薬歴のお作法

薬歴ってどう書いてる?第2回

空(事実)の作法

 今月号の日経DIプレミアム号の特集記事は「キラキラ薬歴」というテーマだった。いろいろな薬局の薬歴を拝見することができて、他の薬剤師の仕事ぶりが理解できた。今回のブログでは、空(事実)SOAP薬歴でいうSの書き方について私見を述べたい。

 今回の薬歴の特集で、やや違和感を覚えたのが、SOAPで記載されている文章のSの部分である。Sは「患者さんの言葉」を記載する部分ではある。それが口語体(話をしているように)で記載されていることだ。

 例えば、
【S】昨日の夜から、急にお腹がキューッと痛くなって、2時間位我慢していたんだけど、なかなか良くならないで、ずっとトイレにいて、大変だった。なんか、悪いものでも食べたのかな?昼も夜も別に何か気になるものを食べたこともないし。・・・・・・

 このように患者さんが話した内容をそのまま記載しているわけだが、口語体は伝わりにくい。なぜなら、会話は言葉だけでなく、表情やジェスチャーがあるから伝わるのだ。文章だけでは伝わらない。口語体で記載すべきものは、ドラマの台本や小説の台詞などであって、医療文章である薬歴には不要と考えている。

 もし私が記載するなら、
【S】昨夜から腹痛がある。差し込むような痛みである。食事関連で気になる食べ物は摂っていない。

このように書くだろう。ポイントは1文をできる限り短くする。これにつきる。主語、述語が長くなると、文章がわかりづらい。特に会話はその傾向が強くなる。主語と述語が離れれば離れるほど論理関係がしっかりしない。難しいことはない。1文を短くすれば、勝手に論理的になる。

ただ、勝手に短くしないことも大切なケースがある。患者さんが、「頭がはちまきでギューッと締め付けているような痛みがある」と言ったとしよう。それを
【S】頭痛(+)
と記載するのは、簡略化しすぎである。矛盾するかもしれないが、短くするというのは大切だが、大事なポイントは短くしすぎないことも薬歴記載には必要である。ただその際にも口語体では記載せずに、ポイントを1文で伝わるように記載したい。

 箇条書きでもいいかもしれないと個人的には考える。長すぎる【S】は読むのが疲れる。誰のために薬歴は記載するのかを考えるとよい。決して、個別指導対策ではない。患者さんのため、一緒に働く薬剤師のためである。何を書くことも大切だが、誰に対して書くのかを意識すると読みやすい薬歴になるだろう。

今日のポイント
・話すように書かない!!

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