見出し画像

わたしが蘇利古を被ったら

昨日の話、つまり2020年6月13日の話である。
何年も着ていない浴衣をクローゼットから引っ張り出し、蘇利古の面を付け、帽子を被った写真をTwitterにアップした。

画像1

その後、月イチで更新しているWeb Radio、metasphere*の打ち合わせをしたのだが、その相方に「面白いけど、どういう経緯であんな格好をする事になったのかが分からない」と言われた。

なるほど、確かに言われてみればそうかもしれない。
これも先日、Twitterで言っていた事なのだが「相手が分かるように話をしないと、周囲は???ってなる。それは会話とは言えない。単なるでっかい独り言に過ぎない」という話の続きのようにも思えた。
今回のポイントは「???と思ったとしても、訳が分からんけど、なんかおもろい」という感想が、結構な割合で出てくる事にある。
コレが勘違いの原因となる事が多々ある。
「会話をせずとも、ウケたんだから問題なかろう」という勘違いだ。
だが、これは明らかに勘違いである。
相手が話を理解して笑ってくれている事と、なんかよくわからんけど笑ってくれている事は、全く別物だ。
前者は会話によって笑いが取れてるケースで、後者は「投げっぱなし」の笑いなのである。
後者は笑ってくれる人を置き去りにする可能性がある笑いであり、会話が成立していないのが最大の違いである。

福岡県福岡市南区に大橋という、割と栄えた街がある。
福岡市の中心である天神地区や博多駅地区から程よく離れており、割と高級な宅地が並び、その昔は福岡芸工大という割と珍しい国立大学があった土地柄である(現在、福岡芸工大は九州大学に統合されている)。
そういう土地柄の関係上、芸術系や技師系の学生も多く、福岡市中心街のベッドタウンの住民と相まって、シャレオツなくせにおかしな人達を見かけるという不思議な街だ。
そんな大橋、西鉄大橋駅から徒歩で10分程度のところにマサラキッチンはある。

このマサラキッチンの店主、ミツジさんは、オレが以前勤めていた東比恵の会社の近くにあったカレーの名店、ドゥニャの店長だった人である。
もともとはデザイナーをやっていたが、なんやかんやあってカレー屋を立ち上げて店長に収まった後、独立して大橋に店を構えたという、かなりヘンな人である。
オレがヘンな人というくらいだから、そのヘンな人具合は推して知るべしである。
一番ヘンな人具合が極まってる逸話としては「味が色と形で見える」というものであり…いや、これの話はヘンな人だけど凄い人みたいな話になってしまうので割愛しとくか。
とにかくヘンな人なのである。

そんなミツジさんはペーパークラフトが大好きなのである。
首振りワンコのペーパークラフトを店に置いて配っていたりする。
このワンコがなかなかに秀逸で、オレも子供が幼い頃にお土産として持ち帰り、子供に作ってあげたことがある。
僅か数分で握り潰されてしまったが。

2020年上半期はコロナウイルスの半年であった。
ミツジさんが経営するカレー屋、マサラキッチンも一時期閉店し、かなり苦しい状況にあるのは想像に難くない。
そんなマサラキッチンが制限付きではあるが復活した。
入店にあたってはマスクの着用と手洗いはもちろん、ソーシャルディスタンスを保持するための着席に関する指定や「あまり喋らないでね」という割と厳しめの制限付きである。
しかし、これは仕方のない話であろう。
店が起点となりコロナウイルスが感染しまくったとなると、店の信用に関わる。
ミツジさんなりの身の守り方といったところであろう。

ところが、そんなマサラキッチンにマスクを持たないまま、カレーを食いに来たお客さんが居たようなのである。
ミツジさんは詫びながら入店をお断りしたようである。
しかし、わざわざ足を運んで頂いたにも関わらず、マスクがないからと追い返すのも忍びない。
マスクを置こうにもマスクは市場に出回ってない。
そこで思いついたのがペーパークラフトのマスクではなく、雑面だったようなのである。

