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薬学書ソムリエ 笹川のお勧め本テイスティング

(本日のお勧めの1冊)誰も教えてくれなかった実践薬歴(山本雄一郎著/じほう)

 この本は「映画」である。なぜなら、日本で有名な薬剤師たちの主張や技術、知恵をまとめられているのだ。その映画に出てくる俳優たち(薬剤師)は、全て主演クラス。こういった映画はリスクが高い。配役やキャストを間違えると、目を当てられなくなるような駄作になることがあるからだ。それでもこの書籍を優秀作品賞にしたのは、山本雄一郎という監督の脚本、見せ方が秀逸なのだろう。彼(大学の先輩なのですが・・・申し訳ないです)は、この本のなかで、自分の主張を真っ赤な炎のように、力強く訴えるところはない。むしろ、クールに哲学者であるソクラテスと呼ばれるように、静かに青白く燃える炎のように伝えている。ただ温度が高いのはこの青白い炎なのだ。現に、俳優達(薬剤師:岡村先生、堀先生、川添先生、菅野先生、杉山先生、青島先生)の書籍や知恵を昇華して、1つの新しい作品を作ったのだから。

 この本をただの薬歴本と勘違いして、購入していない薬剤師がいたら私は伝えたい。とにかく読むべし。笹川がすぐにでも使える、勉強になったのは、Chapter4「高齢者の薬学的管理」という章である。高血圧や糖尿病といったありふれた疾患と高齢者に対する薬歴管理、そして、漢方薬にまで言及している。その内容はすぐに実践できる内容である。実践薬歴という名称に偽りなしである。

 彼は「薬局薬学のエディター」と言っている。これからの薬剤師がAIに置き換えられない仕事をするには、情報を自分なりに編集(エディット)する必要がある。山本先生はそのエディターたる仕事ぶりを我々現場の薬剤師にアウトプットして届けてくれた。エディット(編集)はこれからの薬剤師に必須のスキルになるだろう。

 2時間あれば読める内容だが、ここまで満足度の高い薬学書はあまりない。彼の哲学を存分に味わってもらいたい。

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