【論文0006】医療従事者は偏頭痛になりやすいのでしょうか?

Higher migraine risk in healthcare professionals than in general population: a nationwide population-based cohort study in Taiwan.
Kuo WY, Huang CC, Weng SF, Lin HJ, Su SB, Wang JJ, Guo HR, Hsu CC
J Headache Pain. 2015;16:102
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26631235
PMID: 26631235

背景:
過度なストレスは、医療従事者(HCP)の片頭痛を誘発するという予想は立つ. しかし, HCPと一般集団との間に片頭痛のリスクの差は不明のままで会った.

手法:
台湾の全人口ベースのコホート研究. 国民健康保険研究のデータベースを使用 . 医師(50,226名), 看護師(122,357名), および他のHCP(薬剤師, 技術者 , 栄養士, リハビリ療法士 , ソーシャルワーカーなど)(45,736名)と, 比較コホートとしての非医療者(218,319名)を無作為に選択. 条件付きロジスティック回帰分析により片頭痛のリスクを比較.  また, HCPのうち, 医師の医師以外の医療者間のリスク比較も行われた.

結果:
医師、看護師、その他のHCPは、それぞれが一般集団よりも高い片頭痛のリスクを有していた.
医師;
調整オッズ比:1.672 ; 95%CI:1.468〜1.905
看護師;
調整オッズ比:1.621 ; 95%CI:1.532〜1.714
その他のHCP;
調整オッズ比:1.254 ; 95%CI:1.124〜1.399
(脳卒中、高血圧、てんかん、不安、うつ、不眠の有無で調整)

看護師や医師は, 他のHCPよりも高い片頭痛のリスクを持っていた
看護師;
調整オッズ比:1.303 ; 95%CI:1.206〜1.408
医師;
調整オッズ比:1.193 ; 95%CI:1.069〜1.332

産婦人科医は, 他の専門医よりも偏頭痛発症リスクが低かった(調整オッズ比:0.550 ; 95%CI:0.323〜0.937 ).


結論:
台湾でのHCPは, 一般集団よりも高い片頭痛のリスクを有する. 過度な労働, 感情的ストレス, および夜勤による睡眠障害が最も重要な危険因子であると予想される. これらの知見が, 台湾でのHCPに適切な労働環境構築を促進するための重要な基準を提供するだろう.

【感想】
お隣の台湾ではいろんな興味深い臨床結果が報告されていますね.
労働環境が比較的(絶対的?)ブラックである日本ではもっと強い相関がありそうにも思えます.
とはいえ, 「人命を守る仕事に就いている人間こそメンタル・フィジカルヘルスをきちんと維持させる必要がある. そのためにも積極的に休み・交代制を取り入れよう」という機運がもっと高まればと思います.
(そのためにはきちんと人員を確保することが必要で, かつそのためにはちゃんと医療提供施設に潤沢なお金が入る仕組みがもっと必要なのですが, その辺りは今回は触れずにいます)

注:
当記事の内容に関しては最低限の質を担保するよう最大限の努力をしているものの, 内容に誤りなどがございましたら, twitterアカウント@pharmasahiroまでご連絡ください.

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