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Rubyの型チェッカーSorbetを導入して良かったこと・悪かったこと

この記事はPharmaXアドベントカレンダー2022 7日目の記事です。

PharmaXでエンジニアをしている加藤(@tomo_k09)です。
以前の記事でRubyの型チェッカーであるSorbetを導入したと書きました。


Sorbetを本格的に導入して半年以上経過したので、本記事ではSorbetを導入して良かったこと・悪かったことについて振り返ろうと思います。

Sorbetを導入して良かったこと

まずは良かったことからご紹介します。

学習コストが低い

1つ目が学習コストが低いという点です。
代表的なRubyの型ライブラリとしては、SteepとSorbetがありますが、Sorbetの方が導入はしやすいかと思います。

というのも、SorbetはRubyの文法で記述できるためです。
sigというメソッドを使うことにより、引数はstring、返り値はintegerというように型の定義が可能です。

# sorbet example
# typed: true
extend T::Sig

sig {params(name: String).returns(Integer)}
def main(name)
  puts "Hello, #{name}!"
  name.length
end


ちなみにSteepで型を定義する場合はこんな感じになります。
RubyっぽいけどRubyとは少し異なる書き方をしなければなりません。

# Steep example
class Person
  @name: String
  @contacts: Array[Email | Phone]

  def initialize: (name: String) -> untyped
  def name: -> String
  def contacts: -> Array[Email | Phone]
  def guess_country: -> (String | nil)
end


Rubyでも型の恩恵を受けられる

「このメソッドからはどんな値が返ってくるのだろう?」
「この引数は名前からしてstringが返ってきそうだけど、間違ってないよな?」

Rubyの開発者であれば、1度はこんなことを思ったことがあると思います。

Sorbetはコードと型を一緒に管理できるため、Rubyのアプリケーション開発にありがちなこういった悩みから解放してくれました。

以下のサンプルコードを見ていただくと、パッと見でどんな型の引数・返り値なのかが分かるかと思います。

# Example
class UserEntity
   sig { returns(Integer) }
   attr_reader :id

  sig { returns(String) }
  attr_reader :first_name, :last_name, 

  sig { params(id: Integer, first_name: String).void }
  def initialize(id:, first_name:, last_name:)
    @id = id
    @first_name = first_name
    @last_name = last_name
   end
end


class UserRepository
  sig {params(id: Integer).returns(UserEntity)}
   def find_user(id:)
    user = User.find(id)
       UserEntity.new(id: user.id, first_name: user.first_name, last_name: user.last_name)
   end
  end
end


またプログラム実行前に

「ここtypoしてるよ」
「変数を宣言してるけど、どこにもこの変数が使われてないぞ」
「引数の型、間違ってるから直して」

と注意してくれるのも非常にありがたかったです。

Sorbetを導入して悪かったこと

逆にSorbetを導入してみて大変だったことについて。

コードが冗長になる

引数、戻り値の型をひとつひとつ定義する必要があるため、コードを書く量がとても増えます。

先ほどのサンプルコードを改めて確認してみましょう。
こちらがsorbetで型をつけているパターン。

# Example
class UserEntity
   sig { returns(Integer) }
   attr_reader :id

  sig { returns(String) }
  attr_reader :first_name, :last_name, 

  sig { params(id: Integer, first_name: String).void }
  def initialize(id:, first_name:, last_name:)
    @id = id
    @first_name = first_name
    @last_name = last_name
   end
end


class UserRepository
  sig {params(id: Integer).returns(UserEntity)}
   def find_user(id:)
    user = User.find(id)
       UserEntity.new(id: user.id, first_name: user.first_name, last_name: user.last_name)
   end
  end
end


そしてこちらがsorbetがないバージョン。
パッと見でコード量が少ないのが分かるかと思います。

# Example
class UserEntity
   attr_reader :id, :first_name, :last_name

  def initialize(id:, first_name:, last_name:)
    @id = id
    @first_name = first_name
    @last_name = last_name
   end
end


class UserRepository
  def find_user(id:)
    user = User.find(id)
       UserEntity.new(id: user.id, first_name: user.first_name, last_name: user.last_name)
  end
end


正直、↓のように書けたらなぁと思いました。

class UserEntity
  def initialize(id: Integer, first_name: String, last_name: String)
    @id = id
    @first_name = first_name
    @last_name = last_name
   end
end

まぁRubyのライブラリなので、このように冗長になってしまうのは仕方がないかもしれないですが。

継承の型が保証されない

例えば、Parentというファイルがあって、それを継承したChildというファイルがあったとしましょう。

この場合、親で定義した型が子に引き継がれることが保証されていません。

Sorbetのリファレンスには「これは親のメソッドだよ」と100%保証してくれないとはっきり書いてあります。

Sorbet can’t know what the “parent method” is 100% of the time. For example, when calling super from a method defined in a module, the super method will be determined only once we know which class or module this module has been mixed into.

https://sorbet.org/docs/faq


RBIファイルのメンテナンスが修正がしんどい

SorbetはRBIファイルを使って型注釈をしています。

つまり、このRBIファイルを通して、
- この定数にはString型が入っている
- このメソッドは引数としてIntegerが渡されて、String型の値を返す
といったことを判定するわけです。

このRBIファイルが曲者で、たびたび謎のエラーを吐き出して、PharmaXのエンジニアたちを苦しめていました。。。

幸いにもSorbetのリファレンスは充実しているので、直そうと思えば直すことはできるのですが、RBIファイルの扱いに慣れるには、それなりに時間を要しそうです。


終わりに

Sorbetには使い勝手の悪い面もあるのですが、型をつけることによって事前にエラーの芽を摘み取りやすくなったので、総合的には導入して良かったなと個人的には思っています。

Sorbet特有の作法について多少学ぶことが必要ですが、比較的使いやすいライブラリだと思うので、ぜひ試してみてください。

PharmaXアドベントカレンダー2022では、2022年12/25日まで技術的な話から組織の話まで幅広い記事が公開される予定です。

引き続き、ぜひよろしくお願いいたします!


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