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薬の本!!おすすめ

(本日のお勧めの1冊)絶対使える臨床検査値(菅野彊/井上映子著:南山堂)

 「モノからヒトへ」 薬剤師の仕事でもこの言葉を耳にする機会が増えてきた。仕事上、たくさんの薬学書を読む。この本はモノ(薬)についてではなく、ヒト(物語)について書かれている。

 30代も後半になって、やや記憶力に私も陰りが出てきた。単純に暗記することは、なかなか記憶に残りにくい。そのため長期記憶に残るようにするためには、エピソード記憶といって、何かに関連付けるような記憶方法。つまり、ストーリーが存在すると、頭に残る。

 この本には、菅野先生、井上先生お二人の処方箋、検査値を通した物語が詰まっている。その物語はお二人の真面目さ、優しさがあふれている。現場を知る薬剤師が薬物動態学や検査値という武器を駆使して、患者さんの安全を守る方法を示している。そして、物語(ストーリー)なので、記憶にも定着しやすいのだ。

 またそれらの症例が良い。よくある処方内容であるため、すぐに入り込める。1章1章ごとに織りなされる薬剤師と患者さんの物語。またそのやりとりは最後にSOAP形式の薬歴となって記載されている。本の名前の「絶対使える」というのは間違いない。

 薬物動態学や検査値の本は、アカデミックで難しい書籍が多い。この本は、患者さんと薬剤師の会話を通して、そのアカデミックな部分を残しつつも、優しい言葉で(文字も大きく、挿絵も可愛い)解説されている。

 菅野先生は70歳を超えてもなお、全国で講演の日々を送っており、私の目標とする薬剤師の一人である。また井上映子先生も先日鹿児島での講演があり、運良く聴講することができた。井上先生は、肝機能の検査値をいかに現場に運用すべきかというテーマを鹿児島で語ってくださった。私もいくつかの発見があり、笹川の薬剤師脳に刺激を与えてくださった。

 二人の素晴らしい薬剤師の紙上講義を皆さんもぜひ体験してもらいたい。そして、そのストーリーを記憶に残しつつ、日々の服薬指導に役立てていただきたい。


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