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小児喘息患者におけるアセトアミノフェンとイブプロフェンの急性増悪リスク

アセトアミノフェンとイブプロフェンは、小児に最も広く使用されている薬剤です。主な適応症は発熱です。

アセトアミノフェンは、出生前の投与、乳児への投与、前年度の曝露など、いくつかの状況において、喘息や喘鳴リスクを増加させることが、複数の研究で示唆されています。

イブプロフェンも頻繁に使用される解熱剤ですが、これらの研究では報告されていません。また、呼吸器感染症の併発による交絡も除外されていません。感染症は、喘息においてアセトアミノフェンより重要な役割を果たす可能性があります。

肺機能に対するアセトアミノフェンの影響を評価した研究では、成人および小児において相反する結果が示されています。喘息コントロールのためにアセトアミノフェンとイブプロフェンを比較した研究でも、一貫した結果が得られていません。

例えば、生後6ヵ月から12歳までの喘息児において、発熱性疾患に対するアセトアミノフェンの短期使用をイブプロフェンと比較した研究があります。この研究では、入院には至らないものの、アセトアミノフェン群は喘息増悪による予定外の外来受診が多い、という結果でした。

しかし、最近の二重盲検ランダム化比較試験では、喘息コントロール、または全身性コルチコステロイドによる喘息治療において、両群に差は無いという結果でした。この研究では、軽度の持続性喘息を有する1~5歳の小児において、アセトアミノフェンとイブプロフェンの使用を48週間比較しています。

またMatokらは、熱性疾患の小児における解熱剤と喘鳴との関連を検討し、イブプロフェンが喘鳴のリスク低下と関連すると報告しています。

ところでGlobal Initiative for Asthmaの報告によると、過去1年間の重症喘息増悪が、最も強い独立した喘息増悪の予測因子です。

喘息増悪とは、喘息症状の進行性の増悪、その急性または亜急性エピソードで、気流閉塞を伴って起きる、と定義されます。また増悪の転帰として最も一般的に検討されるのは、全身性コルチコステロイドの必要性と緊急の予定外の喘息関連ケアです。具体的には救急室受診や入院、予定外の外来受診です。

本研究では、台湾国民健康保険研究データベース(NHIRD)を用いて、持続性喘息を有する 1~5 歳の小児を対象に、アセトアミノフェンまたはイブプロフェンを1年間使用した場合の喘息増悪リスクを、前年度の喘息増悪などのリスク因子に着目しながら比較しました。

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