくり直してしまえ!」というのがこのタイプである。

隣に新しいのをつくっちゃった女満別空港

地理院地図 1974年〜1978年
地理院地図 全国最新写真2018年

 空港を新しくつくり直す場合、立地が大きく変わることがほとんどで、基本的には同じ航空写真の範囲には収まらないのだが、北海道の女満別空港はどういうわけか元あった場所の隣に建設している。これでは間違って古い方の滑走路に着陸してしまうではないかと思うのだが、女満別空港ではないものの同じく空港の場所を変更した紋別空港では、間違って古い方の空港に着陸してしまったという事故が実際に発生しているらしい。ちなみに全く関係ないが、女満別空港はもともと流氷を観測する飛行機のためにつくられたそうである。

今回のまとめ


 それぞれのやり方で成長してきた空港の様子を見てきたが、その中で、現在の空港の姿も完成形とは限らないのだろうと思い至った。現に、滑走路が一本しかないという例で挙げた中部国際空港や福岡空港でも滑走路増設の計画が今まさに進行している。ここまで歴史をつないできた空港たちがこれからどう成長していくのか、楽しみに見守りたいと思う。

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