【当院の活躍する薬剤師たち #2】:泉病院|関口すみれ子先生
「うちの薬剤師ってとっても有能なの」
にっこりと笑いながら素敵なエピソードを語ってくださったのは、宮城県仙台市にある泉病院の副院長・関口すみれ子先生。脳神経の専門病院におけるチーム医療を実践するうえで、薬剤師は「不可欠な存在」とのこと。
新連載「当院で活躍する薬剤師たち」第2弾は、脳神経内科を専門領域とする関口先生に、薬剤師に期待する役割や連携のとり方などをテーマにお話を伺いました。
▼病院のご紹介
Q: 泉病院における病院薬剤師の役割を教えていただけますか?
関口先生: 泉病院の薬剤師は、常勤2名とパート1名なのですが、薬のチェックをはじめ大変頼りになる存在です。
当院の外来患者さんは大学病院からの紹介も多く、複数の薬を飲んでいる方も少なくありません。特にパーキンソン病の患者さんは、パーキンソン病治療薬だけで4~5種類飲んでいますし、加えて排尿障害など合併症の治療薬もあり、10数種類服用しているなんて方もいます。
こうした患者さんへの対応として、当院では薬剤師が医師の診察前に診療情報提供書などから処方内容を確認し、処方薬が当院で採用されていない場合は代替薬の提案までしてくれます。処方に関して薬剤師が介入してくれることで、薬のチェックにかかる時間軽減はもちろん、医師の心理的負担も軽減します。
Q: 入院の場合はいかがですか?
関口先生: 入院患者さんの場合、複数の病院から薬をもらっている方が多いのですが、そちらも薬剤師が処方をチェックして整理してくれます。新規入院患者さんの場合、入院時に診療計画書やリハビリの計画書などを作成するのですが、薬のことは薬剤師にお任せできるのでとても頼りにしています。また入院中も、薬剤師が患者さんのデータを見て、腎機能にあわせて抗菌薬の投与量を提案してくれたり、「この薬とこの薬は相互作用があるのでこちらに変えたほうがよい」などの助言もしてくれたりします。
脳神経内科領域は新薬も多く、情報をキャッチアップするのが一苦労なのですが、当院では薬剤師が常に最新の薬剤情報をキャッチしてくれているので大変助かります。なくてはならない存在です。
Q: 薬剤師とのやり取りはどのようにされていますか?
関口先生: 電子カルテのメール機能を活用しています。もちろん、いますぐに対応しなければならない場合は電話で対応しますが、急を要さない場合は基本メールですね。電話だと、今開いている患者さんの電子カルテを一回閉じて、該当患者さんの電子カルテを開いて、それが終わったらもう一度元の患者さんのに戻って…、という作業が発生するのですが、メールの場合は仕掛かりの業務が終わってから対応できるので業務効率もよいですね。
またメールの場合、確実に該当患者さんに関する問い合わせを送ることができるので間違いもなく、医療安全という観点からもプラスと考えています。私も薬のことで聞きたいことがある場合はメールで質問をしています。内容は「この薬でどういった副作用が出るだろう」「この副作用はどの薬が一番疑わしいだろうか」といったものが多いですね。
Q: 気になる患者さんについて、先生から薬剤師に依頼や質問をしている、というイメージでしょうか?
関口先生: そういったこともありますが、逆に薬剤師自ら病室に出向いて患者さんに聞き取りをして、薬剤師の視点で気になったことを医師にメールで送ってくれるといったことが多いです。
先日とても助かった事例があったんです。
あるてんかんの患者さんの話です。意識障害があって他の病院に運ばれたものの、てんかん後の朦朧状態を疑われて日中当院に運ばれてきました。朦朧状態がずっと治まらないので、そのまま入院したんです。その日は木曜日だったのですが、血中濃度を計測したものの翌日金曜日の夕方になってもまだ結果が出ておらず、てんかん発作を起こしたという想定で、元々服用していた薬(テグレトール)を増量したんです。
翌日の土曜日、薬剤師から私に電話がかかってきて、「先生、てんかんの患者さん、テグレトールの血中濃度が2倍以上になっていました」と言われました。
驚きました。これまでずっと同じ量を飲んでいて血中濃度も適切に保たれていたのに何でそんなことになったんだろう? と不思議に思いその薬剤師に聞いたところ、 「先日風邪を引いた際、他の病院で抗菌薬(クラリスロマイシン)を処方されており、それとの相互作用で血中濃度があがったのではないか」ということでした。つまり朦朧状態だったのは発作ではなく、テグレトールにより血中濃度が上がったことで眠くて仕方がなかった、ということだったんです。私は他院の処方までは把握できておらず、もしあの時に薬剤師が気づいて教えてくれていなければ、土日で倍量投与していたかもしれません。本当にありがたい助言でした。
Q: まさにチーム医療ですね! 当患者さんについて薬剤師の先生と事前にやり取りしていたのでしょうか?
関口先生: 事前にやり取りしていたというより、薬剤師が自ら気にかけてウォッチしてくれていました。
土曜日に出勤していた薬剤師が、私がその患者さんの投与量を増やしたことを知り、「なぜ増やしたんだろう」と自ら血中濃度を気にかけてくれていたんです。しかもクラリスロマイシンの服用は、薬剤師が自ら入院時に患者さんから聞き取っていたんですよ!
てんかんの患者さんですし、脳神経内科の薬は相互作用が多く少し前に飲んでいた薬が思いがけない影響を及ぼすこともあります。そうしたことをちゃんと理解したうえで、患者さんに聞きとってくれていたんだと思います。
Q: 薬物治療の最適化の役割を薬剤師が担っていますね! 最後に、薬剤師の方々に対するメッセージをお願いします。
関口先生: 当院の医師は薬剤師のことを本当に頼りにしていて、「薬のことは薬剤師さんに聞こう!」というマインドになっています。当院では、薬のことは薬剤師が、患者さんの社会的背景はソーシャルワーカーが、患者さんの日頃の様子は看護師が、動きはリハ科スタッフがというように、日常的にチームとして連携することで、患者さんに最適な医療を提供しています。チーム医療において、薬剤師はなくてはならない不可欠な存在なんです。
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