もう、ここからおかしい。
ヘンな人の発想全開である。
雑面とは日本の舞楽で用いるお面である。
有名なのは「千と千尋の神隠し」に出てくる春日様が顔を隠している、あのお面である。
正確に言うと、あの春日様のお面は雑面のうちのひとつであり「蘇利古」というのである。

画像2

福岡県は太宰府に「太宰府まほろば衆」という、エイサーを踊るグループがあるのだが、このグループはこの雑面で顔を隠して、和装でエイサーを踊る。
まるで異界に足を踏み入れたかのような錯覚を覚える程の異様さなのである。
だが、ものすごくカッコいい。
こちらも是非、ご覧頂きたい。

マサラキッチンで配布されている雑面は写真の通り「フェイスガード」と銘打たれている。
なるほどマスクを「飛沫をぶちまけないためのもの」と捉えるのならば、マスクではなくフェイスガードで十分であろう。
紙1枚隔てていれば、マスクでなくとも役目は果たせるかもしれない。
だけど、だからと言って雑面はないだろミツジさん?!

画像3

あーね、なるほどね。
確かに舞楽でセリフはないわ。
確かに雑面を被る者というのは、人にあらざる者という扱いになるわ。
だから「言葉を発しない」ってそこかい!!!www

大橋という土地はオレの自宅から行くと車で約30分ほどかかる。
割と渋滞が多い地所ではあるし、パーキングはコインパーキングだし、何よりバイクで行くと何処に停めていいのか分からないのである。
諸々重なってなかなかお店に行く気になれず、不義理になっているなぁと思っていた矢先に、この雑面の話がそこそこTwitterでウケているようである。
雑面!欲しい!!突撃!!!

画像4

延々とミツジさんがヘンな人という話で引っ張り過ぎて忘れていたが、マサラキッチンのカレーは絶品だと思っている。
ちょっと前に、あちこちにポコポコ出現してたインド(まがい)カレー屋とは違い、ナンで食うのではなく、マサラキッチンのカレーはサフランライス一択である。
個人的にはチキンカレーが好みで、ヨーグルトチキンカレーが特に絶品だと思っているが、キーマも美味いので安心して欲しい。
また、あまり辛さが得意ではない人の事も考慮してあり、普通の辛さはほとんど辛くない。
もちろん、金を積んでまでアホみたいに辛いのを頼むような味覚がぶっ壊れている人のために、めちゃくちゃ辛いものもオプションで頼める。

はいそこ。
上の写真と説明見て興味湧いた方。
「でも福岡じゃんよ。食いに行けねぇよ」
なんて思ったあなた。
安心して。ネット通販あるから。

チキンやラムキーマだけでなく、タンドリーチキンも売ってるから。
なんなら首振りペーパークラフトアマビエ様も売ってるから。
他にもいろいろおかしなパロディ商品売ってるから。

そんな大好きなのに不義理を働いてしまっているマサラキッチン、美味いカレーを食わせてもらい、雑面まで貰って帰る。
が、満足して帰るでおしまい?
否!コノママデハイケナイ!!!
せめてお店の宣伝になるようにカッコイイ蘇利古の写真を撮るのだ!!!

画像5

久しぶりに浴衣なんか引っ張り出したのである。

画像6

画像7

この浴衣、ガチの着物屋で買ったわけではないので、高いものではないのだが、パッと見渋めの柄かと思いきや、よく見るとなかなか面白い染めなので気に入っているのである。
裏地なんかはもう、めちゃくちゃ派手。

最近は浴衣なんかも着る機会、全くなくなりましたねぇ。
以前はTwitterのオフ会なんかで着たりしたものなんだけど。
すっかり無聊を託ってますな、この浴衣も。

何の話だっけ?
マサラキッチンのミツジさんはヘンな人って話だっけ?
蘇利古のお面が面白いだけじゃなくて、マサラキッチンはめちゃくちゃ美味いよ!っていうダイレクトマーケティングの話だっけ?

「訳が分からないが、なんだか面白い」という笑いもある。
だがしかし、裏話を詳らかにし、内輪ウケに陥らないようにされた誰にでも楽しめる笑いの在り方というものを、オレは推して行きたいと思うのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?